『WEB MAGAZINE 朱紺番』 2013/5/11
関西学院ラグビーカーニバル『深まる絆は、闘志の種に』
投稿日時:2013/05/11(土) 16:00
■関西学院ラグビーカーニバル『深まる絆は、闘志の種に』

「レディース、アンド、ジェントルメン!ボーイズ、アンド、ガールズ!」
マイクを握り、開会式の音頭を取った福本浩兵(平成15年卒)広報担当兼高等部コーチの大号令が響き渡る。
5月5日、天候は快晴そのもの。甲山に臨む上ヶ原・関西学院大学第2フィールドは、大勢の人でにぎわっていた。主には体育会の学生たちが部活動に励むいつもの光景ではなく、文字どおり老若男女の面々がフィールドの内外を埋めている。
今年で15回目をむかえた、『関西学院ラグビーカーニバル』。関学が主催するラグビーイベント。そこでは、下は地元のラグビースクールの少年たちから上は大学ラグビー部員の面々と、加えて、それを見守る保護者やかつてのOBもグラウンドを訪れる。まさに一家勢ぞろい、“関学ファミリー”が一堂に会するのだ。
この日、開会式を終え、まずは“末っ子”のスクール生たちがプレーに興じた。ゲーム前には各チームそれぞれに、スクールのOBである大学生たちがつき、タックルバックを持ち、ちびっ子ラガーたちのタックルを受ける姿も見られた。
昼からは“次男坊”高等部が京都成章高校を招いての試合を開催。現在の関学ラグビー部ではSH湯浅航平(人福4)をはじめ、PR安福明俊(教2)やSO宇都宮慎矢(社2)といった有力選手の出身校である。いずれは全国・花園の舞台であいまみえることに期待が高まる2校が対戦した。
その試合は前半、京都成章高が自在に攻撃を展開し、点差をつける。ゲームキャプテンを務めたナンバー8飯田拓くん(3年生/関西学院中出身)が話すに「ゲームへの入り方が悪かった」。だが、この日はカーニバルだ。関学のホームグラウンドで行なわれる、関学が主役の祭典。「内容の良いゲームをしよう」。高等部はチーム内で意識を引き締め直し、ハーフタイムに円陣を組み、後半へ臨んだ。
いつも念頭に置いているのは、2つ。チーム全員で点を取りにいくことと、ディフェンスで相手を0点に封じ込めること。
そうして後半はFWを主体に攻撃を仕掛けていく。そのなかでも、飯田くんは「僕が前に行って、チームを引っ張れるように」とポジション柄求められる動きとキャプテンシーを発揮し、奮闘した。
とき同じく、敵陣内でのプレーが多くなってきた関学高等部の様子を、眺める視線があった。この次に控える天理大学との招待試合にむけアップを始める“長男”大学ラグビー部。高等部出身であり、いまやチームの核となっているナンバー8徳永祥尭(商3)は、自分と同じポジションの後輩に注視していた。
「ナンバー8の子がタッチ回数多くて、ボールもらうな、って。あんなに前に出る意識がある、上手いなと思って見ていました。ここぞの頑張りがすごいとも」
先輩の目にとまるほどのハッスルプレーを、ゲームキャプテンは見せたが、追撃及ばず。高等部は1点差(28-29)で敗北した。「悔しいです。(相手は)強いなと。FWが強くて良いチームで、それにBKも良い選手が多い印象でした。
ゲームの入り方が悪かったのと、ラインアウトのミスが修正しないといけなかった点が反省です」。飯田くんは悔しさをのぞかせながらも、はっきりとした口調で試合後の感想を述べた。
次男坊が最後まで戦い抜いた。続くは祭りのトリを飾る、長男の出番。こちらも関西大学リーグ3連覇中の王者を相手に、手に汗をにぎる、しかしそれが喝采のガッツポーズへと変わる、応援する者の胸を熱くさせる戦いぶりを見せる。敵のテンポ良いアタックも粘り強いディフェンスで跳ね返すと、攻めてはFW陣が大きな塊となってゴールを陥れる。結果、24-12のダブルスコアで勝利を収めた。
そんな兄貴の戦いを、こちらも声援を送りながら、目をこらして見ていた。「学べるとこは学んで、活かそうと。SHとFWの攻撃の仕方が勉強になりました」と飯田くん。そして彼もまた、同じポジションの先輩の姿に目を奪われていた。
「ナンバー8の徳永さん。どういうふうにディフェンスにいくんやろう、と。中学の頃から憧れでした」
学年としてはあいだに2年を挟んでいるため、直接の関わりはない。けれども、飯田くんが中等部にいた頃には、すでに徳永は超高校級のプレーヤーとして名を馳せていた。
「直接は話ししたことはないので…聞いてみたいです。デイフェンスのタイミングの取り方とか。もちろんオフェンスも」
大学が白星でトリを飾ったこともあって、ラグビーカーニバルも盛況のうちに閉幕した。閉会式を終えてからのインタビューで、そう話した飯田くんに。ならば、と言うわけではないが、ファミリーが揃ったこのカーニバルを象徴する写真を撮るために、徳永との2ショットを願い出た。思いもよらぬ申し出に戸惑いの表情を見せたが、承諾してくれた。
目に留まっていたという後輩が、こういうことを聞きたいと話していた―。そう本人に投げかけると、「それだったら、僕なんかよりタケ(竹村俊太=LO/人福3=)とかに聞いた方が良いですよ!」と徳永。曰く、タックルよりもブレイクダウンといった、ボールのあるところに働きかける動きこそが自分のウリだと。それでも、後輩ナンバー8の印象で、最後にこう述べていた。
「アップしながらだったので、彼のディフェンスがあまり見れなかったんですけど…。ディフェンスが出来たら、相当良い選手だと思いますよ」
<徳永(左)と飯田くん(右)>
ラグビーカーニバル。そこでは、世代を超えてラガーマンたちがだ円球を手に取り合う。ラグビーを始めたスタート地点でもある地元のラグビースクールへ、十数年の時をまたいで帰ることも出来る。宝塚ラグビースクール出身の徳永も、かつての指導者と話せる機会を嬉しく感じるという。
そして、一つの看板もとい旗の下でプレーする学生たちがお互いの存在を認識できる場でも。練習場所こそ一緒であるが、試合を見るとなれば機会は限られる。高等部時代こそは一日がかりのイベントにくたびれていたと明かす徳永だが、いまは長男として襟を正す。
「高等部からしても、大学の試合はなかなか生で見れないですから。お手本に。僕らを見て、ラグビーを続けるようと思える存在になろう、と。きれいに、正しいラグビーができるように心がけます」
ファミリーと形容できるほどの、つながりを持つ関学だからこそ。魅力が引き立つイベントなのだ。自身6回目となる祭典を経て、飯田くんは話す。
「こうして中高大が集まるのが、関学の良いところだと。カーニバルは、関学に入ってよかったと感じるとこです」
この日、家族の絆はまた一つ深まったことだろう。そうして、まだまだ続くシーズンへむけお互いが、目標へむけ走り出す。
2ショット撮影を終えたあとに、先輩が後輩に手を取って、かけた「頑張ってな」の一言が。これからの競技活動を後押しすることがあれば、それもまたカーニバルで得られる闘志の種になると思ってやまない。■(記事=朱紺番 坂口功将<広報担当>)
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