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「新里組~Challenge~」

「影の功労者」―最大限の献身

投稿日時:2011/11/26(土) 13:20

 関学ラグビー部の活躍を影で支えているスタッフ陣。中でも選手に直接携わるトレーナーとしてチームに貢献している、女性トレーナー2人。2人の熱き思いに迫る。
 


―ラグビー部への入部のきっかけは
伊藤「高校時代、ラグビー部のマネージャーをしていました。高校に入学するまでは、全然ラグビーについて知らなくて。体験入部で部活を見に行ったとき、全員の真ん中で話をする監督を見て、こんな人の下で働きたいって思ったのがきっかけですね」
竹中「私は小学校ではラグビーをやっていて、中学ではコーチをしていました。中3のとき、同期の引退試合を見に行ったとき「花園でまた会おう」って言っている友達を見て、その場に自分がいないことがすごく悔しくて…。そのとき、名門校のマネージャーをしようって決めました」
 
―高校と大学のトレーナーの違いは
伊藤
「選手が花園出場経験者とか、一流に近い選手が多くて。信頼してもらわないといけないし、そんな選手たちのお世話をするので、責任感は感じますね」
竹中「監督の存在もあると思います。高校のときは監督がいて、そのサポートをするっていう部分もありました」
伊藤「大学では自分たちの判断で動かないといけなくて、いい緊張感があるよね、やりたいことができる分」
竹中「私たちの代は「トレーナー元年」って言われていて、1年の時は雑用って感じだったけど、2年生からメディカル班とフィジカル班に分かれて。3年生から代表に分かれて、形にしていこうって考えていました」
 
―今ではトレーナーの後輩も増え、スタッフも大きな集団になってきたのでは
伊藤
「勝つことって本当に影響力があるんだなって感じましたね。歴史を作ってくれた先輩に感謝ですね。」
竹中「本当にいい思いをさせてもらいました。うちら同期3人は我が強いし、負けず嫌いやし、お互いライバル視してたしね(笑)。今は「チームを支えるスタッフも一丸じゃないと」っていう気持ちもありますし。トレーナーができてまだ4年目ってことは、土台が少しできたくらいで完成じゃないし、まだまだいい意味で変われると思います。」
伊藤「トレーナーの存在が認められてきた分、期待値も上がっているし、求められているものもある。後輩たちにもたくさん提案して欲しいし、貪欲になって欲しいと思います。」


 
―では具体的な仕事を教えてください
竹中
「私はリハビリですね。怪我をしている人の復帰までの処置をしています。メニューやトレーニング、テーピングとか。復帰までの準備のお手伝いですね。ラグビーに怪我はつきもので、怪我をしない体を作ることが大事。その上で怪我をしてしまったときは、怪我をして離れている期間を客観的に自分やチームを見つめ直す期間として、精神的にも肉体的にもいい状態で復帰してもらえるように、サポートすることを意識しています。怪我をしたことをマイナスにだけ捉えるのではなく、怪我から学ぶこともある、怪我したことが無駄じゃなかったって思ってもらいたいですね」
伊藤「私は栄養面を中心に。合宿の食事や、試合前後の補食、平日の朝食とか。常に何かできることがないか考えるようにはしています。合宿の食事では、チームの事情と宿舎とを考慮しつつ、スケジュールも加味して最高の食事を、と考えました。試合が連日続くし「変に体重を増やさないこと、けがをしないこと」を意識しながら、雰囲気作りも大事にするようにしていました。また食事の面では、保護者の方々の熱意に恵まれ、たくさん協力していただきました。影ですごく支えていただいて、チームの一員と言っても過言ではないと思います」
 
―フィールドでのお仕事は
伊藤
「メディカルサポーターです。リーグ戦では赤いゼッケンを着て、試合中にプレーが切れていなくても、フィールドに入れる16人目の選手。応急処置も含め、コーチとフィールドの選手とをつなぐパイプ役って感じですかね。プロのトレーナーの方もいるんですけど、関学は学生主体のチームということで、私たちも学生トレーナーでやるっていう強い希望を持ってやらせてもらっています」
 
―試合中、フィールドに立つとき、緊張はしますか
伊藤「いざ試合になると緊張はしないですね。毎日みんなを見ているし、みんなと同じように自分なりに準備はしているつもりなので」
竹中「信頼して見れるからっていうのもあるよね」
伊藤「それもある。お互いの信頼関係があって、迷いがないって感じだよね」
竹中「日々、小さいコミュニケーションの積み重ねだから、相手も自分も安心できる」
伊藤「それが唯一、学生トレーナーの私たちにしかできないことだと思うんです。知識では劣っても、可能な限り近くに長くいられるのは私たちだしね」
 


―4回生としてスタッフでも中心に立つようになったと思いますが、なにか変化は
伊藤「仕事に対してというか、トレーナー全体、チーム全体を考えるようになりましたね。トレーナーもチームとしてひっぱらなあかんと思うし。4年生になって付いた新しい視点かな。話し合うことも増えたし、それぞれが「こうした方がいい」って考えるようになりました」
竹中「私もチームに対する目線が増えたと思います。自己満足じゃあかんし、どんなに良いことしても続かないと意味がないと思う。やりたいだけじゃ意味ないしね」
伊藤「チームが長期的に勝っていけるチームを目指しているから、スタッフもいい組織作りをしていけるように、目線をシフトしました」
 
―印象に残っている出来事はありますか
伊藤
「2年生の時のジュニアの試合で、選手が倒れて関学のペナルティになって、処置している間にトライされてしまったこと。このことから、フィールドに入るタイミング、レフリーの位置、展開を意識するようになりましたね。レフリーを止める権限を持っている分、責任を持って臨むように心がけています。どんなシチュエーションでも経験だから、いかに冷静でいられるかを意識して、一番に冷静になって周りに指示を出せるように。その点では4年生になってだいぶ落ち着きは感じるようになりました」
竹中「2年生の夏合宿でのテーピングです。不安な感じで、確認しながらのテーピングをしてしまったことです。トレーナーって1対1で関わって、その場で判断されて、直接評価されるから。言葉使いやタイミングとかが、メディカルに就いても信頼関係に関わってくるから、緊張感を持って日ごろの練習から関わるようにしています」
 
―トレーナーの仕事のやりがいとは
竹中
「みんなが満足している姿を見ることです。そのためにもラグビーに集中できてやりやすい環境を作っていかないと、と思っています」
伊藤「やっぱり試合で実力を発揮して、結果を残してくれることですかね。」
竹中「私たちには答えがないと思うから…。選手が結果を出してくれることが答えになるよね。その意味ではジュニア優勝はうれしかったです。」
伊藤「いいパフォーマンスをしてくれましたね。スケジュール調整や管理が間違ってなかったんだなって」
竹中「自分たちいいと思っている事だったとしてもチームのために繋がってないと全然意味ないですよね」


 
―モチベーションを保つには
伊藤
「試合だけじゃなく日々のコミュニケーションの積み重ねを大事にしています。試合だけじゃ信頼関係は築けないので。それで選手が自分のことを話してくれたり、選手のちょっと変化に気づけた時とかモチベーションにつながるかな」
竹中「普段から接することのできる学生トレーナーだからこそ、気づくことができるんだと思いますね。でもやっぱり選手から直接的にモチベーションもらっています」
伊藤「もし気持ちが沈んでいても、グラウンド行くことで元気もらえるね」
竹中「試合で選手たちが体を張って頑張っているのを見るのもうれしいし楽しい。私たちが直接チームを勝たせることはできない。だからチームを背負って戦う選手は本当に尊敬しているし、だからこそサポートしたいって思える。それがモチベーションにもなっています」
 
-試合前、試合中はどんなことを考えていますか
伊藤
「言い聞かせているところもあるんですけど…。「何かあったら守ったる!思いっきりやってきて!」。そう思ってやっています」
竹中「私たちが大丈夫って言ったら大丈夫と思われるようにしようと。諦めさせることは簡単なので、選手を励ますことができたら最高ですね。試合はとにかく楽しむ!「何があってもALL OUTしておいで」って思います。スタッフを信じて全力を出し切れるように、選手のモチベーションを上げていくことも私たちの役割だと思うので、気に掛けています」
伊藤「愛さん(西嶋愛=商卒)から心構えを学びましたね。愛さんはメディカルサポーターの鏡みたいな存在。2年生の時、愛さんの姿を見ていて、こんなメディカルサポーターにならないとって思いました」
竹中「「メディカルに同じ場面は二度とない」ってことを教えてもらって、それから自分の中で引き出しをたくさん持っておくことが大事だと思いました。なので、自分がしていないときでも他の人を見たりして、自分だったらどうするかとか考えたりしています。日々勉強ですね。」
 
-今年のチームについて
竹中
「(新里)涼くんは人望が厚いよね。周りからの信頼がすごい」
伊藤「何にでもまじめで誠実。涼くんのひたむきな姿がみんなに自分を見つめ直すきっかけを与えてくれるんじゃないかな」
竹中「涼さんのために…。っていうのがチームの原動力になっていると思います」


 
-残りの試合もあとわずかですが
伊藤
「チャレンジ。最後まで挑戦し続けることですね。栄養に関しても最後まで改善して、求められるものを追求していきたいです。守りに入らず、挑み続けて走り続けていきたい」
竹中「やるしかないです。あとはないですからね。目の前のことを一生懸命やりたいです。信じてやるしかないですね」
 
-選手たちへ
伊藤
「難しいですね…。頑張ってねって言うよりも自分たちも一緒に楽しんで、一緒に戦っているって感じなので。特にないかな…」
竹中「「思い切ってやってこいよ!何かあったらどうにかしたる!」って、頑張れっていうよりも一緒に行こかって感じです」
 
-最後にお二人にとってラグビーとは
伊藤
「なくなることが考えられない…。きってもきれないもの、ですかね」
竹中「自分を変えてくれたもの、です。私の考え方はラグビーからできていると言っても過言じゃないですからね」
 
■伊藤有紀(いとう・ゆき)/人4/明和/168㌢/料理
■竹中梨絵(たけなか・りえ)/人4/大工大/155㌢/写真撮影