「小原組~ALL OUT~」
『冷静と情熱のあいだ。』
投稿日時:2009/06/30(火) 00:54
【[インサイドレポート]冷静と情熱のあいだ。】
照りつける太陽光が選手たちに襲い掛かる。互いに防御網を打ち砕く打ち合いとなった試合は同点のまま前半を終えた。是が非でも勝利が欲しいチームは、後半へむけひとときのインターバルをはさむ。そのたった数分間、朱紺の闘士たちは激しくも冷静にぶつかりあった。普段は触れられることのないハーフタイムの様子をここに記そう。

ベンチに戻ってきた闘士たちの顔は確かめるまでもなく、赤みを帯びていた。気温に加え、ハードな試合展開。テントが作る影も、体から出る熱気がその効力を失わせる。ある者はベンチに腰掛け、ある者は地べたに座り、それぞれのインターバルを取る。何かを口走ろうとしても、どこか興奮気味になってしまい、口取りははっきりとしない。
そうして数分がたったのち、十分に水分補給が出来た頃合いを見計らったタイミングで主将の小原が一声を上げた。
「よしっ、チームトークしよう」
その一言を境に、空気がガラリと変わる。それまでの吐き出される熱気ムンムンのムードから一転、ヒタリと張り詰めた雰囲気に。クールダウンされ、冷静に話し始める。
誰が先陣を切ったかは定かではないが、ひとときも休まることなく言葉が繰り出される。
この日もゲームキャプテンを務めた片岡が「1本取って取り返されてたら、しんどくなるだけ。締めて。締めて」。前半の反省点と同時に、これからの40分に臨むべき姿勢をメンバーに説く。
すると大滝が続き「相手バテてるよ!集中していこう」。チームを鼓舞する。
熱をまとった台詞が続くうちに、次第にテンションが上がっていく。
一方で冷静な声も上がる。
山本有が問いかける。「パントの精度、上げていこう。フッチー、イケる?」
氷のうで顔を覆った渕本がこくりとうなずく。
ゲームの基点を担う芦田も「FWのみなさん、しっかりとお願いします」と呼びかける。そこに遠慮などない。勝利を目指すという共通意識のもと、議論にもちかいフリートークが繰り広げられる。
▲白熱するチームトーク
試合は40分が過ぎている。それまでに浮き出た出た課題を、これからの40分で修正していくための時間。この試みに小原も手ごたえにちかい感触を得ている。
きっかけは小原が離脱したことからだった。「オレがケガしてから、関東遠征に行ってからぐらいからかな。スーパー14のビデオを見たときに、選手たちがトライ取られたあと、キレたように話あっとったんよ。強いチームがこんな感じでやってるのに、関学がやらないなんてって」。
プレーヤーから一歩引いた立場になって発見した、これまでの関学ラグビー部になかった、その時間。必要性を感じた主将は実行に移した。
「雰囲気って大事やから。後半まとまるんかなって。そういうふうにしていけたら良いなと」
あっというまの時間が過ぎ、ヒートアップと同時に、冷静さを欠かずクールになっていく闘士たち。チームトークを経て、後半へのお膳立ては出来上がった。
ハーフタイムも終わりに近づいた頃、片岡がニヤリとしながら大きな声で一人に尋ねた。
「タロウちゃん、元気無いんじゃない?」
「元気ある!」
呼応したのは松川。ムードメーカーの放ったその気合の台詞は、熱気を帯びたベンチに、笑いというさわやかな風を運んだような気がした。■
▲スタッフも必死で水を作り、選手のインターバルを手助けする。
※立命大戦の『朱紺スポーツ』vol.11も公開中!そちらもあわせてご覧下さい。