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「小原組~ALL OUT~」 2009/9/28

『舞い戻ってきた挑戦者たち。』

投稿日時:2009/09/28(月) 05:05

 ついに始まった運命のリーグ戦、開幕戦で小原組は勝利を収めた。この1勝の持つ大きな意味とは―。



 予想はしていた。「接戦になるな」。主将・小原を筆頭にチームは開幕戦をそう踏んでいた。相手の摂南大への評価は決して低くなかった。対外試合で結果を出しているという噂や、直接手を合わせられた春の練習試合が流れたことも、いっそうそうさせたのかもしれない。加えて『昨年度5位』のチームが勢いをつけて、『昨年度王者』に開幕戦で喰らいついてくるという構図がデジャブした。昨年のオレたちと一緒だ、と


 開幕につれ、否応が無しに相手を意識してしまう。相手の話題になると、出てくる台詞は決まって「(摂南大は)強い」。それだけで十分にプレッシャーになりえた。

 ならば、どう試合に臨めばいい?その答えは明確であり、そしてただひとつだった。


 「ひたむきにやるしかない」


 そうして迎えた開幕戦。対峙する相手は反則級の外国人選手を擁し、どんどん前に攻め込んでくる。昨年、圧勝を収めたときとは見違えるほどに実力をつけた敵がそこにいた。先制点こそ奪ったが、すぐさま追いつかれる。突き放しても、同点に。前半終了時にはリードを許していた。


 見るものには、予想以上の苦戦に映ったに違いない。これほどまでか、と。けれども、ロッカールームから後半のグラウンドへ繰り出す主将のそばで、大崎監督は口にした。「想定内」。



▲ハーフタイム。掲示板に映るは、摂南大リードのスコア


 シーソーゲームの様を呈したこれまでの試合展開そのままに、後半も取りつ取られつの時間が続く。17-24で再びリードを許したときだった。ここで関学は動き出す。一気に4人が入れ替わる、交代策に打ってでた。「秘密兵器は残してあるから、と。リザーブ入ってきてからアタックしよう」。

 それまで必死に耐えていたのだった。リザーブ投入までは我慢のラグビーをして、あわよくばリードしておきたかったのが本音のところ。しかし現実が逆だったのは、相手の実力がそれほどだったということ。


 かくして、物事はプラン通りに進んだ。それはもう、面白いように。HO緑川(商3)が同点、LO松川(経4)の勝ち越し、そしてこの日絶好調だったナンバー8西川(文4)のとどめの一発。ラスト20分間は圧巻だった。前半終了時には少なからず不安に覆われてた関学スタンドも、終わってみれば歓喜のるつぼと化していた。



▲ナンバー8西川の3本目のトライを祝福する小原


 ふと気付く。これは、どこかで見たことがある、と。昨年の開幕戦だ。王者・同志社大との激戦は前半リードを許しても、後半からのアタックで逆転に成功した。歴史的勝利は、「プラン通り」の戦いからもたらされていた。

 しかも、だ。その後のリーグ第3節の大体大戦。終始拮抗した戦いは、後半20分の選手投入により一転。「(リザーブが入って)ここから強くなりますから」という当時コーチを務めていた大崎監督の言葉そのままに、得点差をつけ勝利を収めていた。

 

 試合展開までもが、去年のそれとデジャブした。


 そのことが表す事実は一つ。朱紺の闘士たちは本来の姿を取り戻した、いや、変わらぬままだったということだ。彼らは、あくまでもチャレンジャーだったのだ。ディフェンディングチャンピォンであるのは確か。けれども「王者なのは、あくまでも去年の結果。僕らの代で関西制覇出来たら、と。上からでなく、チャレンジャーで」。これまでのあいだ、選手たちは幾度となく繰り返してきた。「自分たちは挑戦者」。それはもう自分たちに言い聞かせるように。

 どこかなりきれない部分もあったに違いない。それは、『勝って当たり前』という圧力がつきまとったから。王者の看板を背負っている以上はつきものだ。その点を主将は最も感じていたのかもしれない。実際「同志社とかは、こういう立場でやってきたんやろな」と吐露したときもある。この日も、ハーフタイムでは「足震えてた」とか。


 だからこそ、初戦のカードは歓迎だった。萩井ヘッドコーチは言う。「春にやってない摂南大からというのは、組み合わせとしては良かった」。出だしから強敵。そこで勝つことは大きな意味を持つ。そして、チームは白星を収めた。


 「関西で一番良い状態のチームに勝てるところが、他のどこにありますか?ないでしょ!」。試合終了後、萩井HCは声をあげた。


 こうして、勝ち星1つを獲得した。それ以上に、チームが得たものは大きい。「タフになった!」。記者の顔を見るなり小原は口にした。プレッシャーをはねのけ、チームは心身ともにたくましくなった。

 そして何よりも、ひたむきに戦うことの大切さを再確認した。それがなければ、今日の白星は無かったかもしれない。『チャレンジャー』になれたことが意味を持つ、価値ある開幕戦だった。■

(文=朱紺番 坂口功将)



▲勝利の味をかみしめる


◆ついに始まった関西リーグ。小原組の戦いの全てがここにある!『朱紺スポーツ』vol.14もあわせてご覧下さい◆


(写真:関西学院大学体育会本部編集部『関学スポーツ』)

『朱紺スポーツ』vol.14

投稿日時:2009/09/28(月) 04:21

【開幕戦勝利!栄光へ突っ走れ!】

 これ以上ない、最高のスタートダッシュだ!前評判は高く、しかし実力は未知数であった摂南大との開幕戦は、激しいシーソーゲームに。幾度とリードを奪われながらも、最後まであきらめなかった朱紺の闘士たちの活躍で勝利を収めた。関西2連覇、日本一へむけ小原組がいま走り出した!



【強さ見せつけた】

 

 「ひたむきにやるしかない」。それだけだった。摂南大が強敵なのは重々承知していた。HO緑川(商3)が挙げた先制点も、すぐさま返される。関学ディフェンスも、中心となる外国人選手2人の手によって幾度となく破壊された。だが、相手が強かったからこそ、朱紺の闘士たちは真の姿、チャレンジャーとなれた。


 前半をリードを許し折り返しても、「想定内」と話しプラン通りに進めた。我慢のラグビーで1トライ差のまま耐えしのいだ。そして「秘密兵器は残してあるから。リザーブ入ってきてから、アタックしよう」。後半16分に一気4人を入れ替えると、そこから流れは一変した。緑川の同点トライの後は、31分にLO松川(経4)が「全力」アタックでゴールラインを割り、勝ち越しに成功。勢いそのままに終了間際にはナンバー8西川(文4)がこの日3本目のトライでとどめを指した。「最後まであきらめずにやれた」。小原の言葉どおり、激しいシーソーゲームを制した喜びはひとしおだった。


 関西リーグの開幕戦はここ数年、『前年度王者が敗れる』など波乱づくめの展開が続いていた。だが襲い掛かるプレッシャーをはねのけ、負の連鎖を断ち切った。それは、同時に関西2連覇への大きな一歩を踏み出したことを表す。

 最強のチャレンジャーは今年も健在だった。「チームとしての完成度は低い方なので、どんどん高めていきたい」。この先続く戦いで、小原組はさらに成長を見せてくれる。そう期待するに十分な開幕白星。さぁ、栄光まで突っ走れ!


【松川 勝ち越しトライ】

 

 後半18分、前進するFWのなかで松川はボールを持つと突破を図った。強靭な肉体は相手ディフェンダーをもろともせず。ゴールラインを割り、追加点を奪った。

 沸きあがる歓声。スタンドからは〝いつもの〟音頭が流れた。それにも気付かないほどに試合にのめりこんでいた。貴重な得点にも「意識なくFWのみんながあそこまでやってくれたんで」。ただ全力プレーの一心で、チームに勝利を呼び込んだ。

 「ひたすら思いっきり」が松川の真骨頂。チームきってのムードメーカーのこの男が、小原組を上昇気流に乗せていく。


【『朱紺スポーツ』vol.14】


(写真:関西学院大学体育会学生本部編集部『関学スポーツ』) 


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