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「小原組~ALL OUT~」 2009/12

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『朱紺スポーツ』vol.26

投稿日時:2009/12/29(火) 14:55

【選手権敗退 涙の結末】

 

 

 夢ついえる。大学選手権2回戦で実現した念願の関東勢との対戦。しかし明大に大敗を喫する結果に。負ければ終わりの大舞台で、小原組の戦いが幕を閉じた。

 


▲ロッカールームは涙に暮れた


[今年の形貫く

 

 それはあまりにもあっけない結末だった。これに勝って国立へ、と息巻いて臨んだ2回戦。80分の戦いの末に、チームにふりかかったものは哀しみだった。


 自分たちが信じたラグビーをどこまでも貫いた。出だしからFWで真正面からぶつかっていく。「FWは勝っとうやないかと思うくらい」と主将・小原(社4)。後半にはゴール前のセットプレーからFW陣で縦に押す、今年の形で連続トライを決めた。「モールはトライ取らせんかったし、逆にこっちは取ったし」。関学ラグビーを全国の舞台でも見せつけた。


 関東勢と倒し、日本一になるために肉体改造を果たし構築したFWラグビー。けれども現実は、それだけでは勝てなかった。相手FWと繰り広げたブレイクダウンの激しさに手が出ず、かたやBK陣の精度の高いプレーに翻弄された。「FWもBKもすごいボールにからむのがうまい。ウチは出来なかった」。打倒関東として対戦を待ち望んでいた明大戦だったが完敗に終わり、その差をまざまざと痛感させられた。


[歴史的な1年

 夢はついえた。だがFWラグビーという今季の形で関西2連覇、対同志社大完全勝利と感動を起こしてきた小原組の闘姿は歴史に刻まれたことだろう。

 


【『朱紺スポーツ』vol.26】



[写真提供:関西学院大学体育会学生本部編集部『関学スポーツ』]


※選手権2回戦詳報『頂は、高く険しく。』もあわせてご覧下さい。なお、小原組の戦いは終わってしまいましたが、ブログの更新は続けたいと思いますので、もうしばらくおつきあいくだされば幸いです。よろしくお願いします。 朱紺番 坂口功将


『頂は、高く険しく。』

投稿日時:2009/12/29(火) 03:56

【[選手権2回戦詳報] 頂は、高く険しく。】



 

 名前負けしたところから試合は始まった。今シーズン、チームは関東勢との練習試合をことごとく組んできたが明大とは出来ず。『FWが強い』『伝統校』というイメージしか持てなかった。そうして立ち上がりから相手ペースを許し前半で差をつけられる。


 だが、このままでは終われない。FWに対しては手ごたえを掴んでいた。「自信持っていこう!」とハーフタイムで気合を入れなおす。「自分たちのペースに持っていけば点取れる」。まさに後半はそうなった。コート中央からでもモールで形を作り上げ、朱紺の重戦車がインゴールへ突進する。そうして後半5分にモールでのトライに成功すると、それに続くように前半途中から出場した小原渉(人2)がトライで続いた。追い上げムードのなかで躍動する闘士たちの姿は、関西を制したラグビーそのもの。追加点を取られても粘り強く取り返した。


 しかし前半に大きく広げられた点差を埋めるまでには至らなかった。29-62の完敗。国立、そして日本一への夢はまたしても瑞穂の地でついえた。


 試合後、ロッカールームには選手たちが嗚咽する音だけが流れた。互いに手をとりあい、抱き合い、最後の時間を過ごす。1年前も見た同じ光景。いつかここで違う表情が見られる日はくるだろうか


▲FWラグビーを貫いた


 武器だったFWの威力は確認できた。だが何よりも、地力の差を見せつけられた。相手と違うかったのは「置かれている環境」。


 東高西低の大学ラグビー界では公式戦をふくめ、普段からのラグビーそのものが違う。この日明らかだったブレイクダウンを制する激しさ、キックパスなどの状況に応じた展開力。組織的な面でも敵わない部分があった。「関西同士で切磋琢磨しないと。ブレイクダウンの激しさをひとり一人が意識して、それが普通になったら」と主将・小原は関西リーグのレベルアップを願った。


 その事態を想定したうえでチームは積極的に関東勢の大学とのマッチアップを春から決行した。結果こそ奮わなかったものの、体重増加と肉体改造による接点の強さは自信となっていた。それが関西を制したFWラグビーへとつながった。


 あとは場数を踏むだけだ。「関学って最近強くなったチーム。瑞穂来るのも2回目。明治は伝統校で戦い方を知ってる」(小原)。経験の差が浮き彫りになった、『関西王者・関学』の2年目の選手権だった。


 負けた明大とは初対戦だったがそれも次につなげるしかない。「大学選手権でしかやれない相手。去年の法政、今年の明治と僕らの代でそれを2回経験できた。今年の敗戦は、先につなげられる敗戦です」とWTB長野は話した。そこには『3度目の正直』での国立行きをにらむ、来季の男の闘志があった。■


(文=朱紺番 坂口功将)

 

『勝ちたいんや!』

投稿日時:2009/12/26(土) 00:32

 勝ちたいんや!だから勝ったんや!黒星は終わりを意味する選手権が幕を開けた。その初戦で同志社大を迎え撃ち、見事に撃破。闘志の源である、勝利への渇望が試合の明暗を分けた。

 

 



 ノーサイドの笛が鳴り、整列する双方のジャージの色は、コントラストがくっきりとしている。校歌『空の翼』が響く歓喜の渦のなか勝利に浸る朱紺。そのすぐ横にはうなだれる紺グレの姿。負ければ終わりの選手権を表現する画が花園のグラウンドに描かれていた。


 肌を合わせて感じた、ライバルの前回との違い。関西リーグ最終戦で下したときとは全くの別人。そうして試合は取りつ取られつの攻防が続く。


 「(お互いの)勝ちたい気持ちが目に見えた試合」


 そう主将・小原(社4)は感じていた。そのうえで断言できた。自分たちは「負けてない」と。


 今年の関学ラグビーの核となるのは屈強なFW陣。自慢の攻撃力はこの日も爆発し、HO緑川(商3)、LO松川(経4)らがトライをあげた。そのなかで貴重な勝ち越しトライを決めたFL西川(文4)は試合前の心境を話す。


 「負けたら終わりっていうのがあって。出れる人も出れない人も気持ち入ってて、応えようと」


 シーズンは大詰め。決して負けることが許されないところまできた。グラウンドで戦うもの、それを見守り支えるもの、すべての思いが一戦ごとに集約される。


 関西を2連覇しても、それは夢半ばだ。ここで終わるわけにはいかない。だから男たちはさらに強くなれる。


 「気持ちの分で、必死にやってくれて。勝ちたい気持ちが上回った」(小原)


 ライバルとの実力は互角だった。そのわずかな差を分けたのは、勝利への渇望に他ならない。「勝利を信じて」戦い続けた朱紺の闘士たちにラグビーの神様はほほえんだ。


 「勝ちたい」という純粋な気持ち、それは夢を実現するまであせることはない。


 試合後、緑川は言った。


 「トライ取れたのは、みんなのおかげス。FWで3回生が僕だけなんで。4回生を胴上げできるように」


 FWの中心で躍動する男の、「勝ちたいんや」が垣間見えた気がした。■



▲勝利への思いを全面に押し出す緑川


『朱紺スポーツ』vol.25

投稿日時:2009/12/21(月) 07:13

【西川、緑川トライ!芦田、負傷もなんの!】

 

 関学のプレースタイルが「縦に」なら、「縦に」つながりのある男たちが活躍します!紺グレとの再戦となった選手権一回戦はHO緑川(商3)、FL西川(文4)のトライでリードを奪うと、SH芦田(人2)が負傷しながらも最後までプレーし、勝利に貢献した。


▲西川が切り込む


[緑川の復調

  選手権初戦のハイライトを飾るのは、奇しくも同じ高校出身の3人だ。緑川、西川、芦田はいずれも東海大仰星高出身。シーズンとおして活躍見せる男たちが闘志を爆発させた。


 まずはFW陣のなかで唯一の3回生レギュラーをはる緑川だ。先制点を許し、流れを引き戻したいなかで同点トライ。インゴールへのアグレッシブな姿勢は全国の舞台でも健在だった。また、試合前日の練習後も入念に行なっていたスローインもこの日は安定感抜群。リーグ戦では苦い思いをしてきただけに「けっこう取れてた」と復調の兆しを見せた。


[西川の本能

 同点のまま進んだ前半半ば。男は相手のパスワークを眈々と読んでいた。西川がジャンプ一番でインターセプト。「(相手が)振りそうな雰囲気で。うまいこと入ってきた」。そこからは誰もいないゴールへの道をまっしぐら。「前しか見えてなくて。行ったろうと」。待望の勝ち越しトライを決めた。もはや攻撃センス、ゴールへの嗅覚は疑いの余地なし。それでも本人には勝ち越し点の自覚がないあたりが、怖いところ。トライゲッターとしての本能が、まだまだ敵陣を陥れていく。


[芦田の不屈

 得点で魅了する先輩たちとは別に芦田も不屈の精神で試合を乗り切った。前半18分にタックルをくらい足を負傷。いったんベンチに下がるほどのものだった。その場ではテーピングを何重にもほどこし戦線復帰。ハーフタイムには患部に注射を打ち、後半にむけて体勢を整えた。「前半はひきずったけど、後半は動けて」。前回とは別物だった紺グレに臆することなく、巧みなボール裁きで相手を翻弄し最後までプレーした。チーム全体の意思疎通も成熟しつつある状況のなかで芦田のタクトが火をふく。


 彼らに共通するのは1年生次からレギュラーに名を連ねているということ。同校出身者の実力の高さがうかがえる。朱紺のジャージを揃えて戦う彼らが、次の明大とのFW合戦ではますます目が放せないぞ!


【『朱紺スポーツ』vol.25】



[写真提供:関西学院大学体育会学生本部編集部『関学スポーツ』]


試合詳報:選手権一回戦

投稿日時:2009/12/21(月) 07:07

【選手権一回戦 試合詳報&観戦記】


▲ハーフタイムの円陣


 

 紺グレからのリベンジマッチ。そこにいたのは別人のライバル。開始早々に許したワントライで、関学の応援スタンドの空気はさぞかしヒヤリとなったか。「あせったかもしれんけど、勝利を信じて戦った」と主将・小原。ただ勝利だけを目指し、小原組は自分たちのラグビーを貫く。そうして「縦に」出る形をつくりあげ、前半13分にHO緑川がトライ。同点にすると、同26分にはインターセプトから自らボールを運んだFL西川が勝ち越しトライを決めた。前半にはSH芦田が負傷したが、やがて戦列に復帰しFWをコントロールした。


 さらに追加点に成功するが、前半終了間際にトライを許しライバルの意地を見せられる。けれどもハーフタイムに小原組に浮かんでいたのは笑顔だった。


 「ラグビーは楽しいもんやから。笑顔が必要。運もこっちくるし、笑おうぜ!」


 主将を中心に円陣ではじけた笑顔は、それこそが勝利への意欲そのもの。ムードを高め、後半に臨んだ。


 そのかいあってか、後半開始からLO松川が2トライで追加点を重ねる。相手の「勝ちたい」気持ちが反撃のトライとなって表れたが、こちらの「勝ちたい」気持ちがリードをしっかりと守りきる。


 38-24で勝利し、2年連続の選手権初戦突破をはたした。


 かたや失点シーンが浮かぶ試合内容も、大崎監督は「どこを守れるか、どこを抜かれれるかを徹底してやっている。抜かれる以前のとこで、抜かれていたのが問題」と今年の関学ラグビーのスタイルからこそ割り切っている部分と課題を口にした。主将・小原も「点を取られたのは反省。何が足りんかったか。意識で変えられるとこは変えていきたい」とディフェンス面の課題に面と向き合うつもりだ。


 攻撃力は文句なし。そう言ってやまないFW陣が、次は『FWラグビー』の伝統校・明大とぶつかりあう。「BKで勝負してもいけるけど、最初はFWでまっこう勝負」と芦田は意気込んだ。小原組はいよいよ、念願の関東勢と手を合わせることになる。

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