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「緑川組~MOVE~」

クロスオーバー対談『新時代の潮流。』

投稿日時:2010/07/16(金) 17:05

 いま関学体育会に新しい風が吹いている。輝かしい成績をあげるアスリートたちのすぐそばで、献身的な姿勢で部活動に取り組むスタッフたちその彼らの存在が確立されてきている。

 今回、時代の変わり目に立つ若手トレーナー2人に登場してもらった。一人はもちろんラグビー部、対するはサッカー部。体育会史上類を見ないクロスオーバー対談が実現。そこにあったのは各々の決意、そして友情という名の絆だった。(構成=朱紺番 坂口功将)




岩尾佳明(以下、岩尾)「むっちゃワクワクする!」

中西祐介(以下、中西)「あぁー!ワクワクする!」

岩尾「2008年11月21日からずっと思い描いてました」


 2人が1年生の頃、体育会広報紙『関学スポーツ』(203号/2008年11月21日刊)の企画面には彼らの先輩たちの姿があった。その記事を見たとき、いつか載りたいという思いが芽生えた。あれから2年後、その願いはかなった。

 7月9日に行われた、ノンストップ濃密対談、その一部始終をご覧アレ。


では、まず役職もふくめ自己紹介を

岩尾「岩尾佳明です。関学の中等部ではテニス部で、高等部はラグビー部。で、大学からトレーナーやってます。ラグビー部ではトレーニングメニュー考えさせてもらったり、筋トレのプログラム考えたり。フィジカル的な面を担当させてもらってます」

中西「中西祐介です。サッカー部でトレーナーしてます。サッカー部はフィジカルとかメディカルとかないんで、基本的に色んな仕事を多岐にわたってしてます。選手の体調管理やアップの指揮取ったりするのも重要な仕事で。あと、チームの運営にも携わったりしてます。一番上の学年の人がいないので、トレーナーのなかでは最高学年です」


ちなみに競技経験はどれくらい?あとプレーヤー時代のポジションは

中西「ぼくは10年くらいっスね」

岩尾「自分はセンター入って、ウイング入って、とコロコロ。最後はフランカーでした」

中西「ぼくもフランカー。……(笑)。キーパーです」


そもそもトレーナーになろうと思ったきっかけは何だったの?

岩尾「大学生なって、最初は遊びまくろ思ってた。実は入部するの遅くて、5月くらいで。一般学生やってて、これ4年間続かんなってそんときに4回生のトレーナーの人が話してくれて、色んな話とか聞いて。で、高等部の同期が大学ラグビー部にも一番多く入ったんスよね。そんなこんなで、一般の大学生活を見切って、入ろうかと思ったのがきっかけスね。」

中西「高校のとき全国大会出場とか無かったんで、燃え尽きれず現役生活終わって。3月のあたまにサッカー部入って選手としてやってた。けどゴールキーパーが関学はレベル高くて。自分164㌢なんスけど、まわりは180㌢とか。関学ではプレー出来ないって現実にぶち当たってこのままじゃ自分を発揮できないと。

 高校の先生からトレーナーのこと聞いてて、練習してるなかでもカッコイイなと思う節あって。3月の終わりに転身しました。マネージャーと違って、練習のときとか選手にどんどん絡んでいける、良いなと感じた」


そのトレーナー生活も3年目をむかえている。これまでの自分、いまの自分は自身のなかでどのように映ってる?

岩尾「いま考えたら、1回生の頃は想像できない〝いま〟になってる。ぼく入ったときはトレーナーって雑用係。コーンの片付け、水汲んで、氷渡して1日が終わる。こんなん違う!って落ちてる部分あった。

 それから2年が終わっていまはこんなに自分のやりたいことがやれてる。

 けどね。シーズン終わりに毎年、トレーニングコーチの辰見さんがいなくなるって話が上がるんですよね。その危機感もあったりで、それで自分が4年生なったときには、『これや!』っていうメニューが出せる男になろうって決めて。小原組が終わってからトレーニングセンターの人に話聞いたりして勉強し始めたんですよ。知識増えて。

 ただそこで天狗になってしまった。高校の先輩の與座(大樹=文4=)さんから『いまのお前が言っても、何も響かん』って怒られたんです。で、そんときにサッカー部の練習見に行ったら、トレーナーと選手の距離が近い。2回パンチ食らって目が覚めた。

 企画したトレーナー会とかの影響とかあって、自分のトレーナー活動だけやなくて、色々と考えられるようになった。トレーナーやってて、いまは充実してます」

中西「正直、あんま出来ているなって感じなくて。1年のときからやってることは変わらない。最初はCチーム任されて、2年なったらBチーム。いろんな経験させてもらって進歩したかなって。濃さが変わっただけ。3年なってAチーム見るようなってこれまでダラダラやってたツケが回ってきて。トレーナーとしては全然。テーピングとか、チームを見て指摘するとことか、まとめる側の立場なったときに力不足を感じる。

 さっき岩尾が言うてたけど、見方からしたら選手と距離が近いかもしれんけど、言うならそれは友達感覚。岩尾が見たのはリハビリのときで、まだまだ質が高くないって感じてる。

 チームにおける自分のポジション的に、まわりから自分に対し言いやすいって思うし。その点はトレーナーとしての向上につながると思うし、日々レベルを上げていこうと。やっとその段階に立てた」


トレーナーをやってて難しいと感じる瞬間、部分はある?

岩尾「立場として、選手たちにしんどいことをやらせる立場。どこかのサッカーのキャプテンが言ってたんですけど『人に言ってやらせるには、あいつが言うなら、と思わせる人にならなアカン』って。

 どうやったら動いてくれるか。まだ模索中スかね。『岩尾が言うから』ってなってくれたら、一番かなって。今はまだ全然およんでない」

中西「岩尾が言うとおりや思います。プレーヤーやないし、かといってコーチやないんで。始めから絶対的な権力があるワケやないし。意見が通らないことも多々ある。ラグビー部のトレーナーほどガンガン言うわけではなくて、影の存在も多々あるんでぼくの色としてはどんどん言える人に。

 1月から新しいチームなってポジティブな方向に持っていく、厳しく言うのもタイミング狙って。発言そういうとこが難しい。

 練習中、立ってること多いんスけど、立ってる姿からね。トレーナーバック背負ってるときは腕組むのが楽なんスけど、後ろに腕持ったり。後輩がポケットに手入れてたのも、すぐ注意して。言う立場やから、ちゃんとせなアカンと」



■岩尾佳明(いわお よしあき)/経済学部3年/平成2年1月26日生まれ/関西学院高等部/ラグビー部トレーナー。ハートの熱さを前面に押し出す純情派。趣味は「最愛の彼女(人3)とデート」とか


そんななか『トレーナー会』なるものが発足されて、会が開かれたとか

岩尾「はじまりはミクシィ。4月くらいスね。ちょっとした呼びかけで同じような考えの人がおるんやって。形にはできた。体育会本部主催の3回生コンパが3月にあって、片っ端からスタッフに声かけて、主務会でも声かけてもらって。各部の取り組みとか話し合う機会をもらえたら、と。すごい良かった」

中西「(会を開いたのは)6月21日。よくぞやってくれた!って嬉しかった。オレはそのあとの飲み会にしか乗り気じゃななかったけど(笑)。その前の交流会ではトレーナーで悩んでる子がいたり、でそういう子にいろんなトレーナーを会わせることができて。トレーナー同士の関係を作れたのが大きい」

岩尾「40人くらい。いろんな部活が集まって選手がトレーナーもやってるとことか、マネージャーがしてる部とか。そもそもトレーナーとしてのポジションが確立してない部も。男子ハンドボール部の子は1週間前にトレーナーになったばかりで『何をしたらいいか分からない』って。これはキタッー!と(笑)。

 けっこう成功かなって」


ちなみに第2回の構想は

岩尾「会が終わってからも、参加できなかった子が個人的に話聞いてきたりして。自分でも反響があったことにビックリしてる」

中西「まだ決まってないんで何とも言えないけど。第2回、学生スタッフ全員でやる、フレキャン・リーキャン(※)をまねたキャンプをやりたいなと。日中は忙しいので、スポーツセンターで夜だけでも。熱い会にしたいと思ってます!」

(※)フレッシュマンキャンプ、リーダースキャンプ。体育会学生本部主催の各部の新入生、リーダーを集めて行なうキャンプのこと。毎年開かれている。


中西はリーキャンにも参加したことがある。得るものはあった?

中西「体育会のことホンマに考えてる人が多くて。色んな話聞いてくれる先輩が増えたのがいいこと。いまにつながってる。講義もあって、そこで得たものもぼくは取り入れてるんスよ。ルーティーンも毎日やってて」

岩尾「うちもガッツリ、パクリました(笑)。ほぼマネやけど、自分で決めてやってます」


トレーナーふくめ学生スタッフのポジションがいま、体育会のなかで確立されつつある

岩尾「それだけ信頼されている、からこその確立だと。先輩とか今までの人が頑張ってくれたからと思って。先輩がいなかったら、出来なかったんかなって。

 それでもって、体育会全体でまとまっていけたら、それはデカイと思います」

中西「これまで引き継いだり、質を上げたりそれに比例して各部での責任感も増えていると思う。『スタッフはスタッフやし前に出てはいけない』って主務が言ってるんだけど、それは根底にある『選手のために』があるんかなって。岩尾みたいな性格のやつには難しいと思うけど(笑)。

 練習の面では前に出たりするけど、最後は選手が頑張るのを願うしかない。これはスタッフが役職とか増えたときにも、見失ってはいけないと思う」


サッカー部の学生トレーナーの歴史は

中西「ぼくで数えて5人目。一番上の人がいて、その人はコーチ的な。その次の人がトレーナー的なことをしだして、専属トレーナーに。そこから歴史が始まった。その人も3回生からなってサッカー部のトレーナーのモデルになっている。直接絡んだことはなかったけど、試合会場とかで話せるようになったときに『来年からトップなるんです』って言ったら、『面倒くさいことは自分でやれ』って言われて。それは、ルーティーンにもなってる。面倒に感じたら、それこそ行動に移そうと。

 でも、先輩にはおよばない。毎日倉庫を掃除してたって話を聞いたんスけど、それがやってみるとなかなか大変。ちょっとでもマネできたら」


目標はその先輩になる?

中西「今年の目標はその人かも。気持ちとしてはトレーナーの質を落さずに。先輩らに顔向けできるようにしたい」


■中西祐介(なかにし ゆうすけ)/人間福祉学部3年/平成1年9月22日生まれ/啓明学院高校出身/サッカー部トレーナー。持ち前のハイテンションで体育会の同年代のなかでも存在感を放つ。一言「最愛の彼女、探してます!」


 

岩尾は普段の練習とかで出す『この代とプレーできるのも、いまだけやぞ!』って掛け声が印象的。意識してるとこがある?

岩尾「一番意識してる。3回生やから来年も、2回生は2年、1回生は3年。けど4回生は長くて選手権まで。『このチームで勝つ』のを意識して、4回生とラグビーできる時間を無駄にしたくない。

 1年生のときの内藤さんはスゴい人で、夏のフィットネスで笛を吹いてたんスよね。ぼくは違うとこにいたんスけど、そしたらすぐ横にいる先輩たちが『あいつは日本一のトレーナーやから日本一にしよう!』って。内藤さんには絶対聞こえないような位置やったんですよ!その台詞が出てくる4年生はスゴイなって。

 もっと先輩とやりたかったかなって、そういう後悔はしてほしくない。4年生はこの1年にかけてるものが違うと思う。そういう人たちとちょっとでも、もっともっとやりたい。熱が入る」


けっこう涙もろい面ある。先輩との絡みとかで

岩尾「すぐ泣きます(笑)。ラグビーに入るきっかけも、高校の先輩とかで。先輩たちの影響は大きいっスね」


なかなか2人話したけど、お互い知ってる話だった?

岩尾「こういう話すること多くて」

中西「けっこう聞いた話が」

岩尾「勉強しようってファミレス集まって、4、5時間ノンストップでこんな話したり」

中西「先輩の話も知っているし、『日本一』の話もいの一番で聞いた。

 それも話せる仲になったってこと」

岩尾「出会って3ヶ月。それだけ同じ思い持ってたら、すぐにつながることが出来る。

 6月の立命戦でアップ任されたんスけど、負けてしまって病んでた。そんときに励ましてくれてむっちゃ頼りにしてる」

中西「その日落ち込んだ日記を書いてたんスよ。たまたまその前日にも集まってて、ぼくのアップの話に岩尾が共感してくれてたんで」

岩尾「公式戦のアップって、なんていうか格が違う。それをやってる中西すげぇ、って」

中西「アップの相談とかして。はじめて岩尾がやった試合で負けて、落ち込んでた。『ちゃうで!』って言いました。トレーナーのアップも重要やし、けど最終的にやるのは選手たち。自分がやるべきことをやってたら、あとは選手を信じるしかない、と。

 まぁ試合後に泣いてるって話も聞いて、それだけ思い強いねんなぁ、って思いました」


いい仲間にめぐり合えた

岩尾「ぼくは良い経験できた。他の子もどんどん作ってほしい」

中西「いまサッカー部はオフなんスけど、授業除いて岩尾と一番会ってるんスよね(笑)」




お互い関西制覇を遂げた部で、まさに時代の変わり目にいる

岩尾「入ったときに関西制覇して、2年目も圧倒的な強さで優勝して。まわりの目が変わったのは、スゴイありますね。学内ではどこの友達もスゴイなって言ってくれるし。今も、こうしてぼくが取材されてるのも(笑)。変わり目っていうのは、自分を奮い立たせてくれます」

中西「11年ぶりの関西制覇で、ぼくらのなかでは盛り上がったんスけど、ラグビーに吸収されてる(笑)。優勝して全国大会に行って、で今年。結果出さなアカンってプレッシャー感じてる。春は前期7位、総理大臣杯も1回戦で負けて。優勝したあとの年は難しいって言うじゃないスか、それを痛感してる」


秋のリーグ戦にむけて意気込みを

岩尾「チームの目標は日本一。それを目指せるチームって少ない。そこにおれることを誇りに思って、夏以降も。ぼく自身も勝負の年。いい影響出さないといけない。これまでの半年は選手にやらしきれてない部分あったから、あと半年は厳しくいかないと」

中西「もちろん、サッカー部も日本一。全員を笑顔にするために、です。3年目でトレーナーのトップで、来年もトップ。けど来年にむけての準備にならないように。今年は今年で、選手に負けないように全力で。最後や、って意識して4回生の気持ちでやらなアカンと思います!」


では最後に。今回は体育会クロスオーバー対談ということで『ここは負けへんぞ』という互いの部の魅力を言い合ってください

岩尾「一番、〝熱い〟部活。熱さだけは負けたくない!」

中西「ラグビーに比べてスタッフの数は少ない。ひとりひとりの〝濃さ〟は負けへんぞ、と」■


【特別紙面『スピリッツX』】