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「緑川組~MOVE~」

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『スピリッツ』vol.15&vol.16

投稿日時:2010/08/31(火) 01:34

●『スピリッツ』第15号/早大戦@菅平合宿

 菅平合宿の目玉となった25日の早大戦。前日の帝京大戦で善戦を見せ、次はと気合を入れて臨んだ関学は、しかし圧倒的なレベルの差を見せつけられ大惨敗を喫する。全国の頂はまだはるか遠く、ただ現実にうちのめされた緑川組であった。




【別次元】

 悔しさを超越していた。自分たちの非を浮かべるなどの問題ではない。それ以前の内容。早大に喫した5-99という敗北はそうしたものだった。戦う土俵そのものが違っていた。


 「やりたいことをやらせてもらえなかった」と主将・緑川(商4)は試合後に話した。念頭に置く『早いラグビー』を繰り出すまえにボールは奪われ、逆に段違いのスピードでゴールを陥れられる。80分間のうち、関学ペースを呼び込むことさえ許されなかった。


 スコアどおりの圧倒的な差は何だったのか。「ラグビーの質っスかね」と口にした主将の目はどこかおぼろげ。試合では関学の臨んだ土俵以上のものを見せつけられた。練習をふくめ自分たちがやってきていない部分でのプレーを繰り出されては、活路を見出すことなど皆無。ゲーム中の修正など不可能だった。


 ただ唯一、同じ土俵に立てたのはFW陣のセットプレーだ。半年ものあいだ修練し続けたスクラムは、その成果を披露した。


【遠い頂】

 それでも、勝ち方を見出せないほどの敗戦に緑川組のショックは計り知れない。「自分たちのラグビーをやりきって負けたら仕方がない」と緑川。善戦の末敗北した帝京大戦はまさにそうで、一方で早大戦では何も出来ずに終わった。ゆえに絶望感さえ漂った。これまで自分たちが立っていなかった土俵を思い知ったゲーム。それはまだまだ日本一の目標がはるか彼方であることを意味する。敗北を受け入れ、前を向くしか道はない。目標は「日本一。ぶれてない」と話す主将の言葉を信じるのみだ。


●『スピリッツ』第16号/東海大戦@菅平合宿

 関東との差をまざまざと見せつけられた菅平合宿。極めつけは27日の東海大戦だった。個人レベルでの差、なかでもパワーの差を痛感する。その事実に主将・緑川(商4)の表情は陰った。




【歴然の対格差】

 繰り出される相手の猛攻。負けじとタックルをしかける。ボールキャリアーの足が止まった。しかし前進される。やがてサポートが入り、ボールは瞬く間にインゴールへ繋がれた。


 もう何度とそんな光景を目にしたか。大敗を喫した前回の早大戦同様に東海大とのゲームも内容はほとんど同じ。ただトライを奪われ時間は過ぎた。「全然でしたねやってきたことが出せず」。主将は嘆いた。


 関東勢との差を実感した。個人レベルでのスキルもふくめ、体格の差そしてパワーの違いを見せられた。体重増加をして肉体を改造した緑川でさえ、対峙する東海大の選手と比べると矮小。「タックル入っているけど、どうにもならない」。緑川ふくめ、関学の誇るタックラーのCTB春山(文2)らが相手のアタックを前にはじかれる場面があった。基本的なスキルにプラスされるパワー。やはり開きのある関東勢との力の差をこの日も痛感させられた。


 今後にむけ「もっと体重増やして」とにらんだ緑川。さらなる屈強な肉体を手にいれ、そこから走り勝つラグビーを実践する。その先にしか、勝利はない。


◆芦田 力の前にひれ伏せる

 

 関東勢とのコンタクトの差を体感した。早大戦では前半の相手とのコンタクトプレーの際に負傷し、退場した。1日のオフを経て東海大に臨んだ。「東海大仰星出身なんで、気合はいつも以上に」。相手の強さも覚悟のうえだった。それでもやはりパワーの差を痛感。「ディフェンスをしっかりやろうと試合前は考えていたんスけど」、しかし力の前にひれ伏した。


 一方で成長したFW陣には、それを操る者として舌を巻いている。「すごいス。そんなに練習したんかなって。成果出てる」。FWの進化は芦田にとってもプラスに働くはずだ。


 「ラグビーの勉強をすること。そして、ぼく自身の技術を上げる」。自身の成長を誓ったエースSHが、関東との壁を打ち破る鍵を握っている。


(記事/写真=朱紺番 坂口功将)

『スピリッツ』vol.14

投稿日時:2010/08/18(水) 23:30

 例年以上にホットな夏が予想される関学ラグビー部。菅平では関東勢との好カードが見られるなど、見所は満載。その影には、マッチメイクに奔走した主務・橋本憲典(商4)の姿があった。




【例年以上の夏に】

 今年の菅平合宿は、熱い。気温もさることながら組まれるカードが熱いのだ。


 「かなり満足してる」。そう声をあらげるのは主務の橋本だ。今月19日から始まる菅平合宿のスケジュール調整はこの男にゆだねられていた。「春からアプローチして。主務になってから、関東の強いところと出来るように、と」。〝強いところ〟そうして組まれた今年の対戦相手はまさにその言葉どおりだ。


 24日には昨年度大学王者の帝京大と、25日には大学ラグビー界のトップ・早大と、そして27日には大学選手権で帝京大と日本一を争った東海大と対戦するのだ。いずれも学生トップクラスの面々。「関東の大学は菅平で試合をしても3つか4つ。そのなかで関西唯一の相手が関学で。感謝してる」と橋本は話す。


 Aチームのみならず、下位クラスのチームも好カードが目白押し。成蹊大(20日)や福岡大(27日)などそれぞれのリーグのトップとの試合も組まれており「下のチームは面白いかなと思います」と主務は目を輝かせる。


 また21日の流経大は日本協会のはからいで交流試合に。3年前の関関戦以来となる、菅平での朱紺ジャージが見られることとなる。


 連日続くハードなスケジュールのなかで「勝てたら一番なんスけどね。いい成績残せても残せなくても、色んな経験をして吸収して。新しい関学の色を出せたらな、と思います」。夏の舞台をお膳立てした主務は、部員たちにそのすべてを託す。口どりは熱っぽい。


 「もうやるしかない。このメンバーで出来るのもあと少ししか。絶対無駄にしたくない!」。熱い夏に、今年はなる。


(記事/写真=朱紺番 坂口功将)


【留学生ラガー対策?】

 

 試合スケジュールを手に話をしていた橋本。対戦校の解説のとき、ある面白いことを口にした。


 「全部、外国人いるんスよ」。今回菅平で対戦するうちの日大、東海大、帝京大、流経大。それら4校は留学生ラガーがチームにいるのだ。


 「関西では機会がないので。外国人慣れ、じゃないスけど(笑)」。関西リーグでも天理大を筆頭に留学生が軸となっているチームは増えてきた。むろん全国の舞台でも対峙する機会はある。それらの対策に打ってつけというわけだ。


 巨大な相手にも動じず、戦え!朱紺の闘士たち。 

『スピリッツ短信』08/06

投稿日時:2010/08/06(金) 12:24

『スピリッツ短信』8月6日

●3本の矢、放たれる。丸山、古橋、湯浅らU20日本代表セレクション合宿に招集される

 夏まっさかり、赤道直下でサクラ咲く!?U20アジアトーナメント(IRBジュニアワールドラグビートーナメント@タイ・バンコク)の日本代表候補にFL丸山充(社1)、FL古橋啓太(商1)、SH湯浅航平(人1)が選ばれた。6日からのセレクション合宿でアピールなるか。



 突然の知らせだった。チームはオフ期間中で、部員たちは期末試験など勉学に励んでいたところだった。そこへ日本協会からの通達が来た。


 今回関学から選ばれたのは丸山、古橋、湯浅の3人。これまでも候補に選ばれた過去がある。が、「3人とも候補止まり。40人まではいけても、それ以上には選ばれず」と古橋。サクラのジャージにはあと少しで届かなかったようだ。そうして大学生になり、この度召集がかかった。


 3人とも春のオープン戦ではAチーム入りを果たした。湯浅は「春シーズンはたいしたプレーできなかったんで、考えてもいなかった」と話すが、1年生ながら存在感を光らせていた。若き戦力が評価されるのはチームにとっても嬉しいニュースだ。


 それでも「チームの方が大事っていうのがあってもっとレベルの高いとこで。まずはチームで試合に出たいスね」と丸山が語ると、湯浅も「そんなに。個人的な向上よりも、チームで勝ちたい。所属してるチームでやりたい」とぽろり。上半期を戦いぬき、1次合宿、菅平合宿と夏シーズン突入のこのタイミング。関学全体の勢いが増すなかで、チームを離れたくないのが偽らざる本音だろう。一方で古橋は「春山さんとかも副キャプテンで活躍してたんで、少し意識してる部分はありました」と意気込みを見せる。


 代表候補召集への思いはそれぞれだが、共通する部分がある。それは『関学から選ばれた』ことへの誇り、だ。


 「学んで、関学のためにやれることを持って帰れたら」(湯浅)

 「関西としても、関学からっていうのはあんまりないんで。しっかりやりたい」(古橋)

 「そういう機会に恵まれたのは嬉しいから、結果出せたら。関西やから選ばれるのは少ない。誇りを持って」(丸山)


 とりわけ大学レベルでは、東高西低の現状は確か。しかし関西にも、もとい関学には実力を備えたプレーヤーがいるということの証明。「代表がどんな感じかも知りたいし、体感はしてみたい。そのなかで関学のレベルがどこにあるのか知りたい」(丸山)


 上ヶ原から放たれる3本の矢は、見事サクラのジャージを射抜くことが出来るだろうか。


 

◇3人それぞれが語る、お互いの印象


 初の3人同時取材。合宿召集のインタビューが一息ついても、話は尽きず。和気あいあいと盛り上がるなかで、話を振ってみた。お互いの印象、を。


 丸山が先陣を切る。インタビュー中もイジっていた湯浅に「関西のやつらは湯浅をイジらないんスけど、それ以外のやつらは(笑)。外から刺激与えないと、しゃべらない」と先制パンチ。これには「成章ではイジられてたんスけど」と湯浅。


 一方、古橋とは高校時代から対戦経験はあったという。「大工大校と夏合宿で試合するんで。そこで『あのFL、上手いな、って』。九州はあまりパス放らなかったけど、関西は反応いいし、パスぽんぽん放る」と印象を語った。高評価を受けた古橋は「高2のときに初めて会って。国体とかで顔合わせる、みたいな。ま逆のタイプのプレーヤーなんで」。


 その2人に対し湯浅は「印象は2人ともラグビーに対して真面目。怖かった」とちくり。2人の笑いを誘った。


 湯浅と古橋はU17近畿代表でともに戦った経緯がある。両人ともに「覚えてる」と口にしたのは関東代表との試合だ。残り時間1分、関東に負けていたなかでSH湯浅がアシストパス。最後、FL古橋がトライを決め、劇的勝利をおさめた。


 どこかしら縁があるこの3人。関学を背負って立つ若き闘士たちに期待はふくらむ。



■丸山充(まるやま みつる)/社会学部1回生/H3・9・10生まれ/筑紫高校/FL/178㌢、85㌔/タックルを武器に接点の強さを発揮する。趣味は洗濯(洗剤、柔軟剤にはこだわり強し)



■古橋啓太(ふるはし けいた)/商学部1回生/H3・7・11生まれ/大阪工大高校/FL/178㌢、88㌔/視野を広げてのプレーを念頭に置き、状況判断をする。一言「応援よろしくお願いします!」



■湯浅航平(ゆあさ こうへい)/人間福祉学部1回生/H4・2・9生まれ/京都成章高校/SH/171㌢、71㌔/持ち味はキック。その武器で高校生次にはレギュラー争いを制した。一言「がんばります!」


 

『スピリッツ』vol.13

投稿日時:2010/07/29(木) 22:47

 ついに実現!8月の菅平合宿で早大との練習試合が組まれることが決まった。関学にとっては4年前の大学選手権以来となる、アカクロとの対戦。ここ数年で急成長を遂げた朱紺が、大学ラグビー界のトップと激突する。今年の菅平は熱いぞ!




【4年ぶり対戦】

 夏の菅平合宿といえば、全国の大学が一堂に会し、練習試合を行いぶつかりあう機会。その熱い2週間が今年はさらに熱くなることが予想される。早大との試合が決まったのだ。


 「ついに組める」と目を輝かせるのは主務・橋本憲典(商4)。実に半年前、シーズンが始まった頃から相手へのアプローチはしていたという。有意義な合宿にするためにも、実現させたいカードだった。そして、今回それが叶った。


 早大といえば、言わずと知れた大学ラグビー界のトップ。「やっぱり大学ナンバーワンと言っても過言ではない。肌を合わせることで、いい経験に。早稲田とやるっていうのはどこかしら自信になる」と橋本はにらむ。関学にとっても4年ぶりの対戦である。


 前回の対戦は06年の全国選手権。そのときは完膚なきまでに叩きのめされた。だが「4年前とは違うんだぞ、と見せてやりたい」(橋本)。今その差はどれだけあるのか、菅平で明らかになる。


【つながり作る】


 実現したのも「過去の先輩たちのおかげ」と主将・緑川昌樹(商4)は話す。ここ2年の功績があったからこそ、念願のマッチメイクが成立した。来年以降にも対戦機会が設けられるように、「少しでもワセダさんと良い関係になれたら」と橋本は考えている。


 全国の舞台でたびたび〝関東との差〟を実感してきた関学ラグビー部。欲しかったのは関東の大学との実戦機会。その相手としてはこの上ない、ワセダとの対戦に、闘士たちの士気は高まるばかりだ。


(記事=朱紺番 坂口功将/写真提供:関学体育会学生本部編集部『関学スポーツ』)


◆プレイバック◆

<12月17日 第43回全国大学ラグビー選手権1回戦@秩父宮>

 対抗戦1位校に対し、関学は関西第5代表校としての出場。実力差は歴然だった。試合は早大が圧倒的に支配し、後半20分で80点の差をつけられる。それでも試合終了間際に主将・松尾遼輔(現FWコーチ)が意地の1トライ。負傷し頭部に包帯を巻きながらも、攻め続けた闘将の姿に関学ファンは心打たれた。最終スコアは7-85。


クロスオーバー対談『新時代の潮流。』

投稿日時:2010/07/16(金) 17:05

 いま関学体育会に新しい風が吹いている。輝かしい成績をあげるアスリートたちのすぐそばで、献身的な姿勢で部活動に取り組むスタッフたちその彼らの存在が確立されてきている。

 今回、時代の変わり目に立つ若手トレーナー2人に登場してもらった。一人はもちろんラグビー部、対するはサッカー部。体育会史上類を見ないクロスオーバー対談が実現。そこにあったのは各々の決意、そして友情という名の絆だった。(構成=朱紺番 坂口功将)




岩尾佳明(以下、岩尾)「むっちゃワクワクする!」

中西祐介(以下、中西)「あぁー!ワクワクする!」

岩尾「2008年11月21日からずっと思い描いてました」


 2人が1年生の頃、体育会広報紙『関学スポーツ』(203号/2008年11月21日刊)の企画面には彼らの先輩たちの姿があった。その記事を見たとき、いつか載りたいという思いが芽生えた。あれから2年後、その願いはかなった。

 7月9日に行われた、ノンストップ濃密対談、その一部始終をご覧アレ。


では、まず役職もふくめ自己紹介を

岩尾「岩尾佳明です。関学の中等部ではテニス部で、高等部はラグビー部。で、大学からトレーナーやってます。ラグビー部ではトレーニングメニュー考えさせてもらったり、筋トレのプログラム考えたり。フィジカル的な面を担当させてもらってます」

中西「中西祐介です。サッカー部でトレーナーしてます。サッカー部はフィジカルとかメディカルとかないんで、基本的に色んな仕事を多岐にわたってしてます。選手の体調管理やアップの指揮取ったりするのも重要な仕事で。あと、チームの運営にも携わったりしてます。一番上の学年の人がいないので、トレーナーのなかでは最高学年です」


ちなみに競技経験はどれくらい?あとプレーヤー時代のポジションは

中西「ぼくは10年くらいっスね」

岩尾「自分はセンター入って、ウイング入って、とコロコロ。最後はフランカーでした」

中西「ぼくもフランカー。……(笑)。キーパーです」


そもそもトレーナーになろうと思ったきっかけは何だったの?

岩尾「大学生なって、最初は遊びまくろ思ってた。実は入部するの遅くて、5月くらいで。一般学生やってて、これ4年間続かんなってそんときに4回生のトレーナーの人が話してくれて、色んな話とか聞いて。で、高等部の同期が大学ラグビー部にも一番多く入ったんスよね。そんなこんなで、一般の大学生活を見切って、入ろうかと思ったのがきっかけスね。」

中西「高校のとき全国大会出場とか無かったんで、燃え尽きれず現役生活終わって。3月のあたまにサッカー部入って選手としてやってた。けどゴールキーパーが関学はレベル高くて。自分164㌢なんスけど、まわりは180㌢とか。関学ではプレー出来ないって現実にぶち当たってこのままじゃ自分を発揮できないと。

 高校の先生からトレーナーのこと聞いてて、練習してるなかでもカッコイイなと思う節あって。3月の終わりに転身しました。マネージャーと違って、練習のときとか選手にどんどん絡んでいける、良いなと感じた」


そのトレーナー生活も3年目をむかえている。これまでの自分、いまの自分は自身のなかでどのように映ってる?

岩尾「いま考えたら、1回生の頃は想像できない〝いま〟になってる。ぼく入ったときはトレーナーって雑用係。コーンの片付け、水汲んで、氷渡して1日が終わる。こんなん違う!って落ちてる部分あった。

 それから2年が終わっていまはこんなに自分のやりたいことがやれてる。

 けどね。シーズン終わりに毎年、トレーニングコーチの辰見さんがいなくなるって話が上がるんですよね。その危機感もあったりで、それで自分が4年生なったときには、『これや!』っていうメニューが出せる男になろうって決めて。小原組が終わってからトレーニングセンターの人に話聞いたりして勉強し始めたんですよ。知識増えて。

 ただそこで天狗になってしまった。高校の先輩の與座(大樹=文4=)さんから『いまのお前が言っても、何も響かん』って怒られたんです。で、そんときにサッカー部の練習見に行ったら、トレーナーと選手の距離が近い。2回パンチ食らって目が覚めた。

 企画したトレーナー会とかの影響とかあって、自分のトレーナー活動だけやなくて、色々と考えられるようになった。トレーナーやってて、いまは充実してます」

中西「正直、あんま出来ているなって感じなくて。1年のときからやってることは変わらない。最初はCチーム任されて、2年なったらBチーム。いろんな経験させてもらって進歩したかなって。濃さが変わっただけ。3年なってAチーム見るようなってこれまでダラダラやってたツケが回ってきて。トレーナーとしては全然。テーピングとか、チームを見て指摘するとことか、まとめる側の立場なったときに力不足を感じる。

 さっき岩尾が言うてたけど、見方からしたら選手と距離が近いかもしれんけど、言うならそれは友達感覚。岩尾が見たのはリハビリのときで、まだまだ質が高くないって感じてる。

 チームにおける自分のポジション的に、まわりから自分に対し言いやすいって思うし。その点はトレーナーとしての向上につながると思うし、日々レベルを上げていこうと。やっとその段階に立てた」


トレーナーをやってて難しいと感じる瞬間、部分はある?

岩尾「立場として、選手たちにしんどいことをやらせる立場。どこかのサッカーのキャプテンが言ってたんですけど『人に言ってやらせるには、あいつが言うなら、と思わせる人にならなアカン』って。

 どうやったら動いてくれるか。まだ模索中スかね。『岩尾が言うから』ってなってくれたら、一番かなって。今はまだ全然およんでない」

中西「岩尾が言うとおりや思います。プレーヤーやないし、かといってコーチやないんで。始めから絶対的な権力があるワケやないし。意見が通らないことも多々ある。ラグビー部のトレーナーほどガンガン言うわけではなくて、影の存在も多々あるんでぼくの色としてはどんどん言える人に。

 1月から新しいチームなってポジティブな方向に持っていく、厳しく言うのもタイミング狙って。発言そういうとこが難しい。

 練習中、立ってること多いんスけど、立ってる姿からね。トレーナーバック背負ってるときは腕組むのが楽なんスけど、後ろに腕持ったり。後輩がポケットに手入れてたのも、すぐ注意して。言う立場やから、ちゃんとせなアカンと」



■岩尾佳明(いわお よしあき)/経済学部3年/平成2年1月26日生まれ/関西学院高等部/ラグビー部トレーナー。ハートの熱さを前面に押し出す純情派。趣味は「最愛の彼女(人3)とデート」とか


そんななか『トレーナー会』なるものが発足されて、会が開かれたとか

岩尾「はじまりはミクシィ。4月くらいスね。ちょっとした呼びかけで同じような考えの人がおるんやって。形にはできた。体育会本部主催の3回生コンパが3月にあって、片っ端からスタッフに声かけて、主務会でも声かけてもらって。各部の取り組みとか話し合う機会をもらえたら、と。すごい良かった」

中西「(会を開いたのは)6月21日。よくぞやってくれた!って嬉しかった。オレはそのあとの飲み会にしか乗り気じゃななかったけど(笑)。その前の交流会ではトレーナーで悩んでる子がいたり、でそういう子にいろんなトレーナーを会わせることができて。トレーナー同士の関係を作れたのが大きい」

岩尾「40人くらい。いろんな部活が集まって選手がトレーナーもやってるとことか、マネージャーがしてる部とか。そもそもトレーナーとしてのポジションが確立してない部も。男子ハンドボール部の子は1週間前にトレーナーになったばかりで『何をしたらいいか分からない』って。これはキタッー!と(笑)。

 けっこう成功かなって」


ちなみに第2回の構想は

岩尾「会が終わってからも、参加できなかった子が個人的に話聞いてきたりして。自分でも反響があったことにビックリしてる」

中西「まだ決まってないんで何とも言えないけど。第2回、学生スタッフ全員でやる、フレキャン・リーキャン(※)をまねたキャンプをやりたいなと。日中は忙しいので、スポーツセンターで夜だけでも。熱い会にしたいと思ってます!」

(※)フレッシュマンキャンプ、リーダースキャンプ。体育会学生本部主催の各部の新入生、リーダーを集めて行なうキャンプのこと。毎年開かれている。


中西はリーキャンにも参加したことがある。得るものはあった?

中西「体育会のことホンマに考えてる人が多くて。色んな話聞いてくれる先輩が増えたのがいいこと。いまにつながってる。講義もあって、そこで得たものもぼくは取り入れてるんスよ。ルーティーンも毎日やってて」

岩尾「うちもガッツリ、パクリました(笑)。ほぼマネやけど、自分で決めてやってます」


トレーナーふくめ学生スタッフのポジションがいま、体育会のなかで確立されつつある

岩尾「それだけ信頼されている、からこその確立だと。先輩とか今までの人が頑張ってくれたからと思って。先輩がいなかったら、出来なかったんかなって。

 それでもって、体育会全体でまとまっていけたら、それはデカイと思います」

中西「これまで引き継いだり、質を上げたりそれに比例して各部での責任感も増えていると思う。『スタッフはスタッフやし前に出てはいけない』って主務が言ってるんだけど、それは根底にある『選手のために』があるんかなって。岩尾みたいな性格のやつには難しいと思うけど(笑)。

 練習の面では前に出たりするけど、最後は選手が頑張るのを願うしかない。これはスタッフが役職とか増えたときにも、見失ってはいけないと思う」


サッカー部の学生トレーナーの歴史は

中西「ぼくで数えて5人目。一番上の人がいて、その人はコーチ的な。その次の人がトレーナー的なことをしだして、専属トレーナーに。そこから歴史が始まった。その人も3回生からなってサッカー部のトレーナーのモデルになっている。直接絡んだことはなかったけど、試合会場とかで話せるようになったときに『来年からトップなるんです』って言ったら、『面倒くさいことは自分でやれ』って言われて。それは、ルーティーンにもなってる。面倒に感じたら、それこそ行動に移そうと。

 でも、先輩にはおよばない。毎日倉庫を掃除してたって話を聞いたんスけど、それがやってみるとなかなか大変。ちょっとでもマネできたら」


目標はその先輩になる?

中西「今年の目標はその人かも。気持ちとしてはトレーナーの質を落さずに。先輩らに顔向けできるようにしたい」


■中西祐介(なかにし ゆうすけ)/人間福祉学部3年/平成1年9月22日生まれ/啓明学院高校出身/サッカー部トレーナー。持ち前のハイテンションで体育会の同年代のなかでも存在感を放つ。一言「最愛の彼女、探してます!」


 

岩尾は普段の練習とかで出す『この代とプレーできるのも、いまだけやぞ!』って掛け声が印象的。意識してるとこがある?

岩尾「一番意識してる。3回生やから来年も、2回生は2年、1回生は3年。けど4回生は長くて選手権まで。『このチームで勝つ』のを意識して、4回生とラグビーできる時間を無駄にしたくない。

 1年生のときの内藤さんはスゴい人で、夏のフィットネスで笛を吹いてたんスよね。ぼくは違うとこにいたんスけど、そしたらすぐ横にいる先輩たちが『あいつは日本一のトレーナーやから日本一にしよう!』って。内藤さんには絶対聞こえないような位置やったんですよ!その台詞が出てくる4年生はスゴイなって。

 もっと先輩とやりたかったかなって、そういう後悔はしてほしくない。4年生はこの1年にかけてるものが違うと思う。そういう人たちとちょっとでも、もっともっとやりたい。熱が入る」


けっこう涙もろい面ある。先輩との絡みとかで

岩尾「すぐ泣きます(笑)。ラグビーに入るきっかけも、高校の先輩とかで。先輩たちの影響は大きいっスね」


なかなか2人話したけど、お互い知ってる話だった?

岩尾「こういう話すること多くて」

中西「けっこう聞いた話が」

岩尾「勉強しようってファミレス集まって、4、5時間ノンストップでこんな話したり」

中西「先輩の話も知っているし、『日本一』の話もいの一番で聞いた。

 それも話せる仲になったってこと」

岩尾「出会って3ヶ月。それだけ同じ思い持ってたら、すぐにつながることが出来る。

 6月の立命戦でアップ任されたんスけど、負けてしまって病んでた。そんときに励ましてくれてむっちゃ頼りにしてる」

中西「その日落ち込んだ日記を書いてたんスよ。たまたまその前日にも集まってて、ぼくのアップの話に岩尾が共感してくれてたんで」

岩尾「公式戦のアップって、なんていうか格が違う。それをやってる中西すげぇ、って」

中西「アップの相談とかして。はじめて岩尾がやった試合で負けて、落ち込んでた。『ちゃうで!』って言いました。トレーナーのアップも重要やし、けど最終的にやるのは選手たち。自分がやるべきことをやってたら、あとは選手を信じるしかない、と。

 まぁ試合後に泣いてるって話も聞いて、それだけ思い強いねんなぁ、って思いました」


いい仲間にめぐり合えた

岩尾「ぼくは良い経験できた。他の子もどんどん作ってほしい」

中西「いまサッカー部はオフなんスけど、授業除いて岩尾と一番会ってるんスよね(笑)」




お互い関西制覇を遂げた部で、まさに時代の変わり目にいる

岩尾「入ったときに関西制覇して、2年目も圧倒的な強さで優勝して。まわりの目が変わったのは、スゴイありますね。学内ではどこの友達もスゴイなって言ってくれるし。今も、こうしてぼくが取材されてるのも(笑)。変わり目っていうのは、自分を奮い立たせてくれます」

中西「11年ぶりの関西制覇で、ぼくらのなかでは盛り上がったんスけど、ラグビーに吸収されてる(笑)。優勝して全国大会に行って、で今年。結果出さなアカンってプレッシャー感じてる。春は前期7位、総理大臣杯も1回戦で負けて。優勝したあとの年は難しいって言うじゃないスか、それを痛感してる」


秋のリーグ戦にむけて意気込みを

岩尾「チームの目標は日本一。それを目指せるチームって少ない。そこにおれることを誇りに思って、夏以降も。ぼく自身も勝負の年。いい影響出さないといけない。これまでの半年は選手にやらしきれてない部分あったから、あと半年は厳しくいかないと」

中西「もちろん、サッカー部も日本一。全員を笑顔にするために、です。3年目でトレーナーのトップで、来年もトップ。けど来年にむけての準備にならないように。今年は今年で、選手に負けないように全力で。最後や、って意識して4回生の気持ちでやらなアカンと思います!」


では最後に。今回は体育会クロスオーバー対談ということで『ここは負けへんぞ』という互いの部の魅力を言い合ってください

岩尾「一番、〝熱い〟部活。熱さだけは負けたくない!」

中西「ラグビーに比べてスタッフの数は少ない。ひとりひとりの〝濃さ〟は負けへんぞ、と」■


【特別紙面『スピリッツX』】

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