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「緑川組~MOVE~」

『真っ向勝負のどつきあい』『2010年型FW』

投稿日時:2010/10/23(土) 00:34

一挙2本立て!


◆『真っ向勝負のどつきあい』

 敵の出方は分かっていた。だからこその、真っ向勝負。そうして掴んだ京産大からの勝利で、FW陣の自信は深まりつつある。
 


 PR高橋樹(商3)曰く。「死ぬ気でFWにこだわってくるチーム」。京産大の最大の武器はそのFW。試合でもその武器は朱紺のジャージに襲いかかった。


 前半開始早々、自陣での京産大スクラム。関学はゴールライン直前で耐えしのぐ。のっけから我慢の展開が続く。だが相手がペナルティを犯すと、そこから逆襲。ラインアウトから、すぐさまモールを作り押し上げる。自陣からハーフラインを越え、敵陣へ。やがて関学が先制点を挙げるが、序盤10分のその攻防に「『FW戦』になる」と踏んだ人は多かったはずだ。


 ボクシングで例えるなら、相手はゴングと同時に自慢の右ストレートを繰り出してきたということ。ならばと、こちらも右ストレートで応戦した形。


 「相手がFWで出てくるのは分かってたんで。そこは真っ向勝負で」と萩井ヘッドコーチは話した。


 前半の40分間、両者はこん身のストレートで殴りあった。前半35分、ゴール直前に迫った京産大はモールでトライ。「やりかえしたらなアカンなと。絶対モールで取りたかったっス」と高橋が言うように、負けじと返した刀、モールで敵陣を陥れる(相手の反則による認定トライ)。前半終わって「26-17」。お互いの拳をぶつけあった末のスコアだ。


 「やってみて、めちゃめちゃ強いなって感じなかったし。モール押せてたんで怖くは無かった」。FW陣の先頭で構えた高橋は自信をうかがわせていた。


 一方で「『取った』ところは評価できる」と言うと同時に、萩井HCはつけ加えた。


 「ちょっと淡白だった。あのあたりゲームメイクを考えてたら、『取られた』は無くなっていた」


 どっちの拳が強いのか、そのガチンコ勝負で力を見せつけた。が、それは本来自分たちが目指すファイトではない。足を使い、走り勝つ『MOVE』だ。


 転じて後半はBK陣が奮起。CTB村本聡一郎(文3)らが中心となって、ゲームを支配した。守っては粘り強いディフェンスで相手を得点0に封じ込めた。


 前半に右ストレートの差し合いで勝った以上、残りの40分間はフットワークを使い、攻撃ではアッパーやフックを織り交ぜた、とでも言おうか。


 目指すは後半の戦い方。80分通して、そのラグビーを。そうした見方はある。それでも、これまで鍛え上げてきたFW陣が自信を掴んだ第2戦だった。


 課題は残る。それはこの試合で強さを見せたFW陣しかり。若いメンバーだからこそ、のびしろに期待できる。昨シーズンからの『弱体化』というキーワードから始まったFW陣は、ここまで著しい成長を見せてきた。さらなる向上心が失われることはない。


 京産大戦を終え「スクラムトライ取れてないからな」と萩井HCが悔やめば、高橋も「スクラムはまだまだっスね。まだやらなアカン思いました」。


 握る拳は固く、どこまでも強くなる。

◆『2010年型FW』


 最前線で体を張っている。『2010年型関学FW』の先頭に立つのはPR高橋樹だ。
 


 緑川組にとってシーズン最初の試合となった4月18日の京産大戦。昨年関西2連覇を遂げた『超重量級FW』の姿はそこにはなかった。それまで君臨していた4年生らが引退し、がらりとリニューアルすることを余儀なくされたのだ。弱体化を懸念する声があがるのも必然だった。
 

 その緑川組にとっての開幕戦で、高橋は『1番・PR』に選ばれた。やがてリーグ戦の開幕スタメンオーダーにも名を連ねる。レギュラー入り、ただそれを「目指してやってきた」。


 春先から1番に就いたが、Aチームから外れた時期もあった。それでも「トレーニングも試合のこと意識してやったり。萩井さんに『スクラムがずば抜けて強くならないと使わない』と言われたりも」。FW陣の強化を必須とするチーム状況のなかで、修練を積んだ。何千と組んだスクラム練習を「しんどかったっス」と振り返るが、そのぶんだけ自信はついていった。


 8月の菅平合宿。Aチームのオーダーは秋を想定したもので固まっていた。1番には高橋の名。「菅平を通じて、スクラムを押されたのは無かったんで。一番自信を持てたのは帝京戦になります」。昨年の大学王者相手にチームは大健闘。それはスクラムなどのセットプレーやモールが安定した結果だった。主将・緑川昌樹(商4)が言うに「やりたいことができた」。


 だが、その翌日。早大戦で大惨敗を喫する。セットプレーでは互角な場面も見られたが、通用したのはその点だけだった。「手も足もでなかった。何もせんまま終わった。自信持ってやってきたのに、って」と高橋。2日間で、自信を掴み、そして打ち砕かれもした。試合終了と同時に、グラウンドを襲ったゲリラ豪雨のなか高橋のほおをつたったそれは、雨だったかそれとも


 幕を開けたリーグ戦。FW陣は自信を深めつつある。高橋も、スクラムやモールのプレーの中心にいる。京産大とのゲームではスクラムで『関西ナンバーワンPR』と対峙した。「京産大の3番が関西で一番強いと思うんスけど、実際強かったし、うまかった」。その強敵にも引くことなく、真正面からぶつかっていった。「今日のポイントはスクラムやったんで、絶対負けないように」。関西FW決戦を制し、自信は確信に変わるか。


 掲げる『MOVE』ラグビーは、走り勝つBK陣だけが主役ではない。オフ・ザ・ボールでも選手たちは動く。『2010年型関学FW』はそんな場面でも躍動する。「FL陣がタックル頑張ってくれてるんで。自分はしっかりとターンオーバーでゲットできるところはゲットして。そこに、こだわりたい」。高橋は自分なりの『MOVE』を実現していく。



(記事=朱紺番 坂口功将/写真=『関学スポーツ』)