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「小原組~ALL OUT~」 2009/10

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『朱紺スポーツ』vol.17

投稿日時:2009/10/26(月) 03:37

【CTB田中 猛進突破でトライあげる】

 100点もの大差をつけた大産大戦。前半から圧倒的な攻撃力を発揮した関学は、後半からついにBK陣を〝解禁〟する。そのなかで今年BKリーダーを務めるCTB田中(商4)が闘志をむき出しにしたプレーを見せた。



[猛進突破

 ただ前へ、だった。パスが渡りボールが回ってくると、CTB田中の視線はインゴールに向けられた。「ここは自分がいこう」。ステップを駆使し、相手DFをかわす。敵がつかんでこようが、猛然と振り払い35メートルを走破した。そのいつもの田中とは異なる、巧みな動きにメンバーもスタンドも驚きの声をあげたが、「まっすぐにいって、こじあける」という彼の持ち味が最大限に発揮されたプレーだった。


[秘密兵器]

 相手の動きを見切ってのステップワークには、秘密兵器の存在がある。それはスパイクだ。これまで履いていたものに「すべる」と感じており、「この2試合を天然芝でプレーして、いっそのこと変えよう」。固定式のものから、とりかえ式のものに変更した。その効果は絶大。天然芝の花園第1グラウンドに田中のステップが刻まれた。


[自ら体現]

 前半はFW陣が、後半はBK陣が躍動した。「BKで取りたくて」と話す田中は自身のトライもふくめ、後半40分の試合運びに笑みを見せる。それはディフェンス面でもしかり。今年からBKリーダーに就任し「しつこいディフェンス」を自らが体現することでチームに訴えてきた。そうして失点を最小限に抑えた大産大戦の出来には満足の表情。「(3試合で)今日のがBKは一番良かった」と振り返った。


 チームは3連勝。ようやくBK陣も〝解禁〟され、チーム全体の勢いは増すばかり。「ディフェンスは発展途上。次の京産大戦までに完成させて臨んでいきたい」と田中は意気込む。闘志全開のプレーを見せるBKリーダーが、朱紺の闘士たちを扇動する。

 

【『朱紺スポーツ』vol.17】



【写真:関西学院大学体育会学生本部編集部『関学スポーツ』】

試合詳報:大産大戦

投稿日時:2009/10/26(月) 03:33

【大産大戦 試合詳報&観戦記】


▲3連続もふくめ、1試合4トライをあげたナンバー8大滝


 その実力差のとおり、大産大を圧倒する関学。開始3分のHO緑川(商3)が3試合連続となるトライをあげると、『トライ・カーニバル』の号砲が上がった。お馴染みFL西川(文4)が追加点を決めると、ナンバー8大滝(社4)も25分から3連続トライ。破壊力抜群のFW陣が前半の全10トライを飾った。


 後半からは、これまでのリーグ戦では戦術上、沈黙せざるをえなかったBK陣をついに解禁。開始早々のFB小樋山(人2)を皮切りに、BK陣がインゴールを割っていく。得点は積み重なり、大台の3桁にはWTB長野(社3)がのせた。「内容としては前半より後半良くて。ああいう、きれいな形にしていけたら」と主将は攻撃指令を優に遂行したBK陣を褒めた。


 終わってみれば圧倒的大差をつけての勝利。それでもチームはこだわっていた、「0点におさえよう」(大崎監督)。109点というスコアはいまの攻撃陣を見れば当然の数字。それ以上に、ディフェンス面での確かな手ごたえが欲しかった。コミュニケーション不足から喫してしまった、7の数字が悔やまれる。


 チームは3連勝を飾ったが、試合ごとに課題が浮き上がり内容を自問自答するのが現状。「前半は力まかせのラグビーをしてしまった。関西より強いところには通用しない。通用するラグビーを」と主将が上を向けば、指揮官は「残りの連戦にむけてベストな状態に」。目指す先がまだまだ遥かだからこそ、現状に満足しない。たとえ100点差をつけようとも、納得いかぬ点があれば。朱紺の闘士たちが己の理想形に成りえたとき、それが栄光を手にしたときになる。

『スピードスターは止まらない。』

投稿日時:2009/10/19(月) 23:14

 2009年、激動の上半期を送ったラガーマンがいる。関学が誇るスピードスター、長野直樹(社3)。大学はもちろん、ナショナルチームでも活躍の場を与えられたウィンガーは、その常人とはかけ離れたシーズンをどのように過ごしてきたのか。そこにあった思い、そしてこの先に見つめるものに迫った。


【激動のシーズン】


 ここに楕円球を手にした一人の人物がいる。大学の友人は『〝ラグビー部〟の長野』と説明するだろう。他大学のジャージを着るラガーマンは『〝関学のWTB〟長野直樹』とにらむだろう。はたまた日本ラグビー協会の方は言うだろう、『〝U-20日本代表〟の長野直樹』と。


 彼の肩書きは関学ラグビー部のなかでも尋常なものではない。『セブンズ(7人制ラグビー)日本代表』『U-20日本代表』という驚くもの。長野直樹は2009年をそうした肩書きとともに過ごしてきた。


 激動のシーズンの始まりは年初めになる。大学選手権もチームとしては幕を閉じ、まわりの大学生はオフに入る時期。だが長野は次なる戦いへの準備に身を投じていた。


 「みんなが休んでるときに活動してて。1年持つかなって」


 上半期の長野の動向は大きく3つに分けられる。


 まず長野は6月に開催される『U-20世界選手権』に召集されていた。大会への選考も兼ねられた合宿へは当然気持ちが高まる。昨年暮れのケガからも復帰し、代表に選出されるためにパフォーマンスを発揮する必要があった。


 「去年(代表から)落ちたんで、リベンジしてやろうと」


 1月の時点でオフどころではなく、ましてや『U-20日本代表〝候補〟』長野直樹にとって半年にも渡る勝負はここから始まっていた。


 と同時に『セブンズ日本代表』としての戦いも進行した。2月中旬のアメリカ・サンディエゴ大会と3月のW杯ドバイ大会。こちらは日本代表として海を渡ることになっていた。


 そして最後に、本来の『関学』というチームとしての活動。


 そのハードワークは想像するに容易い。



▲昨シーズンのラストゲーム。涙するも、次なる戦いはすぐそこに迫っていた。(08年12月28日:法政大戦)


【ラガーマン長野の成長】


 「スタッフの方々がすごい面子で。いろんなトコから自分を見られた。アドバイスいただいて。すごい締まった雰囲気のなかで、一回一回の合宿が濃いものやった」


 複数回にわたる代表強化合宿のなかで長野は己のパフォーマンスを高めながら過ごした。確かな成長がそこにはあった。「精神面でも、プレー面でも」


 「今年はいろいろ試したりで。キックも練習したりするし。〝外〟勝負もそうやし、〝内〟でも。自分にとって〝外〟は一つの武器やけど、そこで的をしぼらせずに。その結果、内でも外でも勝負できたら」


 自慢の足を生かすことはもちろんだが、それだけではダメ。相手DFと真正面から当たっていくことを意識し、WTBとしてのレベルアップを図った。昨シーズンは、代表選考を落ちた理由の一つであったディフェンス力を磨き、今年はそれを踏まえたうえでのさらなる成長を見せつけた。 そうして着々と選考をクリアした長野は最終合宿まで駒を進める。


 一方、もう3年目になるセブンズの国際舞台は、またも長野を大きくさせた。


 「今まではついていくだけだったんスけど、監督から『(セブンズ代表は)ころころ選手が変わっていく。学生やから遠慮したらあかん』と言われて。一番年下なのはやりやすかったんスけど、3年目の自覚を持つようになった」


 史上最年少でセブンズ代表に選出された男も様々な舞台を経験し月日は流れた。その「ころころ変わる」チーム編成のなかで先発の座を射止めるられるかは大会規模によって異なり、長野がスタメンに確約されていることはない。


 2月のサンディエゴ大会も、3月のW杯ドバイ大会もスタメンではなかった。それでも「チームの勝利に貢献したくて。限られたなかでどうアピールするかを考えた結果」、アメリカ西海岸で1トライをあげている。


 ではベンチ入りもしないシャドーメンバーだったドバイでは。

 「舞台にいれるだけで違うかった。気持ちが選手全員入ってて。相手を殺しにいくんじゃないスけど、それぐらいの気迫が伝わった。トップでやっていくには、こうした気持ちでないとって」


 春まっさかり、厳しい代表合宿をくぐりぬけ、同時に国際舞台での経験を得た長野は、上半期の締めくくりとして6月の「U20世界選手権」本番をむかえていた。



▲春シーズンは朱紺のジャージを着ることなく。(5月2日:法政大戦)


【挫折、そして一転】


 自国開催で盛り上がりを見せる世界選手権。その開幕直前、長野は最後の最後で代表スコッドから外された。


 ケガ人が出た場合の入れ替え要員、として日本代表に身を置きながらも、彼は大学に戻ってきた。


 「結局自分がふがいなかった。合宿が進めば進むほど、実力が足りないのも分かった。練習もっとしないとな、と思った」


 選手権が開幕し、若き日本代表が世界と戦う。そこに自分はいない。挫折を味わった。


 が、事態は一変する。偶然ながら、W杯の開催時期と関学ラグビー部の関東遠征のタイミングが重なっていた。リザーブながらも関東遠征の関東大戦が長野の復帰戦の予定だった。しかし当日のグラウンドに姿はない。日本代表は初戦でケガ人が出てしまい、長野に再召集の声がかかったのである。


 「同じ舞台に立てるのが嬉しかった。捨てるもんが何もなく。一度落ちた身、絶対試合に出てやろう」


 再び桜のジャージを着られることになった。そして念願の代表デビューを飾る。


 「U19、セブンズとは違ってホームなんで、あんないっぱいの観客のなかで試合するのが初めて。興奮した」


 予選グループ最終試合のスコットランド戦(6月13日)。結局出場したのはこの1試合のみ。それ以外は出場機会すらなく。けれども、彼は腐ることはなかった。


 「出れなかったときに、岩渕(アシスタントマネージャー)さんが『やってればチャンスはくる。絶対腐らんと、チャンスがきたら掴まなあかんぞ』って。(スコットランド戦の)あそこしか見せるとこなかったんで、必死に」


 挫折の果てに、わずかな時間だけの代表だったが、長野を強くさせた。精神面での成長が大きいに違いない。


 「長かったス。いざ離れるとさみしかった(笑)。いろんなことを学んだ期間」


 こうして世界選手権における長野の長き戦いは幕を閉じた。



▲チームに帰ってきた際、誰もがそのパフォーマンスに驚愕した。(7月5日:大体大戦)


【朱紺の闘士へカムバック】


 激動のシーズンはこれで終わったわけではない。6月下旬に日本代表の身を解かれるやいなや、すぐさまチームに合流した。それまでは選手権の日本代表、レギュラーになることに必死だった。むろん、関西に帰ってきた際にはチームの仲間が何よりも心のよりどころであったが、戦闘集団の一員として加わることはなかった。


 「試合重ねてチームは目の色が変わってた。気を引き締めて頑張らないと」


 6月28日の立命大戦の後半から『関学』長野はグラウンドに立った。トライをあげることはなかったが、試合終了後にベンチで大崎監督から「ここから序々に関学の一員に戻ろう」と声をかけられた。その1週間後には、3トライを決める活躍で完全カムバックを遂げた。


 9月の半ば。桜のジャージとは一旦お別れし、朱紺のジャージだけに目がいっている。そして、嬉しくもあり辛くもあった半年間で得たものを今の自分に還元している。


 「(代表合宿で)自分は1コ上やったんで、後輩がミスしたときに萩本(アドバイザー)さんから『厳しさがない。優しいだけの先輩になってしまっている』と言われて。実際そうやな、と。関学でもちょっとずつ。まだ甘い部分あるけど変えていけたら」


 上級生になった今年は「下を引っ張っていこう」と意識を持って臨んでいる。『先輩』長野にも期待が持てる。


 プレー面でも同じく。仲間への感謝を感じながらステップアップに励んでいる。


 「(菅平では)個人的には思うように出来なかった。仲間が『今なら〝外〟勝負じゃないか』とかアドバイスくれて。細かいことやけど、言ってくれることはありがたいこと。聞くようにして、弱点が分かって、成果が上げれた」


 ラグビーをはじめていまだ6年。縁あって日本代表に選出されることもあり、高いレベルに挑戦してきた。そのたびに、長野は進化を遂げてきた。この先、どこまで楕円球を追い続けるのか。


 「スコットランド戦で何も出来ずに負けたんで、倒したいというのはある」


 リベンジを果たすのは、もはや15人制代表のステージか。「やれるとこまでやってみたい」と長野。


  スピードスターは止まらない。  


▲リーグ2戦目で、今季初トライを飾った。


(文=朱紺番 坂口功将)



■長野直樹(ちょうの なおき)/社会学部3年生/関西学院高等部/WTB/174㌢、83㌔/大学ラグビー界屈指のスピードを誇るエースウィンガー。昨年度、チームトライ王。

『朱紺スポーツ』vol.16

投稿日時:2009/10/13(火) 17:48

【チーム力アップ! 勝負の4週間】

 4週間でチーム力を上げる。小原組がリーグ戦後半へむけ、長期プランで臨む構えを見せている。OBである堂山氏(商卒)も練習に参加し、これまでに浮き出た課題の修正にも乗り出した。この先、数週間と続く長き道のりを、チームはぬかりなく過ごしていくつもりだ。



【連戦へむけ】

  年のリーグ戦のスケジュールは変則的だ。例年は1週間間隔で設けられる対戦が、今年は開幕2連戦のあと、3週間空く。今月25日の大産大戦(於・花園)を経て、そこからまた数週間の空き。そして11月14日の京産大戦から最終節まではノンストップで行われる。


 第2戦後の1週間は、リフレッシュしつつの調整。10日には宝ヶ池競技場に足を運び、対戦校の視察をした。その日のカードは、まさにこれから対戦する4校。倒すべき敵をしっかりと目に焼きつけ、これからの心持ちを固めた。そこで出たキーワードが「4週間」だ。


 リーグ戦後半は怒とうの4連戦が待ち構える。関西2連覇には避けては通れないロード。リフレッシュを終え、敵状視察も行い、この連戦までの期間をいかに過ごすか。4週間をどれだけ実のあるものにしていくかという考えだ。開幕直前、小原は「試合感覚が鈍るのもあるかもしれんけどチーム力を上げるチャンスやと思って」とにらんでいた。その言葉どおり「チーム力の向上」を図る。ゆくゆくは結果を左右する、勝負の期間になりそうだ。


 そんななか頼もしい指導者が加わった。練習にOBの堂山泰宏氏が合流。開幕から試合を見てきた同氏は、スクラムを重点的に指導する。「緊急招集で。ほんとにありがたい」と小原。FW陣が課題でもあったスクラムを改善すれば、それだけ勝利も確実なものになる。


 レベルアップにぬかりなし。勝負の4週間を過ごしたのちには、さらなる成長を遂げた小原組がそこにはいるはずだ。


【昨年度V闘士 スクラム強化へアドバイス】

 

▲堂山氏(左)と対峙するは現レギュラーの1列目3人


 実は堂山氏のアドバイスは開幕戦から効果を発揮していた。リードを許し終えた前半。「1列目がしっかり出てない」とハーフタイムでHO緑川(商3)に指摘。スクラムに修正をほどこした。そしてチームは開幕白星。試合後、スタンドとグラウンドを隔てて緑川は感謝の意を述べた。「2年間一緒に組ませてもらったんで」と緑川も信頼を置いている。昨年度V闘士がFW陣を屈強な重戦車へと鍛え上げていく。


【『朱紺スポーツ』vol.16】



『朱紺スポーツ』vol.15

投稿日時:2009/10/05(月) 04:02

【BKオーライ! WTB松野尾2トライ】

 今年の関学はFW陣が攻撃力抜群?いやいやBK陣も黙ってません。序盤から得点ムードが流れるなか、WTB松野尾(社3)がリーグ戦でのBK陣第1号トライを決める。長野(社3)も今季初トライを飾るなど、両ウイングが存在感を見せつけた。



BK陣第1号]

 チームは先制点を挙げ、狙うはさらなる追加点。ターンオーバーで攻撃に転じるとボールは松野尾に渡った。相手DFをステップと片腕1本で交わし、あとはゴールラインまで一直線に駆け上がるだけ。インゴールに到達すると豪快にダイブし、今季初トライを飾った。


 「前の試合で得点したのがFWだけ。BKで取りたい」。攻撃力を爆発させた開幕戦で、周囲をにぎわせたのはFW陣。むろんチームにとっては嬉しい限りのことだが、無得点に終わったBK陣の一員としては悔しさに苛まれた。「BKで点取ろう」と胸にとめ決めた一発は、BK陣第1号でもあった。


 後半開始早々にも、SO渕本(社3)と意思疎通が成されたパスを受け2本目のトライを決めるなど活躍を見せた松野尾。チームの勝利に貢献した。


[WTB一本で]

 高校時代はCTBでプレーしていたが、昨年からWTBへの転向を指示された。「(CTBを)やりたい気持ちあったけど」と振り返る。今年の春はCTBとポジションを行き来したが、リーグ戦に入ってからはウイング1本に気持ちを固め試合に臨んでいる。スタメンでウイングの片方に名前を並べるのは昨季のチーム得点王・長野(社3)。同回生だからこそ「負けたくない」とライバル心をのぞかせた。


 調子に波が無いのが、彼の魅力。「Aで出続ける」。そう意気込むウインガーは、安定感を武器にレギュラーの座を不動のものにしていく。


【『朱紺スポーツ』vol.15】


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