『WEB MAGAZINE 朱紺番』 2013/9/24
徳永祥尭『関学が誇りし進撃の巨人』
投稿日時:2013/09/24(火) 12:00
<※学年表記は2013年現在のもの>
■徳永祥尭『関学が誇りし進撃の巨人』
早速だが、こんな言葉をご存知だろうか。
『ボールあるところにマコウあり』
これはニュージーランド代表オールブラックスのキャプテンを長らく務める“生きる伝説”ことリッチー・マコウ選手を称した、ラグビー界における格言の一つ。エリアもプレー時間も問わず、ボールに働きかけるそのハードワークぶりを表している。
そんな格言が浮かんでくるほどのプレーを見せてくれる存在が関学にはいる。
徳永祥尭。高等部時代から注目を集めてきた大型プレーヤー。身長は185センチ。150人に至る大所帯のチームがグラウンドに一堂に会しても、見つけるのは容易い。
周囲とは抜き出た背丈がその一因ではあるが、特筆したいのは彼が醸し出すオーラ。同じグラウンドに立てばそこにいるだけで引きつけられる、一方でカメラのファインダー越しであれば捉えざるを得なくなるほどのフォトジェニックさ。それすなわち、彼の引力。
振り返れば2年前、超高校級の選手として大学に迎えられた。前評判に違わずの圧倒的存在感は入学当初からにじみ出ていたという。ポジションの被っていた先輩プレーヤーが自らコンバートを申し出た、なんて逸話も。
その彼は、学年を重ねるごとに、まといしオーラを増幅させてきた。恵まれた体格と、それを存分に活かしたプレーは言うまでもなく、徳永祥尭というラガーマンになされた一つの評価がそうさせているのだ。各カテゴリーの日本代表への選出である。
昨年は、春シーズンの大半をチームから離れて過ごした。PR井之上亮(社3)、PR/HO金寛泰(人福3)らと揃ってU20日本代表に選出され、チームに合流したのは夏前だった。当時の徳永の胸中は―。
「正直、Aチームに入れるかどうか不安ありました。めっちゃタックルいくし、みんなフィットネス上がって走れるようになってたし」
入部早々から掴んだレギュラーの座も、決して確約されていたわけでなく、しばらく離れていたうちにチームはみるみる成長を遂げていた。しかし、彼もジャパンという特別な環境に身を置いていた。
「学んだことを出せたらなと」
間もなくして関西大学Aリーグの開幕戦のメンバーに選ばれる。10月7日、天理大学との初戦。試合が終わりロッカールームへ引き上げる最中に、彼に聞いた。U20で学んできたことを。
「ボールをもらう前の動きと、正面ではなくずらす動きを。そこは外国人を相手にしたときの体の使い方で。むこうでやってきたことを、大学でも」
話すに、正対する相手選手との間合いの詰め方を身につけたのだと。海外では外国人選手は真正面から当たってくることも。だが、それに対しては「一発で倒せるんです」ときっぱり。逆に、相手がずらしてきた際に、これまではプレー柄「厳しい部分があった」。そこをいかに足の運び等から、ついていけるか、そして捕らえることが出来るか。その点を学び、吸収した。
この日の試合では、アタック力に秀でた天理大のボールキャリアを幾度と仕留める姿が。なかでも主力の留学生プレーヤーを捕まえていたのが、徳永が目立っていた所以でもある。
それでも、このときインタビューを行なったのが惜敗(15-17)した試合直後とあって、悔しさをあらわにしていた。
「悔しい、の一言スね。自分のやってきたことを出して…出し切ったというゲームをやりたい」
そこから始まったリーグ戦では終始、安定したパフォーマンスを披露。攻守ともに高いワークレートを発揮していた。
あらためて記すが、ポジションはFW内の一列目以外であればどこでも。豊富な運動量が求められるバックローでプレーする。3年目を迎えた今季、その存在感は表すならば一言、不動。
そうして、この春先にはジュニアジャパンに招集された。彼にとっては、さらに自身を押し上げるにこのうえない機会を得たのである。
「ハードなスケジュールのなかで、基本的に試合前の調整とかは無くて。ゲームの前の日でもウエイトをしたりも。常に個人を強くする為に、どうするかを考えたプログラムが組まれていて。
社会人の方と一緒にラグビーをやらせてもらって、ラグビー以外での過ごし方や個人でのトレーニングとかを学べました」
同じ境遇の選手が集まったU20とは異なる、また一つ上のステージ。そこでの意識の変化が、自身の向上心につながった。
「体のデカさが無いと通用しないんで。ウエイトトレーニングも決められた日に加えて1日、2日は多く入ろうとしています。そうすれば、怪我も少なくなると思うので」
それはジャパンで気付いた点でもあるだろうが、大学に復帰した際に徳永はこんなショックを覚えたことを明かしている。
「ジュニアジャパンから帰ってきて、チームのコンタクトレベルの上がり具合にびっくりして。AチームとBチームでのアタックディフェンスの練習時に、Bのメンバーのボールへの絡みが激しいのと、上手さに『ここまで!?』と受けてしまった。感動しました」
チームの内外で、身を置いた環境で受ける刺激が、さらに彼をストイックに。そうしてパワーアップした強靭な肉体が生じさせる熱量を、プレーに昇華させる。それが存分に見られたのが、この春、関学ラグビーカーニバルにて執り行われた天理大との一戦だった。
PG一本の関学リードで迎えた後半。一進一退の攻防が繰り広げられるなか、敵陣内で得たワンチャンス。マイボールのスローインを獲得し、相手ゴールラインへモールで迫る。インゴールへなだれ込んだ軍勢、歓喜とともにその山が割れると、そこには地にボールを押し付ける徳永の姿があった。「モールで簡単にトライが取れた。チームとして取り組んできた練習が活きたのかなと。相手側がBKの方が強いんで、FWから組み立てていこうと話していました。FWも大きくなっているぶん、セットプレーからも優位に立てると」
追加点を挙げたFWの組織力は、この後もスクラムで相手を圧倒するなどゲームの流れを掌握するに十分なものであった。一方で『個』の力も。タイトなゲーム展開もお構いなしに、時間帯を問わず、いたる局面にも、朱紺のジャージをまとった巨人は躍動していた。ブレイクダウンに転じるや、真っ先に絡んでくる。そのプレーに、浮かんだフレーズは、まさに―
『ボールあるところにトクナガあり』
「自分の良さだと思います。タックルよりもブレイクダウンの方が、そこがウリになります。
でも、まだまだ自分でもフィットネスの部分で安定感が無くて、走れないところも。そこは克服していかないと。
今日(天理大戦)はハードでしたね。むちゃくちゃ疲れました。暑くて走れてなくて…終わって周りにも指摘されました。まだまだ出来てないと」
豊富な運動量も、それを蓄え稼働させる器も。本人にしてみれば、まだまだ。己の目指すレベルは、先にあるのだろう。
飽くなき向上心を持って、進化する徳永祥尭。もしかしたら我々は関学ラグビー部の“生きる伝説”を目にしているのかもしれない。
3年目のリーグ戦で発揮されるは、チームに勝利をもたらす、進撃する巨人のごときパフォーマンスか。
もはや誰が、彼を止められよう―。■(記事=朱紺番 坂口功将<広報担当>)
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