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「小原組~ALL OUT~」

『朱紺スポーツ』特別版~慶応戦~

投稿日時:2009/05/10(日) 01:39

【慶応戦へ いざ出陣】

 小原組いざ出陣。ついに今シーズン上半期の注目マッチ、慶應義塾大学との定期戦を迎えた。さぁ朱紺の闘士たちよ、熱きプレーを見せてくれ!


[全力プレー]

 昨年51年ぶりの関西制覇に輝き、その名をラグビー界に轟かせた関学。年があけ主将には小原正(社4)が就き、新たなシーズンをむかえた。掲げたスローガンは『ALLOUT』。「一日一日、全力を出し切る」という意味が込められたその言葉は、普段の練習からグラウンドに響き渡る。「ALLOUTしよう=全力を出そう」と。「やないと、日本一にはなれない」と小原は語る。そのうえで関学ラグビー部の神髄であるチャレンジスピリットは今年も健在。いかなる相手でも挑戦者の姿勢で臨む。〝全力〟と〝挑戦〟の融合が小原組の魅力だ。


 4月にシーズンが本格化してから、「実戦が一番の練習」と対外試合13連戦を決行。そのなかでも目をはるビックカードがついに実現した。それが、この慶大との定期戦である。全国制覇の経験も多数の名門校で、昨年の関東大学対抗戦では4位。ラグビーを知らない人でも、慶大ラグビー部の勇名は知っていよう。関西王者と関東の雄実力校同士の「KG」が聖地・花園で激突するのだ。


[リスタート]

 数十年ぶりの歴史的一戦に胸躍る人は少なくないはず。けれども小原組にとっては、記念試合という見方は出来ない。シーズン開幕戦で京大に圧勝を収めたものの、天理大、法大の実力校との対戦では思うような結果を残せず。始まったばかりとはいえ、己のラグビーに確信が持てず、闇をさまよっているのが現状だ。「もう一回修正して。(慶大に)これじゃ勝てない」と小原は吐露する。それでも、やるべきことは見えている。「今までやってきたタックルを中心に。自分たちのリズムに持っていければ」と語るは、FWリーダーの西川征克(文4)。昨年優勝に導いたディフェンスは折り紙つき。それが発揮できれば、たとえ慶大でも活路はある。


 直前のゴールデンウィークには合宿を行い、部員たちの意識を統一。いま一度初心にかえり、リスタートを切る。2度目の開幕戦が、この定期戦になるといえよう。


 道は険しく、困難であろうとも、小原組の目指す先はただひとつ。「日本一」。その橋がけとなる慶大との一戦をその目で見届けてほしい。


【上半期レポート】

 小原組が初陣を飾った。オフシーズンを越えて、チームの成長が随所で見られた開幕戦。そこから今シーズンのキーワードを探ってみる。


 開幕戦を待ち望んでいた。いや、実戦を望んでいたと言うべきか。「ゲームが一番の練習になる」。オフシーズンでチームは様々なことに挑戦した。その成果を確かめたいし、そこから出てくる課題さえも吸収したい。そして何よりもチーム内の競争を激しくすることでレベルアップを図りたい。上半期の意義はそこにある。


◆肉体改造◆

 体重を増やす。オフシーズンに入り、休息を与えられた闘士たちに同時に課せられた課題。昨年、チームはTR辰見の指導も含め、肉体改造に踏み切る。それまではリーグ最軽量と言われたチームに求められたもの。〝ガタイ〟の良さなくして、戦力アップは望めなかったのだ。その体重増加の取り組みは今年も行なわれ、オフシーズン解禁の頃には選手の体は見違えるほどに変わっていた。

 「手ごたえ十分」。全体練習が始まった時期、そう小原は話した。コンタクトは激しくなった。実戦ではその体格が自信につながる。その一方で、体についていけていない選手もいる。「これから走れる体を作っていく」。成長した身体を自在に操れるようになったとき、屈強な闘士は誕生する。


◆タテの動き◆

 京大戦、明らかにこれまでとは違う動きが見られた。存分に感じられる、前に前に攻めようとする姿勢。それも左右のボール運びでなく、細かなパス回しをつないで直進する動きだ。例えばラックから転じる場面などでは、如実に表れた。「タテの動きとつなぐ意識」。試合後、小原の台詞の節々から出てきた単語だ。そのなかで「タテの動き」はこれまでの関学ラグビーに見られなかったもの。強力BK陣を備える関学は外に出せば、ある程度はゲインが望める。けれどもそれだけでは不十分。肉体改造の成果は、敵のDF陣をもろともしない突進力でこそ発揮されるのだ。

 その新しい取り組みは、攻撃の幅を増やす。京大戦の後半で見られたオフェンスの爆発は、「タテの動き」から生まれた。前後左右に攻め込む形が完成すれば、止める術は敵には無くなる。


◆部内競争◆

 大学随一の大所帯を誇るラグビー部。それだけ層は厚い。と同時に、レギュラー争いの激しさを物語る。試合で朱紺のジャージを着ることが出来るのは、リザーブも含め20数人。試合前日のメンバー発表では期待感と緊張感が混じる。名を呼ばれた選手には歓喜と安堵の表情が映る。

 レギュラー争いは今度、よりいっそう激化する。体重も含めたコンディション、ラガーマンとしての戦力、そして普段からの姿勢。「頑張ってる部員は出したい」と主将も語る。紅白戦では、これまで見れなかった選手の潜在能力の高さに驚いたとか。部内争いがチーム全体の底上げにつながることは間違いない。


 まだシーズンは始まったばかり。試合のみならず、練習や意識の面から〝チャレンジャー〟の姿勢が見て取れる。昨年の関西制覇も、いつまでも満足していては意味がないのだ。指揮官も「ウチはまだ守りに入るレベルじゃない」と釘を刺す。歴史を変えた闘士たちは、次なる歴史を築くためにこれからも挑み続ける。


【日本一への行動/地域清掃】

 快晴広がる4月のある日。朝からグラウンドに集まるラグビー部員たち。練習かと思いきや、手には軍手。ビニール袋片手に声をあげる。「よしっ、始めるぞ」。

 「ラグビー部として日本一になるために出来ることがないかなと」。今年、小原組という新しいラグビー部を作り始める際に掲げられた「まわりに感謝する」という理念。オフシーズンから小原は社会貢献活動への意欲を見せていた。そうして実行に移されたのが、この日の『地域清掃』だった。部員たちはキャンパスを中心に上ヶ原を清掃し、いつもと違った晴れやかな表情を見せた。

 「まわりの支えを選手たちに実感してもらいたい」と小原。感謝の気持ち無くして、日本一の部にはなりえないのだ。思えば2年前の年の暮れ。昨年の主将・室屋(社卒)が体育会リーダースキャンプで色紙に書いたのは『感謝』であった。その室屋組が関西制覇を遂げたのは言うまでもない。


【いざ歌はん】

 「時こーそ 来たれーり」。朱紺の円陣がグラウンドの中心で作られる。そこから響く男たちの声。関学ラグビー部の部歌『出陣の歌』だ。
 歌い始めの音頭は主将が執るのが伝統。初めて臨んだ京大戦では「かまんかなって(笑)。緊張してなかったから良かったけど」と小原は振り返る。試合直前に課せられた主将の責務である。

 今日も聖地・花園で奏でられる『出陣の歌』。その音色は1年後、国立で響き渡るに違いない。


【『朱紺スポーツ』特別版】(上から1面(表)、2・3面(見開き)、4面(裏:3パターン))


※写真:関学スポーツ