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『WEB MAGAZINE 朱紺番』

竹村俊太『闘率せよ。新たなるリーダー』

投稿日時:2013/11/20(水) 01:54

 いままさに必要とするは、ピッチ上での闘志。主将だけではなく、プレーヤーそれぞれがチームを扇動し、鼓舞するという強烈な意思を持つこと。リーグ戦も半ばを過ぎ、ここにチームからリーダーに指名された男がいる。LO/FL竹村俊太(人福3)、闘率者の胎動。

 

■竹村俊太『闘率せよ。新たなるリーダー

 


 

 出身高校を同じくする主将・畑中啓吾(商4)はこう称える。


 「あんなに優しそうな顔をして、むちゃくちゃ激しくプレーする」


 接する人は、その温和な雰囲気にふと、和みを感じることだろう。仏のような顔立ち、それに加えピッチ上での有無も言わせぬハイ・パフォーマンスが、さらに信頼感を増幅させる。


 その選手の名は、LO/FL竹村俊太。彼は、自らの存在を確たるものにしている。昨シーズンにトップチームに選出されてから、常にスタメン入り。ピッチに繰り出しては終始走り続け、セットプレーではきちんと自らの仕事をこなし、そして誰よりもタックルにいく。ボールにくらいつく姿勢の延長で、インゴールを割ることも。


 ただ、ポジション柄もあるだろう。ネームバリューも含め、真っ先に名前が挙がるような選手ではない。だが、誰もが目にしている。竹村のハードワークを。そして、そこで常に発揮される安定感抜群のパフォーマンス。


 かつて「自分では安定しているとは思っていない」と明かしたが、「いつもどおり100パーセントのプレーをしよう」という気概が、フィールドでの一挙一動に宿る。全力プレーが、チームからの厚き信頼感につながっていることは言うまでもない。


 3回生となった今季も、それは変わらず。チームが始動した当初から、FWの中心選手として君臨している。ハイレベルでの安定度合い、それでも3年目を迎え、彼のなかでは気持ちも新たにした。それは上級生としての意識だった。


 「今までは3、4回生に頼りっぱなしだった。3回生になって、引っ張っていく立場になって。自分が引っ張って、結果を出さないとダメに。責任を感じます」


 シーズンも深まり、関西大学Aリーグに突入。開幕戦ではトライも挙げ、やはりは見るものをうならせる、竹村俊太のプレーを繰り出す。


 そうしてリーグ戦も半ばを過ぎた時点で、彼はチームからFWリーダーを命じられた。



 11月9日、リーグ第5節・立命館大戦。彼はただ一つ、これまでとは異なり、ゲームに際して、FWリーダーに就くことになった。現職のFL丸山充(社4)がリザーブに回ったこともあり、ゲーム上でのリーダーの意味合いもあっただろう。主将も「リーダーの自覚」を竹村に促した。


 彼が話すに、これまで競技人生のなかで、キャプテンといった役職に就いたことはない。関学においては2年生次から学年リーダーを務めてきた経緯がある。が、もとより「言葉が上手くないんで」と苦笑いを浮かべるように、穏やかな性格ゆえの物静かなタイプ。「まとめてから話をしたりする時とかは難しいです」と苦難を述べる。


 けれども畑中は、任命してからの彼の変化を感じていた。「練習中から、よくしゃべるようになりましたね」


 〝FWリーダー〟竹村の初陣となった立命大戦は、残り時間10分での相手の猛追を振り切っての勝利。スタメンのFW8人全員に3回生を配した采配もあるなかで、結果を挙げることが出来た。劇的勝利に気運も上がったチームは、「勝った次の試合が大事」(畑中)と心に留め、次なる相手の天理大との一戦に臨んだ。


 11月16日のリーグ第6節。試合前に設けられたレフェリーチェックの場面で、聞いておきたいことはないかという主審の問いかけに竹村は手を挙げた。事前に萩井好次アシスタントコーチとも話していた内容を、レフェリーにぶつけ、しっかりと確認を行なう。アップ時には、天理大の練習風景に目を配っていた丸山から「ラインアウトは分析どおり」と進言され、受け止めた。


 だが、いざ試合本番ではチーム全体の動きが鈍っていた。オープニングトライを相手に献上すると、その直後にPGを与え失点、そこからまたしてもトライを許し、開始10分にて15点差をつけられた。


 前節でも露呈した課題を克服できなかったショックは確かにチームに響いた。「受けてばっかりでした」と主将が振り返るように、自陣でのディフェンスに終始するゲーム展開。警戒していたCTBもさることながら、「前に出る圧力がすごかった。順目にいくのも、ボールの捌きも早かった」と主将は相手のオフェンスの印象を述べた。


 一方で数少ない攻撃のチャンスも、この日は不発に終わる。得点パターンである外へ一気にボールをつなぐ展開ラグビーも、ゴールが遠い。「横々になりすぎて、縦にいけなかったのが反省点です」(畑中)。


 FWとしても敵陣内へ迫るが、相手の迅速なるディフェンスを攻略できない。「ゴール前で取りきることが出来なかった」とFWリーダーは悔やんだ。


 相手の攻撃に関しては主将が話すに「想定の範囲内」だったが、守備は実感して「想像以上」(竹村)。結局80分間を通じて、奪った得点はPG2本のみ。天理大との一戦は、畑中組にとって公式戦では初めてのノートライという、文字通りの『完敗』に終わった。



 「悔しいですね。まだ安定してない。良いパフォーマンスを継続して出せてない」


 天理大戦直後、竹村は悔しさをにじませた。と同時に、劣勢に陥ったゲームのなかでチームの闘志を奮い立たせる、響くようなアクションまでに至らなかったことへの反省も。


 「沈んでしまう場面が多かった。前を向かせるような、ポジティブな声がけが出来たら良かったと」


 ピッチ上でのパフォーマンスには文句のつけようがない。〝体を張る〟ことは、それだけで周囲の心を惹きつける。竹村のリーダーシップも根底にはそれがある。ただ、彼自身はチームを率いる者として、必要となる〝声を出す〟ことに挑む気概だ。


 そして、それはチーム全体に対しても、同期たちに対しても。トップチームの主力選手に3回生が多い現状において、竹村はこう語った。


 「良い意味で仲が良い。けど、悪い意味で厳しさが無いと。強く言えないところがあるので。厳しく言っていかないと、こういう試合も勝てないのかなと思います」


 口にした言葉から垣間見えた、厳格たる決意。チームを勝利に導くためにも。


 竹村俊太よ、今こそ修羅となれ。(記事=朱紺番 坂口功将<広報担当>)

関連リンク

▶竹村俊太プロフィール