「小原組~ALL OUT~」
インタビュー『指揮官の声。』
投稿日時:2009/09/25(金) 22:41
関学はいま、歴史の変わり目に立っている。半世紀ぶりの関西制覇により、チームを取り囲む状況は一転した。その重要な1年が、まさに今年である。そのチームを託された指揮官たちがこれまでを振り返る。
―今年から監督に就任され、新チームを立ち上げるにあたって、どのような構想でこの1年に臨まれましたか
大崎監督「去年、関西制覇を成し遂げたラグビーをより深く、より極める、より激しく、より大きく、を主に。基本的に関学はチャレンジするチーム。学生がやってきた、体を大きくすることも含めて、コンパクトなラグビーを目標に」
―大崎監督自身は2度目の監督就任です。前回と違う点を挙げるとすれば
大崎監督「いろいろありますね。前回はCリーグからBリーグに上がったところで、個人の意識であったりに違いがあった。まずはそこから、と。
今回は関西ナンバー1のチームを引き受けた。状況もモチベーションも、まわりの関心も違う。全く違うチームという認識があります」
―関学といえば『学生主体』がある意味でのスタイルでもある。そのなかで監督の役割とは
大崎監督「小原キャプテンが120人をまとめるのと一緒で、監督としてグラウンドレベルのこと、グラウンド外のことを全て、良くしていくのが仕事。他のコーチがいてくれることで、そちらの方のことが出来る」
―いまコーチの話が出ました。萩井コーチの役割とは
萩井HC「現場の強化ですね」
―では上半期を振りかえっていただきます。春は対外試合13連戦など過酷なスケジュールをこなしました
大崎監督「はじめは体を大きくしたことで、不安もあったと思うが、6月以降は体もフィットしてきて、実感を味わえたのでは。チームとしても目指そうとしているものが1年間のなかで確認できた13連戦だったかと」
萩井HC「多くのメンバーに出場する機会があった。チーム全体の底上げが出来た」
―関西リーグの相手とも戦う機会があり、白星をつけたカードもありました。そのことはこれからのリーグに何かしらの影響はありますか
大崎監督「ないとは言えないと思うけど、私自身は、下の学年も含めてどれだけ頑張ってくれるかが春は大きかった。多くのメンバーが1軍で経験して、結果でぶれなかったのは大きい」
萩井HC「何らかの形では影響すると思うが、リーグが春に対戦していない摂南大からというのは組み合わせとして良かった」
―そして夏シーズンをむかえました。1次合宿の走りこみや菅平合宿もあって、どのように映りましたか
大崎監督「まずは菅平にむけて、大きな怪我人がなく。そして去年の関西制覇もあって、関東の強豪校と組ませてもらった。勝ち星こそ少なく、結果は出せなかったが肌を合わせたことで得たものは大きい。と同時に、欠けているものをシビアに見せてくれた」
―得たものとは
大崎監督「FWやブレイクダウンで、1対1で負けてなかったこと。スクラム、モールでは力負けせず、戦えたことが一番」
―一方で欠けているものとは
萩井HC「矛盾はするが…夏にむけてメンバーを固めたときに、下を中心にチーム全体の強化という面で層が埋まってきていない。下のグレードになればなるほど、差が出てる。特にFWが。若手の育成、チーム全体の強化が図れていない気がする」
―フィットネスの課題克服が夏のテーマでもありました。その点では
大崎監督「夏でさらに体重増やしたわりには1次合宿で怪我なくやりきってくれたのではないかと。頑張ってくれたプレーヤー、支えてくれたトレーナーに感謝したい。プレーヤーのためにサポートしてくれたおかげで、走りこみも出来た」
―体が大きくなったことで、戦術やプレー面で変わってくるところはありますか
萩井HC「今年はモールプレーがオッケーになったので、そういう点での力強さが。存在感のあるFWになったのではと。まだまだこれからです」
―いまの小原組の雰囲気はどう感じておられますか
大崎監督「だんだん良くなっていると。不思議なくらい緊張することなく、逆にスゴイなと」
萩井HC「関学はスター選手が揃っているわけでもなく、根本的には強いチームじゃないので、出場するメンバーだけでなく、みんなを含めて支えがあって、そうして120パーセントの力を出せて相手と戦えるチーム。だんだん一体感が出てると思う」
―さてリーグもいよいよ迫りました。いまの心境を
大崎監督「自分自身としては、期待と不安の両方。学生がやってくれるだろうという期待。あと1週間でしてやれるかという不安も」
萩井HC「コーチ陣も新しくなって初めての1年。いつもより緊張してる。体制が変わったことで新しいチャレンジャーとしてどれだけやれるかの緊張を毎日感じながら。
強い大学と初戦ができるので去年の優勝は100パーセント忘れられる状況なのは良いかなと」
―その初戦の摂南大。どのような印象を持たれていますか
大崎監督「ナンバー8を中心に強いし、良いチーム。強いチームだと。
関学が15人を中心にして、80分やろうとしていることをやりきれるか。強いけど、関学はやりきってくれると思っています」
―初戦にむけAチームのメンバーも固まってきていると聞きます(9月20日時点)。その22人はどういった人選に
萩井HC「シーズンが始まってから、試合というチャンスをくぐりぬけてきたなかで、勝ち残ってくれた22人です」
―では今年の関学ラグビーはどういったものに
大崎監督「去年と一緒。体が大きくなっても同じように。地域を取るところは取る。セットスクラムは取る、など。同じことだけど、進化させたい。それが今年のチームスタイル」
―ずばり、お聞きします。今年の関学ラグビー部は関西制覇しうるかどうか
大崎監督「なりうると思います。それだけのことを一年間、小原キャプテン以下がしてきてくれたと思っているので。可能性はあると」
萩井HC「ぶっちゃけ言うと…興味がない。摂南大の試合以外、興味がないですね。いまは摂南大との試合に勝つことが全てだと」
―最後に、選手たちにメッセージを
大崎監督「チャレンジし続けてほしい。と同時に、グラウンドにいる22人は全部員の代表なので、最後まで誇りを持ってプレーし続けてほしい」
萩井HC「今年は今年のチームとして1戦、1戦戦うように」
指揮官たちは見守ることしかできない。プレーするのは選手たちだからだ。それでもピッチサイドに立つ。これまでの戦いを欠かすことなく見届けてきた指揮官は、どのような思いで残りの戦いに臨むのか。リーグ戦はまもなく開幕する。
■大崎隆夫/関西学院大学卒/監督
■萩井好次/同志社大学卒/ヘッドコーチ