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「新里組~Challenge~」

ラストインタビュー 松村宜明

投稿日時:2012/03/13(火) 16:27



―引退してから3ヶ月が経ちました。今のお気持ちは
 
4月から就職するので、同期と旅行をしたりしています。今思うと、大学生活はラグビーしかしてなかったなって思うくらい。朝昼晩ラグビーでした。
 
―練習を見に行ったりはされていますか
 
僕はそんなに行ってないですね。同期のみんなは良く誘い合ってウエイトとか行っていますね。またトップリーグへ進む選手はウエイトやトレーニングを続けていますね。今は気持ちが楽になってみんなラグビーを楽しんでいます。本当に今思うのは、ラグビーを通しての友達やつながりがとても多い。先輩やOBの方、同期、後輩もだけど他大学の主務とも飲んだりしています。ラグビーでのつながりの仲間は本当に多いです。
 
―この一年を振り返ってどうですか
 
悔やまれる試合、取りこぼした試合が多くて、悔しい部分は思い出すけど、ただすべての試合でひとつのことをやり続けることは自分らの誇りですね。結果は求められるから、怖さもありました。リーグ戦で3試合落としてしまったことなど悔やまれることも多いけど、Challengeし続けられました。ボールを回して展開するっていうことは貫けたし、新里組の良いところだと思う。でも…やっぱり結果が出せなかったことが悔しかったです。
 
―ラグビーを始めたのは
 
小1の時です。父親に連れられて。ほんとは少年野球がしたかったんです。はじめは嫌で仕方なかったんですが、高学年になるにつれ楽しくなってきて、中学に入り好きになりました。
 
―なぜ関学を選んだのですか
 
指定校推薦です。法学部に入りたいという気持ちが強くて、先輩である寺前さんとラグビーがしたくて関学に決めました。寺前さんの存在が大きかったですし、試合に出たいという思いもありました。1年生の時に優勝して、翌年に連覇、昨年も関西2位で。強い時の関学しか知らない僕らが関西5位という結果に終わってしまった。自分らの代で結果が出せなかったことは悔しいですし、これからは「強い関学」を当たり前にしないといけない。今よりもっと高めていって欲しいですね。
 
―副務になったきっかけは
 
2年間は選手としてプレーしました。B、Cチーム中心に出ていて、時々Aチームの試合にリザーブで出させてもらったこともありました。Bでもほんとに強い人とラグビーができましたし、レベルの高い中でレギュラーを目指したいっていう気持ちはありました。でもこいつらと日本一になりたい、もっと強くなりたいと思った時、副務という役割を意識しました。手術や脱臼癖もあって気持ちに体が付いてきてなかったんです。気持ちは前に向かっても、体が動かない。はがゆい気持ちがありましたね。そのとき「チームのためになれているのか」を考えたときに、全力でやれる副務になると決めました。性格的にはそういう感じではないんですけどね(笑)。ずっと続けてきたラグビーがなくなることを思うと怖さはありましたが、同期の思いや言葉を聞いて、最後は自分で決めて、やらせてほしいとみんなに頼みました。やらされてるんじゃなくて自分で決めてやることだから、絶対に逃げ道はありませんでしたね。もちろんプレーしたいという気持ちもあったけど、チームにはそれぞれひとりひとりの役割があって。自分の役割をまっとうしよう、それがチームのためになるんじゃないか、と思ったんです。
 
―副務の経験をして、主務になったときはどうでしたか
 
チームを作れるってことで、楽しみでしたね。関学ラグビー部は人数が多いし、全員のモチベーションを大事にしたかったし、切らしたくなかった。主務になって取り組んだのは全員が毎週試合をできるようにしたことですね。これは副務をしてるときからやりたいと思っていました。試合数が増える分、上のチームに上がるチャンスが増えるし、全員をちゃんと評価したかった。何よりも選手のモチベーションアップにもつながると思ったんで。対戦相手も実力に見合った相手と試合をできるように心がけました。練習ジャージを作ったのも、大変やったけどジャージでチーム分けをできるようになったし、統一感が出て良かったかなと。


 
―松村さんが軸としていた言葉のようなものはありますか
 
軸としていたって言えるかどうか分からないですが、「ありがとう」、「ごめんなさい」を言えるようにしようっていうのはスタッフのミーティングで話しました。対人関係においてもチームにおいてもそれは大事なことやと思ってて。大崎前監督や萩井現監督がそこをしっかりしていて見習おうと思いました。あとは「逃げるな」かな。自分で副務をやろうって決めたことなんで、同期のためにも自分のためにも逃げるなって言い聞かせていました。
 
―理想としていた主務像があれば教えてください
 
小島祥平(文=09卒)さんを尊敬しているんですが、自分は小島さんのようなマネージャータイプでもなくスマートでもなくて。どちらかといえば選手と積極的に話したり、試合をたくさん組んだりしたりするアグレッシブなタイプでした。一緒にやって体感しないと選手の気持ちは分からないって思っていたので、選手との関わりっていうのを大切にしていましたね。理想はスマートさとアグレッシブさを兼ね備えている主務でした。
 
―自分たちの代が始まった時のお気持ちは
 
副務のときは下積みで正直自分たちの代のためにっていう思いがあったんですが、最後の年はとにかく涼(=前主将・新里)のために、涼を日本一にしたいっていう気持ちでした。
 
―主務として、スタッフの一番上にも立ったわけですが
 
同学年のトレーナースタッフが3人ともが我が強くて(笑)。ぶつかり合ったり一歩引いてみたり話し合いをしたり。マネージャーのみっきー(=MG荒木)は性格も分かりあえてたし、お互いに不足しているところを補てんできるようなパートナーでしたね。事務作業でも助けてくれたし、みっきーがいたから頑張れたっていうのはありますね。
 
―春シーズンは成績が奮いませんでした
 
正直落ちました。でも逆にこれがリーグ戦前やったら…と思って。見直すチャンスができたと思うようにしました。シーズンに向けてのいい薬になったと思うし、早めに気付けて良かったです。
 
―夏合宿ではいかがでしたか
 
AチームからFチームまでの試合を組むのは大変やったけどできて良かった。Aチームで頑張るのは当たり前のことやけど、この合宿では全チームが頑張っていたし成長してくれたと思いましたね。4年間で一番成長を感じました。今回の夏合宿では萩井さんとよく相談して、スケジュール調整をして試合尽くしにならないようにしたりもしました。
 
―リーグ戦は奮わず5位という結果に終わりましたが
 
選手権の抽選会になんで行けへんのやろって思いましたね(笑)。リーグ戦前、自分たちは強い関学しか知らなかったので、「強い」って自信持っていって、何やってるんやろうって思いました。初戦の立命大戦では小さくなってしまったり、結果は5位やけど自分たちの目指したラグビーをしっかりやり続けてくれました。こいつらならやってくれるって信じてたし、実力はあったと思うけど、発揮できなかった。やっぱり結果は大事やし、結果が出ればモチベーションにもなるし、相手との心理戦でも変わってくる。でもチームのスタイルをやり続けてくれて、感謝しています。自分たちのラグビーには間違いなく自信はありました。
 
―朝日大戦では4年生の活躍が多く見られました
 
やっぱり同期の活躍を見られるのはうれしいことです。特にはったん(=WTB畑中康)が試合に出て活躍してくれたのは本当にうれしかったな。1年の時からずっとジュニアチームで頑張ってて、最後につかみ取って。怪我しても折れずにやってきているのを見てきたから、活躍がうれしかったし誇りに思いました。
 
―明大戦について
 
2年前に負けた相手だったので負かしたいって思いでした。今年のスローガンであるチャレンジの中にはチェンジって意味も含まれていたので、最高のチャレンジをして歴史を変えて欲しいなと。気負いした感じではなく、楽しみな気持ちの方が強かったですね。試合が終わった瞬間は実感がなくて、「また来週もラグビーしてるのかなあ」とか考えてたけど、涼が泣いてるのを見て終わったんやなーって。悔やまれるところはあるけど、自分たちのラグビーをぶれずにやり続けることはできました。悔しい思いの積み重ねがあるからまた次頑張れると思うし、下の代の子たちは、この思いを覚えててやってくれると思うから、すごく期待しています。


 
―ラグビー中心の生活だったと思いますが
 
本当に出会いの多いスポーツだなって。ラグビーを通して尊敬できる人に出会えたし、一生の仲間に出会えました。小学校からずっとやってきて、ラグビーを通してできた仲間は本当に多いです。関学に来てからもたくさんの仲間に出会いました。先輩、後輩、同期の仲間とか、頑張っている人に出会えたなって思います。主務になってからもコーチ陣とかOBさんに関わることができました。ラグビーを16年やってきたけど、この4年間は特に濃かったです。出会いの連続で大きくなれたなって思いますね。
 
―主務をしていて大変だったことはありますか
 
いっぱいあるんですけどね…。一番は2次合宿でグラウンドのトイレ掃除をしたときです(笑)
 
―では、やりがいを感じたときは
 
みんなが普通にグラウンドでラグビーを楽しんでいて、試合に勝って喜んでいる姿かな。よく「ありがとう」を言われたときって言うけど、僕は違ってて。主務っていうのは自分が決めたことだし、やりたくてやっていることやから、見返りは求めませんでしたね。「ありがとう」って言葉よりも、練習でも試合でもみんなが楽しんでくれているところ見たら、十分でしたね。
 
―仕事のモチベーションになったのは
 
ひとつは、自分が決めたことは最後までやらないといけないっていう責任感。もうひとつは、楽しそうにプレーしている仲間ですね。あとは、後輩の成長を見れた時かな。試合を組んだり、本当に荷は重かったけど、自分が考えて思いを持って動けましたね。良い意味でラグビーを客観的に見れるようになりました。
 
―主務の仕事を通して成長したなと思う部分は
 冷静に物事を見れるようになりました。あとは、言葉に気をつけるようになったし、言葉を選ぶようになった。本当に人間的に成長できたなって感じます。
 
―今年1年間、松村さんがチャレンジしたことは
 
「選手に良くなることは全部やろう」って考えていましたね。ちょっと難しいことでも、選手の為になることなら、できるようにする工夫をして全部やろうって。食事に関してもそうだし、試合数を増やしたり、練習時間の調整をしたり。毎日チームに良いことをして頑張りました。新しいことをするっていうよりも、今まで積み上げてきたボトムを強化することが僕の挑戦だったかなって思います。トレーナーやコーチの意向や、話し合いに参加してみたり。当たり前のことを当たり前にできる人っていうのは目指していたかな。
 
―後輩達に残せたものは
 
最後まで貫くこと、やり続けることの大切さは、同期のプレーとか涼から伝わったんじゃないかなって思います。「涼だから頑張れた」って思いはあるし、ひたむきに頑張り続ける人で、尊敬していますね。
 
―後輩への思いは
 
強い代も、思うような結果を出せなかった代も、いろんな代を見ている学年だと思います。信じてるし、まちがいなくやってくれると思っています。心配もしてないし、頼もしい。OBとして応援しています。
 
―同期へ伝えたいことは
 
「主務やらせてもらってありがとう」ですね。みんなの頑張りを見て、僕自身頑張れたと思っています。これから社会に出て、慣れないことも多いけど、常にみんなチャレンジしていきたいって思います。
 
 
 
■松村宜明(まつむら・よしあき)/2011年度ラグビー部主務/172㌢・76㌔/名古屋高/お茶をすること