『WEB MAGAZINE 朱紺番』 2013/10/3
鈴木将大『そのプレゼンスを今こそ』
投稿日時:2013/10/03(木) 12:00
<学年表記は2013年現在のもの>
■鈴木将大『そのプレゼンスを今こそ』
一年以上も前になるのか。春シーズンも半ば、関学ラグビー部は敵地の立命館大学BKCグリーンフィールドに出向き、オープン戦に臨んだ。試合は白星を収めたが、その帰路。当時の藤原組の副将・安田尚矢(人福卒)は嘆いていた。
「あいつが抜けるのは…ほんま痛いなぁ…」
まるで自分のことのように表情に影を落とし、落胆していた。
昨年の5月20日、立命大戦にて負傷したのはFL鈴木将大。開始2分での出来事、前十字靭帯を断裂した。主力選手として台頭してきた矢先の怪我。長期離脱を余儀なくされた2年目のシーズンを鈴木は振り返る。
「12月くらいまでリハビリをすることになって。そうしているうちにリーグ戦が始まって、『このチームでプレーがしたい』って思うように。結局は1ヶ月早めて、復帰させてもらいました」
自身は募らせたプレーへの思いを原動力に復帰を果たした。一方でチームメイトの、もっとも藤原組の屋台骨でもあった先輩がああもショックを覚えていたわけとは。その理由は、鈴木将大の存在感=プレゼンスにある。前述の安田はこう語っていた。
「あいつがいると、1、2回生が自分たちのプレーをするんです。精神的な面でまとまる。それこそ、僕らも自分のプレーに集中できた」
関学高等部時代はキャプテンを務めた。その年、チームは冬の花園にてベスト4にまで上りつめている。歴史的シーズンを成した一因に、鈴木のリーダーシップがあったことは違いないだろう。その彼が怪我を乗り越え、3年目となる今季、いよいよ本格的に大学ラグビーの戦列に加わったのだ。
「上級生の仲間入りして。自分のことだけじゃなくて、チームのことも頭に入れながら、コーリングしたりしています」
全開の状態で臨んだ今シーズンは、それこそ大学3回生として、チーム内でも半数を占める下級生たちにも目を配らせなければならない立場にあった。加えて、ピッチに立つ鈴木将大というプレーヤーに周囲が求めるのは、その統率力。そして彼の真骨頂でもある、仲間を鼓舞するコールだ。
昨年の藤原組にて同じような立ち位置にいた安田の、鈴木評をここでもう一つ。
「ああいう存在が一人でも、チームにいるだけでね。怪我しても、声出しだったり積極性は失われてなかった。あいつの存在…でかいですよ!」
ピッチに立つ姿勢、つまりは存在そのものが大きい。ならば、と期待したくなる。もっとも周りは期待を高まらせていたことだろう。この男なら、チームがいかなる状況に陥ったとしても、道を開けてくれるのでは、と。
それがトップチームであれば、よりいっそうに。何よりも、あの朱紺色のジャージの重みを知っている人間だ。リーダーとして、全国の大舞台にチームを率い、ピッチで戦ったからこそ。
そうして大学3年目でむかえた関西大学Aリーグ。9月29日の開幕戦にて、鈴木はスタメンに選ばれた。
「前の週のジュニアリーグで出たりしてて…木曜日にメールでメンバー入りを知りました。リハビリもやってくれていた長瀬さん(長瀬亮昌コンディショニングコーチ)から『(メンバー入り)あるかもしれない』と言われたりもしてたんで、心の準備はしていました」
朱紺のファーストジャージを着用しての出場は花園以来。鈴木は「選ばれた以上は、チームの代表として、勝ちにつながるプレーをしたいな」と意気込んだ。
リーグ戦の封を切った京産大戦。試合前の整列で、畑中組のメンバーは背番号順に並んだ。鈴木は『7番FL』。なんと、この日のピッチには7番から9番まで、あの花園ベスト4のメンバーが揃うことになった。ナンバー8は徳永祥尭(商3)、SHには徳田健太(商2)がついたのである。
「徳田は高校からやってきて、パスを放つタイミングは頭に入っている。徳永も一番長く一緒にFWでやってきたので心強い。やりやすかったです」
かつてのチームメイトがそれぞれ成長し、次なる舞台でも主力となって、いまは横にいる。鈴木の大学ラグビーはこうして幕を開けた。
だが彼のデビュー戦は苦いものとなった。前半こそリードしていたが、後半早々に連続失点を許す。最終スコアは19-30。チームとしても持ち味を出せずに黒星を喫した。
「気持ちが入ってなかったわけではないんですけど、相手の低いタックルに足が止まって…気迫にもやられました」
相手のプレッシャーをもろに受け、自らのミスで攻撃のチャンスの芽を摘み取ってしまう。負の連鎖にはまった畑中組の姿がグラウンドにはあった。
その開幕戦で、ピッチに立った72分間(FL長澤輝(社4)と交代)を鈴木は悔しさをのぞかせながら話した。
「納得のいくプレーはあまり。結果がすべてなんで。反省して次の試合に臨みたいです」
静かな口調で、しかし伺えるのは胸に秘めたる闘志。終始、劣勢に立たされていたともいえる状況を打破できなかったことへの反省か。鈴木は続けた。
「チームの為に、誰よりも体を張って…そうですね、体を張っていきたい。自分にはそれしかないと思うので!」
初戦の黒星はチームにとって確かに痛手だ。けれども、戦いはこの先もまだまだ続く。願わくは、この男のプレゼンスがますますフィールドで発揮されることを。鈴木のプレーが、張り上げるコールが、選手たちを発奮させる。さすれば、勝利はより近づくことだろう。■(記事=朱紺番 坂口功将<広報担当>)
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