「緑川組~MOVE~」
『Re:START,RE:MOVE』
投稿日時:2010/05/27(木) 03:06
それは緑川組が発足して以来始めて、朱紺の2色で彩られたファーストジャージを身に着けて戦う機会。とめどなく降り続いた雨のなか5月23日、関東学大との定期戦が行なわれた。それはチームにとって『第2の開幕戦』を意味していた。

「若かったのと…ぼくらが落しこめてなかったのと」
主将は口にした。反省の弁を交えながら。
チームが発足してから数ヶ月が経った。練習、実戦ともに着実に数をこなしていっている。成長の日々、と同時にそこには常に反省が伴う。
5月16日、関西ラグビー祭り。近鉄との試合が終わりレセプション後の全体集合のとき。一旦、解散の号が上がった後にAチームのメンバーが集められた。険しい表情を浮かべる大崎監督を中心に、選手たちの顔はさえない。
真相は見たものにしか分からない。事実それがどういったものだったかも。けれども、答えは『部歌の斉唱』にあった。レセプションの場にて、彼らがしっかりと部歌を歌えなかったという事実。
それから1週間後、定期戦を前日に控えたミーティング。ここで翌日のAチームのメンバーにジャージが手渡される。そのミーティングが始まる直前まで、部員たちはそれぞれ何らかの紙を手に口ずさんでいた。「甲~の山下…」
やがて始まったミーティングではジャージが渡され、そして監督、コーチが選手たちに檄を飛ばす。終了後には先輩が後輩を捕まえ、部歌を唱えさせた。OKサインが出るまで、だ。
【現状は】
一言でいえば、このチームは〝若い〟。あらゆる面で、それを実感させる。部歌の件は最たる例だ。
いま現在のAチームは、それこそ今年から初めてメンバー入りした者もいる。念願かなった2年生もいれば、戦力として期待されている1年生も。
だが、若いがゆえにいまだファーストジャージの重みを、レギュラーチームとして試合に出る意味を、知らない。知らないことはなくても、それが表面には出ていない。経験年数といってしまえばそれまで。けれども1年サイクルで動く学生スポーツにおいては最重要項目。チームが〝若い〟なら、なおさらだ。
オープン戦シーズンが本格化して1ヶ月。Aチームとしては4試合を消化した。結果はもちろんだが、それ以上に「自分たちのラグビー」を最大限に発揮することに重きを置いている。その一方で、常に聞く声がある。「緑川と長野しか声出てない」と。
Aチームに名を連ねる上級生しか声が出てないのだ。攻撃の場面もさながら、失点シーンなど顕著。チームを鼓舞する者に学年など関係ないのに。
プレー中の意識、部員としての自覚。あらゆるものがこの数ヶ月で反省材料として出てきた。それがはっきりとしたからこそ、関東学大との定期戦はおあえつら向きだった。
いま一度問う、朱紺のジャージを着る意味を、と。そう銘打つにふさわしい『第2の開幕戦』となった。
▲ファーストジャージの重みを説く緑川
「ファースト着るっていうのは、選ばれたなかで代表として出るということ。ファーストジャージの重みを感じたら、最後まで試合をあきらめない」。前日のミーティングでメンバーたちに緑川が説いた。高校時代に日本一という形でそれを身に染みて知り、大学でもこれまでの3年間ぶらすことはなかった。主将としてむかえるラストイヤーも変わらない。
「ジャージに対して誇りを持って戦えば、もっといいゲームできるかなって」
力強く翌日への抱負を語った。
その翌日の23日、ついにお披露目となった朱紺色の緑川組。2010年シーズンを戦う姿がイメージしやすくなった。あとは選手たちがどうした戦いぶりを見せるか。
試合は80分の戦いの末、敗れた。後半に長野のトライで追い上げるまでは良かった。しかし、その直後に気の緩みから追加点を許すと勝敗は決した。「あの失点がすべて」と長野はぽつりと漏らした。
反省点ができた。ディフェンス面は途中まで、FW陣は一からやり直し、個々の差は関東勢とは差がある、山積みだ。プレー面の課題は浮き上がったからには攻略するしかない。それはこれからの課題。
一方で主将に聞いてみた。ファーストにふさわしい試合ぶりは出来たか?選手たちに見られたか?
「だいぶ出来てきたかな。コールできたし…」
どしゃ降りのなか、選手たちが声を出せていたことに主将は満足げな表情をうかべた。
【朱紺の闘士として】
まだまだ、だ。緑川はチームのことをよくそう話す。伸びしろに期待するからこその台詞。そして意識の差を感じるからこそ、たたき上げるための台詞。
関学ラグビー部としての自覚を再認識した、『第2の開幕戦』からチームは再始動した。けれども、〝まだまだ〟。
礼儀や姿勢、意識をふくめて朱紺のジャージを身につけるにふさわしいか―。それはこれから続くシーズンにおける、彼らの戦いぶりで分かることだろう。■