「小原組~ALL OUT~」 2009/9
『舞い戻ってきた挑戦者たち。』
投稿日時:2009/09/28(月) 05:05
ついに始まった運命のリーグ戦、開幕戦で小原組は勝利を収めた。この1勝の持つ大きな意味とは―。
予想はしていた。「接戦になるな」。主将・小原を筆頭にチームは開幕戦をそう踏んでいた。相手の摂南大への評価は決して低くなかった。対外試合で結果を出しているという噂や、直接手を合わせられた春の練習試合が流れたことも、いっそうそうさせたのかもしれない。加えて『昨年度5位』のチームが勢いをつけて、『昨年度王者』に開幕戦で喰らいついてくるという構図がデジャブした。昨年のオレたちと一緒だ、と―。
開幕につれ、否応が無しに相手を意識してしまう。相手の話題になると、出てくる台詞は決まって「(摂南大は)強い」。それだけで十分にプレッシャーになりえた。
ならば、どう試合に臨めばいい?その答えは明確であり、そしてただひとつだった。
「ひたむきにやるしかない」
そうして迎えた開幕戦。対峙する相手は反則級の外国人選手を擁し、どんどん前に攻め込んでくる。昨年、圧勝を収めたときとは見違えるほどに実力をつけた敵がそこにいた。先制点こそ奪ったが、すぐさま追いつかれる。突き放しても、同点に。前半終了時にはリードを許していた。
見るものには、予想以上の苦戦に映ったに違いない。これほどまでか、と。けれども、ロッカールームから後半のグラウンドへ繰り出す主将のそばで、大崎監督は口にした。「想定内」。
▲ハーフタイム。掲示板に映るは、摂南大リードのスコア
シーソーゲームの様を呈したこれまでの試合展開そのままに、後半も取りつ取られつの時間が続く。17-24で再びリードを許したときだった。ここで関学は動き出す。一気に4人が入れ替わる、交代策に打ってでた。「秘密兵器は残してあるから、と。リザーブ入ってきてからアタックしよう」。
それまで必死に耐えていたのだった。リザーブ投入までは我慢のラグビーをして、あわよくばリードしておきたかったのが本音のところ。しかし現実が逆だったのは、相手の実力がそれほどだったということ。
かくして、物事はプラン通りに進んだ。それはもう、面白いように。HO緑川(商3)が同点、LO松川(経4)の勝ち越し、そしてこの日絶好調だったナンバー8西川(文4)のとどめの一発。ラスト20分間は圧巻だった。前半終了時には少なからず不安に覆われてた関学スタンドも、終わってみれば歓喜のるつぼと化していた。
▲ナンバー8西川の3本目のトライを祝福する小原
ふと気付く。これは、どこかで見たことがある、と。昨年の開幕戦だ。王者・同志社大との激戦は前半リードを許しても、後半からのアタックで逆転に成功した。歴史的勝利は、「プラン通り」の戦いからもたらされていた。
しかも、だ。その後のリーグ第3節の大体大戦。終始拮抗した戦いは、後半20分の選手投入により一転。「(リザーブが入って)ここから強くなりますから」という当時コーチを務めていた大崎監督の言葉そのままに、得点差をつけ勝利を収めていた。
試合展開までもが、去年のそれとデジャブした。
そのことが表す事実は一つ。朱紺の闘士たちは本来の姿を取り戻した、いや、変わらぬままだったということだ。彼らは、あくまでもチャレンジャーだったのだ。ディフェンディングチャンピォンであるのは確か。けれども「王者なのは、あくまでも去年の結果。僕らの代で関西制覇出来たら、と。上からでなく、チャレンジャーで」。これまでのあいだ、選手たちは幾度となく繰り返してきた。「自分たちは挑戦者」。それはもう自分たちに言い聞かせるように。
どこかなりきれない部分もあったに違いない。それは、『勝って当たり前』という圧力がつきまとったから。王者の看板を背負っている以上はつきものだ。その点を主将は最も感じていたのかもしれない。実際「同志社とかは、こういう立場でやってきたんやろな」と吐露したときもある。この日も、ハーフタイムでは「足震えてた」とか。
だからこそ、初戦のカードは歓迎だった。萩井ヘッドコーチは言う。「春にやってない摂南大からというのは、組み合わせとしては良かった」。出だしから強敵。そこで勝つことは大きな意味を持つ。そして、チームは白星を収めた。
「関西で一番良い状態のチームに勝てるところが、他のどこにありますか?ないでしょ!」。試合終了後、萩井HCは声をあげた。
こうして、勝ち星1つを獲得した。それ以上に、チームが得たものは大きい。「タフになった!」。記者の顔を見るなり小原は口にした。プレッシャーをはねのけ、チームは心身ともにたくましくなった。
そして何よりも、ひたむきに戦うことの大切さを再確認した。それがなければ、今日の白星は無かったかもしれない。『チャレンジャー』になれたことが意味を持つ、価値ある開幕戦だった。■
(文=朱紺番 坂口功将)
▲勝利の味をかみしめる
◆ついに始まった関西リーグ。小原組の戦いの全てがここにある!『朱紺スポーツ』vol.14もあわせてご覧下さい◆
(写真:関西学院大学体育会本部編集部『関学スポーツ』)
『朱紺スポーツ』vol.14
投稿日時:2009/09/28(月) 04:21
【開幕戦勝利!栄光へ突っ走れ!】
これ以上ない、最高のスタートダッシュだ!前評判は高く、しかし実力は未知数であった摂南大との開幕戦は、激しいシーソーゲームに。幾度とリードを奪われながらも、最後まであきらめなかった朱紺の闘士たちの活躍で勝利を収めた。関西2連覇、日本一へむけ小原組がいま走り出した!
【強さ見せつけた】
「ひたむきにやるしかない」。それだけだった。摂南大が強敵なのは重々承知していた。HO緑川(商3)が挙げた先制点も、すぐさま返される。関学ディフェンスも、中心となる外国人選手2人の手によって幾度となく破壊された。だが、相手が強かったからこそ、朱紺の闘士たちは真の姿、チャレンジャーとなれた。
前半をリードを許し折り返しても、「想定内」と話しプラン通りに進めた。我慢のラグビーで1トライ差のまま耐えしのいだ。そして「秘密兵器は残してあるから。リザーブ入ってきてから、アタックしよう」。後半16分に一気4人を入れ替えると、そこから流れは一変した。緑川の同点トライの後は、31分にLO松川(経4)が「全力」アタックでゴールラインを割り、勝ち越しに成功。勢いそのままに終了間際にはナンバー8西川(文4)がこの日3本目のトライでとどめを指した。「最後まであきらめずにやれた」。小原の言葉どおり、激しいシーソーゲームを制した喜びはひとしおだった。
関西リーグの開幕戦はここ数年、『前年度王者が敗れる』など波乱づくめの展開が続いていた。だが襲い掛かるプレッシャーをはねのけ、負の連鎖を断ち切った。それは、同時に関西2連覇への大きな一歩を踏み出したことを表す。
最強のチャレンジャーは今年も健在だった。「チームとしての完成度は低い方なので、どんどん高めていきたい」。この先続く戦いで、小原組はさらに成長を見せてくれる。そう期待するに十分な開幕白星。さぁ、栄光まで突っ走れ!
【松川 勝ち越しトライ】
後半18分、前進するFWのなかで松川はボールを持つと突破を図った。強靭な肉体は相手ディフェンダーをもろともせず。ゴールラインを割り、追加点を奪った。
沸きあがる歓声。スタンドからは〝いつもの〟音頭が流れた。それにも気付かないほどに試合にのめりこんでいた。貴重な得点にも「意識なく…FWのみんながあそこまでやってくれたんで」。ただ全力プレーの一心で、チームに勝利を呼び込んだ。
「ひたすら思いっきり」が松川の真骨頂。チームきってのムードメーカーのこの男が、小原組を上昇気流に乗せていく。
【『朱紺スポーツ』vol.14】
(写真:関西学院大学体育会学生本部編集部『関学スポーツ』)
インタビュー『指揮官の声。』
投稿日時:2009/09/25(金) 22:41
関学はいま、歴史の変わり目に立っている。半世紀ぶりの関西制覇により、チームを取り囲む状況は一転した。その重要な1年が、まさに今年である。そのチームを託された指揮官たちがこれまでを振り返る。
―今年から監督に就任され、新チームを立ち上げるにあたって、どのような構想でこの1年に臨まれましたか
大崎監督「去年、関西制覇を成し遂げたラグビーをより深く、より極める、より激しく、より大きく、を主に。基本的に関学はチャレンジするチーム。学生がやってきた、体を大きくすることも含めて、コンパクトなラグビーを目標に」
―大崎監督自身は2度目の監督就任です。前回と違う点を挙げるとすれば
大崎監督「いろいろありますね。前回はCリーグからBリーグに上がったところで、個人の意識であったりに違いがあった。まずはそこから、と。
今回は関西ナンバー1のチームを引き受けた。状況もモチベーションも、まわりの関心も違う。全く違うチームという認識があります」
―関学といえば『学生主体』がある意味でのスタイルでもある。そのなかで監督の役割とは
大崎監督「小原キャプテンが120人をまとめるのと一緒で、監督としてグラウンドレベルのこと、グラウンド外のことを全て、良くしていくのが仕事。他のコーチがいてくれることで、そちらの方のことが出来る」
―いまコーチの話が出ました。萩井コーチの役割とは
萩井HC「現場の強化ですね」
―では上半期を振りかえっていただきます。春は対外試合13連戦など過酷なスケジュールをこなしました
大崎監督「はじめは体を大きくしたことで、不安もあったと思うが、6月以降は体もフィットしてきて、実感を味わえたのでは。チームとしても目指そうとしているものが1年間のなかで確認できた13連戦だったかと」
萩井HC「多くのメンバーに出場する機会があった。チーム全体の底上げが出来た」
―関西リーグの相手とも戦う機会があり、白星をつけたカードもありました。そのことはこれからのリーグに何かしらの影響はありますか
大崎監督「ないとは言えないと思うけど、私自身は、下の学年も含めてどれだけ頑張ってくれるかが春は大きかった。多くのメンバーが1軍で経験して、結果でぶれなかったのは大きい」
萩井HC「何らかの形では影響すると思うが、リーグが春に対戦していない摂南大からというのは組み合わせとして良かった」
―そして夏シーズンをむかえました。1次合宿の走りこみや菅平合宿もあって、どのように映りましたか
大崎監督「まずは菅平にむけて、大きな怪我人がなく。そして去年の関西制覇もあって、関東の強豪校と組ませてもらった。勝ち星こそ少なく、結果は出せなかったが肌を合わせたことで得たものは大きい。と同時に、欠けているものをシビアに見せてくれた」
―得たものとは
大崎監督「FWやブレイクダウンで、1対1で負けてなかったこと。スクラム、モールでは力負けせず、戦えたことが一番」
―一方で欠けているものとは
萩井HC「矛盾はするが…夏にむけてメンバーを固めたときに、下を中心にチーム全体の強化という面で層が埋まってきていない。下のグレードになればなるほど、差が出てる。特にFWが。若手の育成、チーム全体の強化が図れていない気がする」
―フィットネスの課題克服が夏のテーマでもありました。その点では
大崎監督「夏でさらに体重増やしたわりには1次合宿で怪我なくやりきってくれたのではないかと。頑張ってくれたプレーヤー、支えてくれたトレーナーに感謝したい。プレーヤーのためにサポートしてくれたおかげで、走りこみも出来た」
―体が大きくなったことで、戦術やプレー面で変わってくるところはありますか
萩井HC「今年はモールプレーがオッケーになったので、そういう点での力強さが。存在感のあるFWになったのではと。まだまだこれからです」
―いまの小原組の雰囲気はどう感じておられますか
大崎監督「だんだん良くなっていると。不思議なくらい緊張することなく、逆にスゴイなと」
萩井HC「関学はスター選手が揃っているわけでもなく、根本的には強いチームじゃないので、出場するメンバーだけでなく、みんなを含めて支えがあって、そうして120パーセントの力を出せて相手と戦えるチーム。だんだん一体感が出てると思う」
―さてリーグもいよいよ迫りました。いまの心境を
大崎監督「自分自身としては、期待と不安の両方。学生がやってくれるだろうという期待。あと1週間でしてやれるかという不安も」
萩井HC「コーチ陣も新しくなって初めての1年。いつもより緊張してる。体制が変わったことで新しいチャレンジャーとしてどれだけやれるかの緊張を毎日感じながら。
強い大学と初戦ができるので去年の優勝は100パーセント忘れられる状況なのは良いかなと」
―その初戦の摂南大。どのような印象を持たれていますか
大崎監督「ナンバー8を中心に強いし、良いチーム。強いチームだと。
関学が15人を中心にして、80分やろうとしていることをやりきれるか。強いけど、関学はやりきってくれると思っています」
―初戦にむけAチームのメンバーも固まってきていると聞きます(9月20日時点)。その22人はどういった人選に
萩井HC「シーズンが始まってから、試合というチャンスをくぐりぬけてきたなかで、勝ち残ってくれた22人です」
―では今年の関学ラグビーはどういったものに
大崎監督「去年と一緒。体が大きくなっても同じように。地域を取るところは取る。セットスクラムは取る、など。同じことだけど、進化させたい。それが今年のチームスタイル」
―ずばり、お聞きします。今年の関学ラグビー部は関西制覇しうるかどうか
大崎監督「なりうると思います。それだけのことを一年間、小原キャプテン以下がしてきてくれたと思っているので。可能性はあると」
萩井HC「ぶっちゃけ言うと…興味がない。摂南大の試合以外、興味がないですね。いまは摂南大との試合に勝つことが全てだと」
―最後に、選手たちにメッセージを
大崎監督「チャレンジし続けてほしい。と同時に、グラウンドにいる22人は全部員の代表なので、最後まで誇りを持ってプレーし続けてほしい」
萩井HC「今年は今年のチームとして1戦、1戦戦うように」
指揮官たちは見守ることしかできない。プレーするのは選手たちだからだ。それでもピッチサイドに立つ。これまでの戦いを欠かすことなく見届けてきた指揮官は、どのような思いで残りの戦いに臨むのか。リーグ戦はまもなく開幕する。
■大崎隆夫/関西学院大学卒/監督
■萩井好次/同志社大学卒/ヘッドコーチ
インタビュー『信頼と献身で。』
投稿日時:2009/09/19(土) 23:58
常に選手たちを見つめる存在がいる。プレーヤーではなくともフィールドに立ち続け、いかなる状況になれども冷静に対処し、自身の役割を果たす。
いかなる思いで2人は関学ラグビー部を支えているのか―。
今年からコンディショニングコーチ(CC)に就任した辰見康剛氏。昨年までトレーナー(TR)から変わり、フルタイムで関学ラグビー部を見ることになった。
―関学に来られて今年で…
辰見氏(以下T)「3年目です」
―関学に来られたきっかけとは
T「BKコーチの河野(素明氏)さんが大阪ガスでプレーされてて、僕も大阪ガスでTRをしていた。河野さんがTRを探されていて、声がかかって、今にいたる。河野さんは恩人です」
―では、まずCCの役割について教えてください
T「心身ともに、部員たちがラグビーを120パーセントの状態で出来るようにサポートするのが仕事です」
―昨年はTRでした。何か変わった部分はありますか
T「いっさい。ただ名前が変わっただけで、やっていることは一緒です」
―フルタイムでチームを見られている。その点については
T「去年は週に何回か練習を抜けることがあって…今年は僕からは安心できますね。特にリハビリ組は細かくチェックできる。僕からも選手からも安心できているかなと思う」
―今年チームは体重増加をふくめた肉体改造に取り組みました。そのわけは
T「元々は大学選手権が終わって、新しいチームを作るときに監督、コーチ陣と話し合って。来年以降、体の小さい、ある意味『関学らしい』選手も入ってくる。そうしたときに、戦いうるための環境を作りあげようと。今年は大々的に。(部員たちには)けっこう厳しいと思うけど、スタートはしっかりやらないと、で」
―かなりの体重増を部員たちに指示された
T「頑張ってほしい、という希望をこめてね」
―設定された数字は
T「体重をクリアしてくれたら、国立のピッチに立ったときに遜色なく戦えるなっていう」
―春は体に慣れず走れない場面も。この夏はそこからのフィットネスの課題克服を目指した走りこみをしました。成長を感じたられたり…?
T「(FWでいえば)早稲田との合同練で、実際関学の方が大きくて。たぶん関学の子も、相手をさほど大きいと感じなかったと思う。それは自信につながると。良かったです」
―上半期はフィットネス不足が騒がれた。けれども、それは想定の範囲内だった
T「想定内。騒ぐなよ、と。逆に言えば、練習中に歩かない、とか。そうしたことをきちんとやったうえで、フィットネスをどうしようと意識してほしかった。そこが今年の反省点かな」
―〝賭け〟という様にも取られていました
T「周りから見たら、賭けと取られていたかもしれないけど、方法が違っただけ。斬新なことをやっているつもりはない。
関学の選手は真面目で、基本的に言われたトレーニングはやってくれる。予定通り強くすることも出来るし、調整もしやすい。そこは僕との信頼関係が」
―試合後のウェイトや練習中に辰見さんご自身が『ALL OUTしよう!』と声を上げることがあります。やはり意識されて
T「4回生が決めた言葉。思いを伝えるという意味も込めて。言い過ぎると軽くなってしまうから、タイミング読んで言うようにしています」
―試合後などしんどい時に、『全力を出す』ことに意味がある
T「タイミングは関係なくフィットネスとかトレーニングをすると決まった時点で、自分の限界に挑戦することが大事。そこで全力を出せないやつは、それ以上は望めないと。下の学年の子になればなるほど、その意識が薄くなっているから、頑張ってほしいなと」
―今でもプロの方を見られているとか。学生と関わる際、プロと変わって学生だけに感じる違いはありますか
T「関学の方が1から10まで言わないといけないレベルは大きいかな。例えば、怪我した子が、こっちから言わないと、メニューに取り組まないとか」
―その点が関学に望むことになりますか
T「そう。僕が言わなくても、大丈夫ですよ、っていうチームになってくれれば」
―チームは学生TRも増えました
T「みんな熱心で。技術は言うことがないので、一年間通してTRとしての演じ方を。例えば、夏なんかはTRもきついとは思うけど、選手の前では見せないようにとか。そうした演じ方を心がけてもらいたいなと思ってて。
学生たちは愛ちゃんや大さん(大崎怜)が面倒見てくれてるので。メニューが充実してるのも、彼らのおかげです。彼らのそのへんのサポートが力になってます」
―CCの立場として、常に考えていること、ポリシーなどがあれば聞かせて下さい
T「それが本当に選手のためかどうか。そのときそのときの気持ちに流されず、何ヶ月後、何年後に振り返ったときに、選手のためになってたかどうかを考えて行動している」
―選手たちとのコミュニケーションは大切に
T「それがないとね。TRは、(部員から)TRだからこそ言えることがシーズンになったら出てくるポジション。『辰見さんだけに話せることが…』のその一言のために。その一言が出てこないようでは、CCとして失格。言いやすいような状況を作っておこうと。部員と監督、コーチ陣の橋渡しをすることもあるし、客観的な面を持ちながらやらないとなと」
―今年のチームをご覧になられて、辰見さんの目に映る今年の関学ラグビーの魅力とは
T「まだ1年を通して100パーセントの力を見てない。そのとき、どうなるのかなと。延びしろに期待できるのが魅力かな」
―そのときが、リーグ戦になれば…
T「と、期待してる」
―では最後に選手たちにメッセージをお願いします
T「あらためて…何があるやろう…。1年間終わったときに、チームの目標、個人の目標を達成できたと思えるように、1日1日充実したものにしてください」
選手にとっては監督、コーチ陣よりも近い立場で接することが出来る指導者。CCとの信頼感が身を結んだとき、それは関学ラグビー部が栄光を掴んだ瞬間になるに違いない。
その一方で、今年TR代表としてチームに貢献することになったのが西嶋愛(商4)だ。インタビュー当日も、休む間なくテントの下で奔走。常に選手のケアに励む。
―練習前が忙しそう
西嶋(以下N)「いつも。TRはいろんな仕事あるけど、送り出すのが仕事。私はメディカルやから選手とのコミュニケーションも取りやすいし、送り出すことが重要になってくる」
―TRも仕事がたくさんある。割り振り等、詳しく仕事内容を
N「去年の内藤さんが初代TRで、私は3年前からで、やっとTRの仕事が確立し始めた時期。専門的にしたいっていう希望で、メディカル班とフィジカル班に分けた。コンディショニングしたり、テーピングしたり、怪我の対処したりがメディカル。アップとかフィットネス、体作る方がフィジカルで。それぞれ同じような知識は持ってんねんけど、(役割ごとに)特化した集団にしたくて。今年からの取り組み」
―そんななかTR代表として今シーズンをスタートさせた
N「最初は逃げ腰な部分があって、下のTRに気を遣っている部分があった。下のやりやすいように、とかそういうことばかり考えてたんやけど…。リーグを目前にして思うことは、自分が前に出てチームのために、選手のために一生懸命やって、それを後輩が見て感じてくれることがあったらなと。今はスタートしたときと違う思いかな」
―以前はマネージャー(MG)やった。TRになったのは
N「元はMGもTRの仕事してて。チームが強くなってるのに、スタッフのシステムがついてきてなかった。スタッフがしっかりしているチームは、強いから。けっこう話し合いして決めたんよ。チームのために、これから良くなっていったらいいな、と思ってTRになった」
―勉強もしたり?
N「むっちゃ勉強した。辰見さんに学ぼうとしたら、専門的な知識欲しいなと思って。身体のこと徹底的に勉強した」
―いまは
N「後輩に教えられるように、常に勉強して。4回生の引退するまでは、勉強しよう思ってる」
―TRとして辰見さんの存在は大きい?
N「…悔しかった。1年生のときから見てた選手が、TRになった私よりも辰見さんの方に行ってしまうことが。近づきたいとは思ってたし…でも悔しい気持ちは今でも。だからこそ自分の120パーセントでテーピング巻いてあげようと思ってたり」
―そして以前と比べて学生TRも増えた
N「仕事が確立したし、ラグビー部が強くなったのもあると思う。代表やから責任感増えて当たり前やし。毎日プレッシャーに苛まれてる。後輩たちとは、一緒にやっていこうやって感じ。出来んところは助けてもらって、TRを作りあげていこうって」
―練習も試合も関係なく、グラウンドの選手のそばにいる
N「苦やとは思わない、むしろおりたい。念じながら見てる、絶対に怪我しんといてって。どれだけ多くの選手とコミュニケーション取れるかを考えてるから、担当している選手はもちろん、極力一緒にいたい」
―TRとして大変に思うことは
N「選手の信頼を得ること。どうやって信頼を得ようかなって。いまはチームが勝つためにどこまで貢献できるかを考えてる。あとは『誰も怪我せんように!』って」
―逆に、TRとして良かったと思えること、思えた瞬間があれば
N「悲しいことも嬉しいことも共感し合えるとこ。毎日の変化が見れることもかな。
自分がその日巻いたテーピングが良くて『走れたわぁ』『不安なく出れた』って言われたら、やってて良かったと思えるし、逆にありがとうって(笑)」
―最後に選手たちにメッセージを
N「えらそうなこと言えませんけど…みんなのこと信じてるんで、信じてるからこそ最高のサポートしたいと思ってるから、どうぞ信じてついて来て下さい」
インタビュー中も、インカムから入電があり、その場を離れ仕事に向かう場面も。休まる暇はない。けれども、それはチームに貢献したい一心と、飽くなき向上心あってこそのもの。それらが彼女をそうさせている。
選手たちを全力でサポートする彼らの活躍があるから―今日も朱紺の闘士たちはALL-OUTできるのだ。
■辰見康剛/CC/トレーナーとしてチームを見守り、部員たちからの信頼も厚い。
■西嶋愛/商学部4年生/兵庫県立兵庫高校/TR/今年度、ラグビー部TR代表。縁の下の力持ちを体現するサポートでチームを支える。
インタビュー『出陣の刻、来たる』
投稿日時:2009/09/11(金) 18:13
夏が過ぎた。否応がなしにリーグ戦のことが頭をよぎる季節になった。戦いを前に、チームを引っ張り続けた男たちはいま、何を思うのか―。
主将・小原正(社4)、副将・片岡将(総4)の独占告白。
―8月から夏シーズンが始まって、約1ヶ月半。ラグビーづけだった?
小原(以下O)「ずっとやね」
片岡(以下K)「オフあったとしても、ラグビー中心に」
―8月上旬の一次合宿はどのような感じで
O「菅平合宿にむけての準備」
K「体当てて、部内マッチはさみながら」
―そして菅平合宿をむかえた
O「関東の強豪とやれて、いい経験に。東海、帝京と負けはしたけど、落ち込むようなものではなくて」
K「自分はA、B両方で。外から見てても、(関東勢に抱く印象が)2、3年生のときと違うなって。今年は本気でみんなやったら差が縮まるんちゃうかなって。東海や帝京と戦って、それぞれが自分に足りないもの、やらなあかんことが明確になった」
O「たしかに。今までの合宿と違うかった。結果は負けとんねんけど…もちろん楽観視じゃなくて。(菅平合宿は)チームを作っていって、戦えるようにしていく場。今からやね」
―それらの試合を通じて、肌で感じた関東の大学との違いとは
O「テンポ」
K「うん、テンポやね」
O「あと、裏でつなぐ意識。慶應戦でも感じたんやけど、何とかゲインラインを超えようとしてくる」
―上半期を過ごして、チームにとって夏はフィットネスの克服が課題でした。その点では
O「だいぶ。暑さには弱いんやけど…体作っていけてるし。春は太ってて走れんかったけど、体のデカさがあったから関東とはれたと思う。これから昇り調子になるんじゃないかと」
K「関東の大学と違って、ウチは元々体が出来てるチームと違うから、どうしてもリスク犯さなあかん。今年はこういう形でやってきて、リーグで結果出せたら良いなと。去年と同じでも良かったけど、それじゃ日本一なれない。何か変えないと」
昨年の関西制覇により、チームにもたらされたのは、変革だ。それは、そこからさらに上を目指すために必要なもの。だが、そこにはリスクがつきまとう。
その最も難しい1年を小原組は託された。そして、ついにリーグ戦をむかえようとしている。
―リーグ戦を直前にして、いまの心境を
O「もう周りに話したりするときは、心臓バクバク。初戦とかむかえるときは、中・高もずっとオレ、バクバクで。摂南戦のこと考えたら、ドキドキする」
K「いま自分はBチームにいて、悔しい思いもある。4回生がBKに少ないから、バラちゃんを中心としたFWを見てたら、自分も中心で頑張らなって。Aに返り咲いて、バラオのサポートして、Aを強くして。リーグ、選手権では入れ替えが激しいから、最後まであきらめずにファーストジャージを狙っていきたい」
―ラストシーズンという思いは強い?
O「これだけガチでラグビーやるのも最後や思うし。結果でしか見えんものかもしれんけど、その集大成を。日本一目指してやっていきたいなと。ひとりじゃ出来ないから、感謝、感謝で。やるしかないっしょって感じで」
―むかえるリーグ戦は、日程間隔が数週間あるなどの変則的で、加えて場所がアウェーな印象がある
O「アウェーは仕方がない。そのために遠征とか行かせてもらった。それに選ばれた22人に、去年みたいに残りの部員が熱い応援してくれたら、アウェーもホームに変わる。
日程は試合感覚がにぶるのもあるかもしれんけど、チーム力を上げるチャンスやと思って。プラス思考でやっていきたい」
―例年と違って、下位校からの対戦カードになる。王者としてのプレッシャーや、違ってくる面は出てくる?
K「自分らが関西王者やったっけ、って感じあるから。去年は去年、今年は今年やし。まわりは、王者ってかかって来るけど、自分らはチャレンジャー。チャレンジャー同士の戦いになる」
―開幕カードは、摂南大(昨年リーグ5位)。どんな印象を
O「春やれんかったけんね、相当強いやろうから。のればムチャクチャ強いし、びびったら負け。前で止めて、止めて、止めて、がまん。相手の心折るぐらいに、ひたむきに頑張っていきたい」
―ジュニアも摂南大が初戦
K「全力でプレーして、Aチームに上がりたい気持ちを100パーセント出したら、結果も出てくる。ジュニアの子らは、Bチームの完成度とか聞いてくるけど、Aに上がるためにプレーすることが大事」
―春先では、国立に行けるラグビーは見えてる、と話していた。リーグを前に、今年の関学ラグビーのかたち、完成度について聞きたい。もちろん話せる範囲で
O「完成度はまだまだ。精度悪いし…全然やね。けどFWはいいもの掴んできている。早稲田との合同練習もあって」
K「声とか、元気とか出してね。一試合、一試合ALL-OUTするだけ」
―現役生活も残り数ヶ月。関学ラグビー部員として思うことは
O「最後の何ヶ月間はラグビーに賭けたい」
K「日本一のチームにしたいんやったら、日本一のウイングに。個人として、そこを目指さないと。引退する最後の最後まで、ALL-OUTして。口で言うほど簡単じゃないけど(笑)」
―では最後に。関学ラグビー部のファンにコメントを
O「いい結果残して、喜んでもらえるよう頑張りたい。絶対おごらず、ひたむきなのが関学。そのプレーを!」
K「まずAのファーストジャージでアグレッシブな姿勢を。そして『勇気と感動を与えるプレー』っていう言葉が好きやから、それが出来たらいいかなって。頑張るんで、去年以上の応援をお願いします!」
各々の胸中に、各々の決意がある。それは何よりも固く、そして支柱として彼らに宿る。残すところ数ヶ月、日本一にむかって全力でプレーするふたりの姿に、見るものは感動を覚えることだろう。
■小原正(おばら ただし)/社会学部4年生/東筑高校/LO/182㌢、111㌔/今年度、ラグビー部主将。闘志あふれるプレーとかけ声で、チームを奮い立たせる。
■片岡将(かたおか しょう)/総合政策学部4回生/香川県立高松北高校/WTB/174㌢、89㌔/今年度、ラグビー部副将。関学屈指のパワータイプのウィンガーとして、トライを狙う。
(取材:9月10日/関学構内プラザにて)
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