『WEB MAGAZINE 朱紺番』
『放たれた三本の矢 』
投稿日時:2013/04/26(金) 15:00
新チームの始動にあたって、体制を変えた首脳陣。昨年から関学に参画したアンドリュー・マコ―ミック氏はヘッドコーチ(HC)としての2年目をむかえる。前年度の監督を務めた萩井好次氏はアシスタントコーチ(AC)に身を移す。そして、チームディレクターの野中孝介氏が新監督に就き、「三役体制」でチームの強化が進められている。
■放たれた『三本の矢』
春のオープン戦も始まり、先週は関西大学に勝利。今週末(4月28日)には関西学院創立125周年記念試合(VS慶應義塾大学)というビックマッチを迎えるにあたって、首脳陣たちの声を聞いた。そこで出てきたキーワードとは、チームの強化にフォーカスを当てたもの。その言葉とは―。
萩井「“Trifecta”(※三連勝単式という意味で用いられる言葉。読み方:トライフェクタ)」
野中「フィットネス、スキル、そしてコンタクトの『三拍子』が揃っているという」
萩井「これまではポジションごとにスキルを優先させていた。『スクラムが強いやつ』とか。それとは逆で、トライフェクタの高い人間をポジションごとに鍛え、ポジションスキルを植えつけていく」
マコーミック「去年、やりたいラグビーは出来ている部分もあった。ただ精度の部分やコンタクト、スキルの点で出来ていないとこも」
萩井「(やりたいラグビーとは)去年でいえば、ディフェンスとフィットネス」
マコーミック「ベースが無いと何も出来ないんです。“Good Foundation”は、その2つでした」
―去年作ったベースをもとに、今年はコンタクトといった部分や精度を上げていくと
萩井「例えばディフェンスの練習をするときもセカンドプレーヤーの働きかけがもっと厳しくないとあかんかったり、足りないスキルの部分ではアタックでもっとボールを継続させるような力、それもコンタクトも含めながら、もっと上げていかないかと。去年作り上げた素地の上に、去年やりきれなかったコンタクトと、スキルでいえばアタックの部分、そこを積み上げていっているところ。その段階であり、また一からやり直すわけではないので、今年は1月から練習しようって。
昔は素材が限られていたから年が変わったら、また次いる選手でこう戦っていこうと考えていたけど、いまはある程度、人数含めて増えてきている。人に合わせるのではなく、“走る”とか“ディフェンス”といったベースのところを継続してやって、そこにどんどん人が送り込まれてくるのが良いかなと。継続していく部分を通じて、『関学でラグビーしたいな』と思って入ってきてくれる子が増えてくれたら」
これまではシーズンごとにチームのスタイルを変えてきたといえる。戦力に応じた形を取ってきた。だが、結果を挙げていくうえで避けられない関東勢との壁を乗り越えるべく、今年は“継続的な強化”を打ち出した。
―関東との差を感じた点では
マコーミック「コンタクトね。去年の練習内容では、どこまでやれるのか、どれだけ出来るのかが、僕が大学が初めてということもあって遠慮していた部分もあった。それが間違いで…タフだったね。反省です」
萩井「コンタクトの部分を強化せなあかんと。去年から本気でフィットネスを年間通じてやってきてて、それはこれからも前提でやり始めていくんだけど…過去の例を見てても、身体を鍛えてコンタクトの練習をがんがんさせても怪我が増えるだけで。去年はフィットネスをやるなかで、そちらを加減してしまっていた部分があった。そこも甘かったなと。
今年は、年を越してかなり早い段階でコンタクトの練習にも取り組んでいるんやけど、素地として怪我の起こりにくい身体は出来てきていると。ウエイトトレーニングを継続していることもあるし、ずっと走り込みもしているし、身体が強くなっている部分も。しんどくて思考が停止して怪我が起こりやすくなることが今はほとんど無い。なんで、その素地が出来ているので今年はがんがんやっても怪我人が出ないだろう、と。そういう前提で取り組んでいくので、関東との足りない部分をどんどん補っていける一年になるんじゃないかな」
―手応えはどうですか
萩井「みんな意識上がってきてくれているのは嬉しい。筑波大には点差つけられた。けど思うのは、昔と違って真っ向勝負であの点差(0-54)。何が足りないかを、ある程度自分たちのなかで絞られていると思う。『これが足りないから、フォーカス当てたら結果出せるな』と確信を選手たちが持ってくれているから。だから嫌なことにも前向きに取り組んでくれている」
―今年の畑中組はどのようなキャラクターに映っていますか
野中「みんな真面目というか…本気でラグビーするという気持ちは伝わってくる。だからこそ本気でサポートしたいと思えているし。中途半端な気持ちでやっているチームだったら僕らコーチ陣も本気なられへんからね。学生たちには、あくまでも主役は学生たちなんだと。彼らがどれだけ主役として活躍できるか、そのうえで主役として活躍するために我々コーチ陣が全力でサポートすると約束しました。それを信じて、取り組んでくれているんじゃないかと」
萩井「すごい前向きに取り組んでいる」
マコーミック「すごい楽しみにしている感じ。本当に誰も逃げてないし頑張れている」
ここから話は、それぞれの思いへ。新シーズンにかける意気込みを語ってもらった。

(写真=野中孝介監督)
―監督という立場からシーズンをむかえます
野中「選手たちはラグビー部員でありその前に関学の大学生なので、僕は監督という立場から人間として成長といったところを問いたいというか…例えば帝京大学が4連覇したわけだけど、やはり彼らの人間性は高くて。グラウンドでの過ごし方とか。ただ、それをやったからといって日本一になれるわけではなく。けど日本一にふさわしい人間であるかどうかは問いていきたいし…。仮に日本一になれなかったとしても、まわりの人が関学を応援したいと思ってくれるようなチームが良いと思っているので。
主役は学生なので、学生たちが主体的に。 表現は難しいですけど、監督という名前だけど、選手たちを下から支えてあげるような、ね。」

(写真=アンドリュー・マコーミックHC)
―続いてマコーミックHC。関学での2年目はどういった思いで臨んでいますか
マコーミック「まず…チームがどの方向にいくかを示すこと、それが僕の役割ではと思います。選手たちには細かく。
それともう一つは。今までは僕の場合は18歳からプロのラグビー選手としてプレーしてきて…グラウンドとグラウンド以外の過ごし方を選手たちに落とし込みたいです。ラグビーのノウハウを。僕はラグビーを通してグラウンド以外の示すものは大きいと。ラグビーだけじゃなくて人間として伸びることが大事だと思っています。その点で、僕にも責任はあると。選手たちにはグラウンド外でも関学ラグビー部員として誇りを持ってもらいたい。
そこで…僕はHCだけど、上からではなくて同じ視点でね。選手とコミュニケーションを取れることを目標としています。僕含めチームとして同じ考え持つことで伸びることが出来る。全員で一つになって動くことが大事で、それはグラウンドでもグラウンド以外でも。自分は去年HCをやって今年も。自分が伸びることを目標にしています。“Better Never Stop”です」
―トップリーグでも2年目に結果を出されてました。そうした経験は今後も活きてくるものですか
マコーミック「うん…全く環境が違う。東芝は元々強くて…そこから伸びて伸びて強くなった。関学は弱いとは言わないけど、いま出来上がっているベースを伸ばして、それに加え弱い部分を上げていく。社会人と比べるのは難しい。関学では関学のHCとしての自分を考えていくだけです。もちろん経験は落とし込んでいくけど、必要なものとそうでないこと、合うことと合わないことがあるので。18歳からの経験は選手たちに落とし込みたいなぁと。いま自分はコーチとしてピークなので。」
野中「いつでもピークということです」
マコーミック「もちろん! 毎日“Better Never Stop”で。去年よりは関学のコーチとしてはベターだと思います。
—強化する点については
マコーミック「ディフェンスとフィットネスはベースとして、それは変わらない。コンタクトとスキルが足らなかったので、そこを」
―コミュニケーションを大事にされると
マコーミック「ラグビー以外のことも話しながらね、コミュニケーションは取っていく。選手もスタッフともです。 やはりグラウンドだけでは時間が無いので。事務室でミーティングしたりビデオを見たりして。やってみる人は良くなる、見る人は良くなる、聞く人は良くなる。全部員の細かいとこまでは無理だけど、出来るところはやってみたいし今年も続けたい。
それとセレクションの理由も伝えないといけないから。なぜメンバーに選ばれなかったのか、が伝わらないと。僕が日本語をみんなみたいに使えないこともあるけど、理由を理解してもらうことは大切で…。だいたい分かるんです、うまく伝わらなかったな、って。ボキャブラリーが足りないとこがあるから、ラグビー以外の友達も必要かもね(笑)」
―学生のコーチング、楽しいですか?
マコーミック「イエス! みんなポジティブ。みんな遠慮しないよ。だからこそ『マコーミックは何でも話が出来る』という関係を作りたい。“Communication is Very Important”」

(写真=萩井好次AC)
―続いて萩井コーチに。強化のポイントを。
先日のスクラム練習時に『FW8人で15人を圧倒する』と声を上げていましたがその言葉の意図とは。実際に可能なものか
萩井「出来ると思うで。そこを目指すつもりもやるつもりもないけど、ラグビーはFWだけで勝とうと思えば勝てる。例えば、やるつもりはないけどスクラムを100メートル押せたら勝てるやんか。仮に最悪のコンディション、SHがパスを投げたらSOが必ずノックオンするような状態で…FWだけで戦うことになったと。そこで相手が15人で向かってきてもFWで押し切れたら勝てるやん。チーム全体としては、それを目指してはないけど、ある意味FWという職業に携わるんだったら、それは考えとしてやるべきことだと。それは俺の基本的な考え。
俺の理想は…試合が始まる前から相手が負けている状態を作るのが理想。それくらい関学のFW8人はオーラが出ている、相手が『絶対負けるやろうな』と思っているような状態で試合に来させるような。そこに至るまでのバックグラウンドとしての練習の量と質が必要だと。
チーム全体としては走れることが前提でそれは学生にも伝えてあるけれども、FWとしての意識はそうあるべきだと」
―萩井コーチ自身にとっても原点回帰の意味合いも見て取れます。FWに専念できる、その態勢が整ったと
萩井「そう思ってもらって間違いない。あとはコンタクトの部分。スキルとか細かい部分はマコーミックがやってくれるとは思うけど…FWに勝てるくらいのBKにしたいと。たぶん帝京大のAチームのBKって、ウチのAのFWとやりあっても、けっこうやりようと思うねん。でも、いまのウチのBKは関学高等部のFWとやりあってもわからない。モールとかブレイクダウンでね、もしかしたら。それをもっともっと引き上げなあかん。最終的にはウチのBKが、ウチのFWとやりあえるようなくらいにならないと。
―サイズが小さくても強い選手。WTB畑中君(今年度主将=商4=)は去年もあんなに強かったのか、という印象があるが
マコーミック「啓吾はコンタクト強くなっているね」
萩井「意識がそこに向いているから。いまは全員の意識がコンタクトに。そこを埋めたら、全然強くなる。関東との大きな差はそこやと思うしね」
マコーミック「選手がグラウンドのどこに立っても、動けることが」
萩井「PRだから走れない、とかは論外。最低でもBKなみにディフェンスはしてもらわないと。オールラウンダーを、ポジションごとに鍛えていく」

―それでは最後に野中監督に伺います。創立125周年記念試合にむけて、意気込みを。そして応援していただけるファンの方々にメッセージを。
野中「まず、125周年記念試合の実施にあたり関係各位へ感謝申し上げます。僕たちラグビー部は関西学院のスクールモットー“Mastery for Service(奉仕のための練達)”の精神に基づき、関西学院大学の学生として誇りを持ってプレーします。そしてファンの皆様に勇気と感動を与えられるよう、部員・スタッフ一丸となってベストを尽くします」
関西から日本一へ。放たれた三本の矢に期待したい。■(取材・構成:福本浩兵、坂口功将)
関連サイト
関西学院創立125周年記念サイト
関西ラグビーフットボール協会
関西学院創立125周年記念試合のお知らせ
■放たれた『三本の矢』
春のオープン戦も始まり、先週は関西大学に勝利。今週末(4月28日)には関西学院創立125周年記念試合(VS慶應義塾大学)というビックマッチを迎えるにあたって、首脳陣たちの声を聞いた。そこで出てきたキーワードとは、チームの強化にフォーカスを当てたもの。その言葉とは―。
萩井「“Trifecta”(※三連勝単式という意味で用いられる言葉。読み方:トライフェクタ)」
野中「フィットネス、スキル、そしてコンタクトの『三拍子』が揃っているという」
萩井「これまではポジションごとにスキルを優先させていた。『スクラムが強いやつ』とか。それとは逆で、トライフェクタの高い人間をポジションごとに鍛え、ポジションスキルを植えつけていく」
マコーミック「去年、やりたいラグビーは出来ている部分もあった。ただ精度の部分やコンタクト、スキルの点で出来ていないとこも」
萩井「(やりたいラグビーとは)去年でいえば、ディフェンスとフィットネス」
マコーミック「ベースが無いと何も出来ないんです。“Good Foundation”は、その2つでした」
―去年作ったベースをもとに、今年はコンタクトといった部分や精度を上げていくと
萩井「例えばディフェンスの練習をするときもセカンドプレーヤーの働きかけがもっと厳しくないとあかんかったり、足りないスキルの部分ではアタックでもっとボールを継続させるような力、それもコンタクトも含めながら、もっと上げていかないかと。去年作り上げた素地の上に、去年やりきれなかったコンタクトと、スキルでいえばアタックの部分、そこを積み上げていっているところ。その段階であり、また一からやり直すわけではないので、今年は1月から練習しようって。
昔は素材が限られていたから年が変わったら、また次いる選手でこう戦っていこうと考えていたけど、いまはある程度、人数含めて増えてきている。人に合わせるのではなく、“走る”とか“ディフェンス”といったベースのところを継続してやって、そこにどんどん人が送り込まれてくるのが良いかなと。継続していく部分を通じて、『関学でラグビーしたいな』と思って入ってきてくれる子が増えてくれたら」
これまではシーズンごとにチームのスタイルを変えてきたといえる。戦力に応じた形を取ってきた。だが、結果を挙げていくうえで避けられない関東勢との壁を乗り越えるべく、今年は“継続的な強化”を打ち出した。
―関東との差を感じた点では
マコーミック「コンタクトね。去年の練習内容では、どこまでやれるのか、どれだけ出来るのかが、僕が大学が初めてということもあって遠慮していた部分もあった。それが間違いで…タフだったね。反省です」
萩井「コンタクトの部分を強化せなあかんと。去年から本気でフィットネスを年間通じてやってきてて、それはこれからも前提でやり始めていくんだけど…過去の例を見てても、身体を鍛えてコンタクトの練習をがんがんさせても怪我が増えるだけで。去年はフィットネスをやるなかで、そちらを加減してしまっていた部分があった。そこも甘かったなと。
今年は、年を越してかなり早い段階でコンタクトの練習にも取り組んでいるんやけど、素地として怪我の起こりにくい身体は出来てきていると。ウエイトトレーニングを継続していることもあるし、ずっと走り込みもしているし、身体が強くなっている部分も。しんどくて思考が停止して怪我が起こりやすくなることが今はほとんど無い。なんで、その素地が出来ているので今年はがんがんやっても怪我人が出ないだろう、と。そういう前提で取り組んでいくので、関東との足りない部分をどんどん補っていける一年になるんじゃないかな」
―手応えはどうですか
萩井「みんな意識上がってきてくれているのは嬉しい。筑波大には点差つけられた。けど思うのは、昔と違って真っ向勝負であの点差(0-54)。何が足りないかを、ある程度自分たちのなかで絞られていると思う。『これが足りないから、フォーカス当てたら結果出せるな』と確信を選手たちが持ってくれているから。だから嫌なことにも前向きに取り組んでくれている」
―今年の畑中組はどのようなキャラクターに映っていますか
野中「みんな真面目というか…本気でラグビーするという気持ちは伝わってくる。だからこそ本気でサポートしたいと思えているし。中途半端な気持ちでやっているチームだったら僕らコーチ陣も本気なられへんからね。学生たちには、あくまでも主役は学生たちなんだと。彼らがどれだけ主役として活躍できるか、そのうえで主役として活躍するために我々コーチ陣が全力でサポートすると約束しました。それを信じて、取り組んでくれているんじゃないかと」
萩井「すごい前向きに取り組んでいる」
マコーミック「すごい楽しみにしている感じ。本当に誰も逃げてないし頑張れている」
ここから話は、それぞれの思いへ。新シーズンにかける意気込みを語ってもらった。

(写真=野中孝介監督)
―監督という立場からシーズンをむかえます
野中「選手たちはラグビー部員でありその前に関学の大学生なので、僕は監督という立場から人間として成長といったところを問いたいというか…例えば帝京大学が4連覇したわけだけど、やはり彼らの人間性は高くて。グラウンドでの過ごし方とか。ただ、それをやったからといって日本一になれるわけではなく。けど日本一にふさわしい人間であるかどうかは問いていきたいし…。仮に日本一になれなかったとしても、まわりの人が関学を応援したいと思ってくれるようなチームが良いと思っているので。
主役は学生なので、学生たちが主体的に。 表現は難しいですけど、監督という名前だけど、選手たちを下から支えてあげるような、ね。」

(写真=アンドリュー・マコーミックHC)
―続いてマコーミックHC。関学での2年目はどういった思いで臨んでいますか
マコーミック「まず…チームがどの方向にいくかを示すこと、それが僕の役割ではと思います。選手たちには細かく。
それともう一つは。今までは僕の場合は18歳からプロのラグビー選手としてプレーしてきて…グラウンドとグラウンド以外の過ごし方を選手たちに落とし込みたいです。ラグビーのノウハウを。僕はラグビーを通してグラウンド以外の示すものは大きいと。ラグビーだけじゃなくて人間として伸びることが大事だと思っています。その点で、僕にも責任はあると。選手たちにはグラウンド外でも関学ラグビー部員として誇りを持ってもらいたい。
そこで…僕はHCだけど、上からではなくて同じ視点でね。選手とコミュニケーションを取れることを目標としています。僕含めチームとして同じ考え持つことで伸びることが出来る。全員で一つになって動くことが大事で、それはグラウンドでもグラウンド以外でも。自分は去年HCをやって今年も。自分が伸びることを目標にしています。“Better Never Stop”です」
―トップリーグでも2年目に結果を出されてました。そうした経験は今後も活きてくるものですか
マコーミック「うん…全く環境が違う。東芝は元々強くて…そこから伸びて伸びて強くなった。関学は弱いとは言わないけど、いま出来上がっているベースを伸ばして、それに加え弱い部分を上げていく。社会人と比べるのは難しい。関学では関学のHCとしての自分を考えていくだけです。もちろん経験は落とし込んでいくけど、必要なものとそうでないこと、合うことと合わないことがあるので。18歳からの経験は選手たちに落とし込みたいなぁと。いま自分はコーチとしてピークなので。」
野中「いつでもピークということです」
マコーミック「もちろん! 毎日“Better Never Stop”で。去年よりは関学のコーチとしてはベターだと思います。
—強化する点については
マコーミック「ディフェンスとフィットネスはベースとして、それは変わらない。コンタクトとスキルが足らなかったので、そこを」
―コミュニケーションを大事にされると
マコーミック「ラグビー以外のことも話しながらね、コミュニケーションは取っていく。選手もスタッフともです。 やはりグラウンドだけでは時間が無いので。事務室でミーティングしたりビデオを見たりして。やってみる人は良くなる、見る人は良くなる、聞く人は良くなる。全部員の細かいとこまでは無理だけど、出来るところはやってみたいし今年も続けたい。
それとセレクションの理由も伝えないといけないから。なぜメンバーに選ばれなかったのか、が伝わらないと。僕が日本語をみんなみたいに使えないこともあるけど、理由を理解してもらうことは大切で…。だいたい分かるんです、うまく伝わらなかったな、って。ボキャブラリーが足りないとこがあるから、ラグビー以外の友達も必要かもね(笑)」
―学生のコーチング、楽しいですか?
マコーミック「イエス! みんなポジティブ。みんな遠慮しないよ。だからこそ『マコーミックは何でも話が出来る』という関係を作りたい。“Communication is Very Important”」

(写真=萩井好次AC)
―続いて萩井コーチに。強化のポイントを。
先日のスクラム練習時に『FW8人で15人を圧倒する』と声を上げていましたがその言葉の意図とは。実際に可能なものか
萩井「出来ると思うで。そこを目指すつもりもやるつもりもないけど、ラグビーはFWだけで勝とうと思えば勝てる。例えば、やるつもりはないけどスクラムを100メートル押せたら勝てるやんか。仮に最悪のコンディション、SHがパスを投げたらSOが必ずノックオンするような状態で…FWだけで戦うことになったと。そこで相手が15人で向かってきてもFWで押し切れたら勝てるやん。チーム全体としては、それを目指してはないけど、ある意味FWという職業に携わるんだったら、それは考えとしてやるべきことだと。それは俺の基本的な考え。
俺の理想は…試合が始まる前から相手が負けている状態を作るのが理想。それくらい関学のFW8人はオーラが出ている、相手が『絶対負けるやろうな』と思っているような状態で試合に来させるような。そこに至るまでのバックグラウンドとしての練習の量と質が必要だと。
チーム全体としては走れることが前提でそれは学生にも伝えてあるけれども、FWとしての意識はそうあるべきだと」
―萩井コーチ自身にとっても原点回帰の意味合いも見て取れます。FWに専念できる、その態勢が整ったと
萩井「そう思ってもらって間違いない。あとはコンタクトの部分。スキルとか細かい部分はマコーミックがやってくれるとは思うけど…FWに勝てるくらいのBKにしたいと。たぶん帝京大のAチームのBKって、ウチのAのFWとやりあっても、けっこうやりようと思うねん。でも、いまのウチのBKは関学高等部のFWとやりあってもわからない。モールとかブレイクダウンでね、もしかしたら。それをもっともっと引き上げなあかん。最終的にはウチのBKが、ウチのFWとやりあえるようなくらいにならないと。
―サイズが小さくても強い選手。WTB畑中君(今年度主将=商4=)は去年もあんなに強かったのか、という印象があるが
マコーミック「啓吾はコンタクト強くなっているね」
萩井「意識がそこに向いているから。いまは全員の意識がコンタクトに。そこを埋めたら、全然強くなる。関東との大きな差はそこやと思うしね」
マコーミック「選手がグラウンドのどこに立っても、動けることが」
萩井「PRだから走れない、とかは論外。最低でもBKなみにディフェンスはしてもらわないと。オールラウンダーを、ポジションごとに鍛えていく」

―それでは最後に野中監督に伺います。創立125周年記念試合にむけて、意気込みを。そして応援していただけるファンの方々にメッセージを。
野中「まず、125周年記念試合の実施にあたり関係各位へ感謝申し上げます。僕たちラグビー部は関西学院のスクールモットー“Mastery for Service(奉仕のための練達)”の精神に基づき、関西学院大学の学生として誇りを持ってプレーします。そしてファンの皆様に勇気と感動を与えられるよう、部員・スタッフ一丸となってベストを尽くします」
関西から日本一へ。放たれた三本の矢に期待したい。■(取材・構成:福本浩兵、坂口功将)
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