「緑川組~MOVE~」
『スピリッツ』vol.15&vol.16
投稿日時:2010/08/31(火) 01:34
菅平合宿の目玉となった25日の早大戦。前日の帝京大戦で善戦を見せ、次はと気合を入れて臨んだ関学は、しかし圧倒的なレベルの差を見せつけられ大惨敗を喫する。全国の頂はまだはるか遠く、ただ現実にうちのめされた緑川組であった。
【別次元】
悔しさを超越していた。自分たちの非を浮かべるなどの問題ではない。それ以前の内容。早大に喫した5-99という敗北はそうしたものだった。戦う土俵そのものが違っていた。
「やりたいことをやらせてもらえなかった」と主将・緑川(商4)は試合後に話した。念頭に置く『早いラグビー』を繰り出すまえにボールは奪われ、逆に段違いのスピードでゴールを陥れられる。80分間のうち、関学ペースを呼び込むことさえ許されなかった。
スコアどおりの圧倒的な差は何だったのか。「ラグビーの質っスかね…」と口にした主将の目はどこかおぼろげ。試合では関学の臨んだ土俵以上のものを見せつけられた。練習をふくめ自分たちがやってきていない部分でのプレーを繰り出されては、活路を見出すことなど皆無。ゲーム中の修正など不可能だった。
ただ唯一、同じ土俵に立てたのはFW陣のセットプレーだ。半年ものあいだ修練し続けたスクラムは、その成果を披露した。
【遠い頂】
それでも、勝ち方を見出せないほどの敗戦に緑川組のショックは計り知れない。「自分たちのラグビーをやりきって負けたら仕方がない」と緑川。善戦の末敗北した帝京大戦はまさにそうで、一方で早大戦では何も出来ずに終わった。ゆえに絶望感さえ漂った。これまで自分たちが立っていなかった土俵を思い知ったゲーム。それはまだまだ日本一の目標がはるか彼方であることを意味する。敗北を受け入れ、前を向くしか道はない。目標は「日本一。ぶれてない」と話す主将の言葉を信じるのみだ。
関東との差をまざまざと見せつけられた菅平合宿。極めつけは27日の東海大戦だった。個人レベルでの差、なかでもパワーの差を痛感する。その事実に主将・緑川(商4)の表情は陰った。

繰り出される相手の猛攻。負けじとタックルをしかける。ボールキャリアーの足が止まった。しかし前進される。やがてサポートが入り、ボールは瞬く間にインゴールへ繋がれた。
もう何度とそんな光景を目にしたか。大敗を喫した前回の早大戦同様に東海大とのゲームも内容はほとんど同じ。ただトライを奪われ時間は過ぎた。「全然でしたね…やってきたことが出せず」。主将は嘆いた。
関東勢との差を実感した。個人レベルでのスキルもふくめ、体格の差そしてパワーの違いを見せられた。体重増加をして肉体を改造した緑川でさえ、対峙する東海大の選手と比べると矮小。「タックル入っているけど、どうにもならない」。緑川ふくめ、関学の誇るタックラーのCTB春山(文2)らが相手のアタックを前にはじかれる場面があった。基本的なスキルにプラスされるパワー。やはり開きのある関東勢との力の差をこの日も痛感させられた。
今後にむけ「もっと体重増やして」とにらんだ緑川。さらなる屈強な肉体を手にいれ、そこから走り勝つラグビーを実践する。その先にしか、勝利はない。
◆芦田 力の前にひれ伏せる
関東勢とのコンタクトの差を体感した。早大戦では前半の相手とのコンタクトプレーの際に負傷し、退場した。1日のオフを経て東海大に臨んだ。「東海大仰星出身なんで、気合はいつも以上に」。相手の強さも覚悟のうえだった。それでもやはりパワーの差を痛感。「ディフェンスをしっかりやろうと試合前は考えていたんスけど」、しかし力の前にひれ伏した。
一方で成長したFW陣には、それを操る者として舌を巻いている。「すごいス。そんなに練習したんかなって。成果出てる」。FWの進化は芦田にとってもプラスに働くはずだ。
「ラグビーの勉強をすること。そして、ぼく自身の技術を上げる」。自身の成長を誓ったエースSHが、関東との壁を打ち破る鍵を握っている。
(記事/写真=朱紺番 坂口功将)